スターリンVS朱元璋VSマイクロフト・ホームズのクイズ対決
神々は今日も暇を持て余していた。単純な力比べや競争には飽き飽きし、もっと知的な勝負を求めていた。
そんなとき、人間界で流行する「推理小説」に目をつける。名探偵の華麗な推理、事件の真相を暴く知の戦い——。
「ならば、名探偵と歴史偉人を戦わせてみよう!」
こうして、神々の悪ふざけが始まった。
名探偵代表はシャーロック・ホームズの兄「マイクロフト・ホームズ」。
対するは、病的な猜疑心を持つスターリンと朱元璋。
神々の企画する推理対決、その結末は誰にも予測できない——。
◆推理対決の幕開け
「暇だなぁ。」
いつものことながら、神々は退屈していた。何か新しい遊びはないかと考えていた時、一人が提案した。
「最近、人間たちの間で『推理小説』というものが流行っているらしい。」
「推理小説?」別の神が首をかしげる。
「犯罪を解決する話らしい。名探偵が鋭い推理を働かせて、真実を見抜くとかなんとか。」
「ふむ。」神々は顔を見合わせた。
「名探偵を試してみるのは面白そうだな。」
しかし、それだけではつまらない。そこで、彼らは決めた。
「名探偵 vs 偉人」 推理対決を開催する!
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◆ 選ばれた挑戦者たち
「名探偵といえば、誰がいいだろう?」
「ホームズ……」
「待て。シャーロックではなく、マイクロフト・ホームズ にしよう。」
「なぜ?」
「設定上、彼の方がシャーロックより推理力があるからだ。」
納得した神々は、マイクロフト・ホームズを呼び出した。
「推理対決にご協力願いたい。」
「断る。」マイクロフトは即答した。
「……お前、天界に呼ばれたんだぞ? つまり、選択肢はない。」
「なるほど。」
マイクロフトは肩をすくめ、しぶしぶ了承した。
「では、対戦相手だが……」
「やはり推理力のある歴史上の偉人がいいだろう。」
「推理力というより、猜疑心の鬼 の方が向いている気がする。」
「よし、決まった。」
そして召喚されたのが、ヨシフ・スターリン と 朱元璋 だった。
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◆ フリップを使った推理対決
神々は天界の住民の一人を適当に舞台に呼び寄せた。男は少し緊張した様子で立っている。
「さて、この男の職業と性格を当てよ。」
神々が用意したフリップを手に取り、それぞれの挑戦者が答えを書く。
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⚪︎マイクロフト・ホームズ
マイクロフトはペンを取り、一瞬で書き終えた。
『鍛冶職人、几帳面な性格』
「簡単な問題だ。」彼は素っ気なく言う。
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⚪︎スターリン&朱元璋
一方、スターリンと朱元璋は、じっと男を見つめていた。
「……」
ペンを動かさず、思考している。
「……」
神々がしびれを切らしそうになった頃、二人はようやく動き出した。
そして—— フリップの全ての空白を埋め尽くした。
「お、おい……」
神々は戦慄した。
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◆ 異常な推理の暴走
スターリンのフリップには、こう書かれていた。
『鍛冶職人、武器密造の可能性あり。妻の兄が反政府組織に所属している可能性あり。現在の友人の三割が過去に犯罪歴を持つ。彼の工房で密かに作られた短剣が市場に流れている証拠あり……』
「……なぜそんなことまで?」神々の一人が震えた声で尋ねる。
「見れば分かる。」スターリンが冷静に答えた。
朱元璋もフリップを掲げた。
『鍛冶職人。彼の祖父はかつて村の統治者だったが、不正を働いていたため、反乱で処刑された。そのため彼の家系には反骨精神があると推測。工房の弟子の中に、一人、過去に逮捕歴がある者がいるはず。その交友関係を追えば、おそらく町全体の反政府勢力の分布図ができる』
「いや、さすがにおかしいだろ!」
神々はツッコミを入れるが、二人の手は止まらなかった。
彼らはまだ フリップに書き続けている のだ。
気づけば、内容は「推理」ではなく——
「処刑対象リスト」 に変わっていた。
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◆ 止まらない連座処刑リスト
「さて、最終的なリストが完成した。」スターリンが満足げに頷いた。
『処刑対象者リスト』——総計 3万人。
「思ったより少ないな。」朱元璋が呟く。
「まあ、この男は割と善良な方だろう。」スターリンが微笑んだ。
二人は、満面の笑みを浮かべていた。
心の底から、楽しそうに処刑リストを書き上げていた。
神々は凍りついた。
「お、おい……」
「……」
マイクロフト・ホームズが無言でフリップを置いた。
そして、誰よりも素早く神々の方へと逃げた。
「ちょ、ちょっと待て!」神々の一人が叫んだ。「ホームズ、普段は面倒くさがって動かないだろ!」
「こんな異常者どもと関わっていられるか。」
マイクロフトの冷静な言葉が、逆に恐怖を煽った。
「……や、やばい、なんかこっちを見ているぞ。」
スターリンと朱元璋が、神々をじっと見つめていた。
「おい……あの二人、ブツブツ何か言ってるぞ……」
「ひっ……!」
「……つまり、天界にも反乱分子がいるのでは?粛清せねば…」
神々の恐怖はピークに達した。
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◆ 雷、そしてゼウスはいつも通り
突然、雷が轟いた。
「馬鹿者ども!! 二度とこんな邪悪な者を天界に呼ぶな!!」
轟音とともに、スターリンと朱元璋は消え去った。
だが——
その直前、二人はゼウスの顔をじっと見て何かを呟いていた。
「……」
ゼウスの背中を冷や汗が伝う。
「あのゼウスが……汗をかいた?」
それは、神々がこれまで見たことのない光景だった。
「やばい、今回ばかりはマズかったかもしれん。」
案の定ブチ切れモードのゼウスが、顔を真っ赤にして、全身から稲光を放ちながら神々の方へ向かってくる。
「貴様ら!今回は絶対に許さんぞ!!」
「やばい、どうする?」
「……マイクロフト、頼む。」
「断る。」
「んー、クロスワードパズル10年分でどうだ?」
「……だが、断る。」
「じゃ、じゃあ神々図書館の入館証でどうだ!!」
「………仕方ない。」マイクロフトが前に出た。
五分後。
「いやぁ、実に有益な実験だったな!こちらこそ怒って悪かったな。みんなこれからも頑張れよ!」ゼウスはニコニコしながら帰っていった。
「……さすがゼウス。」
「…チョロいな。」
「…まだまだイケるな。」
神々は心の底からそう思った。