空では空での不自由があって
飛びたい?
足の裏か おしりか あるいは背中を
地面にぺたってしてなきゃなんない
そんないきもののあたしは
あっちはどんなに自由なんだろうなって
たまに空を見あげるたび
かつてはもっとまるかったのに
地面にぺたってしすぎたせいで
ひらたくなりはじめたおしりから
マシュマロみたいな翼をはやして
飛んでけたらいいのにって
もそもそと妄想してたんだ
だけど きっと
空では空での不自由があって
おしりからはえたマシュマロみたいな翼は
雲から雲へとはりめぐらされた鎖に
絡めとられるか
不揃いな唐草模様をした乱気流に
散らされてしまうことだろう
それに 空を飛ぶってことは
じぶんの背の高さよりも深いプールで
泳ぎつづけなきゃなんないようなものじゃんか
あたしの今の不自由は
足の裏か ひらたくなりはじめたおしりか
あるいは背中を地面にぺたってしてなきゃ
なんない いきものなかわりに
いつでも 背の高さまでの深さのプールで
おぼれずにすむんだって安心と
ひきかえのチケットなんだよね
だからあたしは
ひきかえたあとのチケットの半券を
もういちど にぎりしめて
翼のはえてない
ひらたくなりはじめたおしりをぷりぷりさせながら
地面のうえで生きてゆこうと思い直した
だって きっと
たぶん きっと
空では空での不自由があるんだもの
それでも、飛びたい?