上杉景勝VS古今東西の喜劇王 ~元祖笑わない男笑わせる男は誰だ選手権~
天界で繰り広げられる「神々の遊び」。
前回の弓対決では、まさかのノアの箱舟沈没事件が発生し、ゼウスの怒りを買った神々。
「今回は静かで平和な遊びにしよう」と、彼らは懲りたような顔をしていた。
——しかし、神々が選んだテーマは、またしても奇想天外なものだった。
「元祖笑わない男 笑わせる男は誰だ選手権」
今回、標的に選ばれたのは、戦国時代の名将 「上杉景勝」。
「笑わない男」として知られる彼を、どれほどの芸人が挑もうとも、決して微動だにしない。
そんな景勝を笑わせるべく、神々は東西の偉大な喜劇王たちを召喚した!
・ ギリシャ喜劇の父「アリストパネス」
・ サイレント映画の巨匠「チャップリン」&「バスター・キートン」
・ 奇想天外な禅問答の天才「一休さん」
世界最高峰の笑いの使い手たちが、景勝の鉄壁の表情を崩すため、次々と技を繰り出す!
しかし、競技の行方は次第に神々の思惑を超え、会場は大爆笑の渦へと飲み込まれていく…。
果たして、景勝は最後まで笑わずにいられるのか?
それとも、どこかの天才芸人が彼の鎧を崩すことができるのか?
神々すら巻き込んだ「笑いの戦い」、ここに開幕——!
神々の遊び続編:「元祖笑わない男笑わせる男は誰だ選手権」
◆ 全く懲りない神々
天上界の神々が再び集まっていた。前回の弓矢対決で源為朝がノアの箱舟を沈めた一件があり、ゼウスの怒りを買った神々は、慎重に次の遊びを企画する必要があった。
「為朝のせいで、ゼウスに大目玉を食らったから、今回は派手なのはやめよう。」
「そうだな。静かで平和な企画にしようじゃないか。」
そこに日頃から穏やかで控えめな日本の神が手を挙げ、静かに言った。
「前回はウチの偉人が迷惑をかけたから、今回はその埋め合わせをしようと思う。ちょうど静かな企画にぴったりの者を用意した。」
その神が用意したのは、戦国の名将「上杉景勝」だった。彼は「笑わない男」として知られた武将。神々はこれを聞いて目を輝かせた。
「なるほど!景勝を笑わせる企画か。それなら静かでいいし、我々も楽しめるだろう!」
こうして決まったテーマは、「元祖笑わない男笑わせる男は誰だ選手権」。笑わせる挑戦者として、古今東西の喜劇王たちが選ばれた。
◆ 競技開始:景勝 vs 古今東西の芸人たち
挑戦者として集められたのは、ギリシャ喜劇の父・アリストパネス、サイレント映画の巨匠・チャップリンとバスター・キートン、禅問答の天才・一休さんなど、錚々たるメンバーだった。
「さあ、誰が上杉景勝を笑わせられるのか!」神々は高みから盛り上がりつつ、試合の開始を見守った。
最初に挑んだのはアリストパネス。風刺的な短編劇を披露し、時代を超えたユーモアを放った。しかし景勝の表情は微動だにしない。
次はチャップリン。コミカルな動きと見事な身体芸を見せるが、景勝の冷静さは崩れない。キートンも「石の顔」と呼ばれる自身の特技を駆使して挑むが、景勝は石よりも堅かった。
一休さんはトリッキーな禅問答で景勝を試す。「殿、笑わない理由をお聞きしても良いですかな?」「…」沈黙のままの景勝に、一休さんも手をこまねく。
◆ 神々の大爆笑
一方で、芸人たちが披露するユーモアは神々に大ウケだった。
「アリストパネスの劇は風刺が効いてるな!」
「チャップリンの動き!あれは何だ!面白すぎる!」
「キートンの無表情芸がツボだ!」
もはや笑わせる相手が景勝であることなど忘れ、神々は芸人たちのパフォーマンスに夢中になっていった。
そのうち芸人たちも「景勝よりこの爆笑している神々を笑わせるほうが楽しい」と思い始め、次々と神々向けの芸を披露し始めた。
◆ 混乱の頂点とゼウスの登場
会場は芸人たちの連続パフォーマンスで笑いの渦に包まれ、当初の目的など完全に忘れ去られていた。するとそこに雷鳴が轟き、ゼウスが現れた。
「また貴様らは騒ぎを起こしているのか!何が静かな企画だ!」
しかし、ゼウスも芸人たちのパフォーマンスを目の当たりにすると、思わず吹き出してしまう。チャップリンの身体芸に腹を抱え、アリストパネスの風刺劇に爆笑。一休さんの禅問答には思わず膝を叩いて大笑いした。
「ぐはははっ!面白い!笑いすぎて呼吸が苦しい!もう勘弁してくれ!」
ついにゼウスまでがギブアップする事態となり、神々も全員息絶え絶えで笑い転げていた。
◆ 結末:敗者は神々
結局、試合の趣旨を完全に忘れた神々は、「景勝を笑わせる」という目的を放棄し、芸人たちを褒め称えて会を終えた。
「今日の勝者は芸人たちだ!」
景勝は静かにその場を去ったが、誰もそれに気づかなかった。
◆ 夕暮れ時の帰路
その日の夕暮れ、上杉景勝は家来の直江兼続と共に会場を後にしていた。兼続はちらりと主人の様子を伺い、苦笑した。
「しかし殿、今日は災難でしたなぁ。神々は実に御し難いものですな。いや、だからこそ神なのでしょうが。あははっ。」
景勝は無言のまま歩いていたが、その足取りはどこか重かった。
そこに、先ほどの猿回しで使われた猿が現れた。猿は景勝の前に駆け寄ると、彼の沈んだ様子を見て、真似をしながら滑稽な仕草を始めた。
その姿を見た景勝は、一瞬驚いたような顔を見せたが、やがて口元に微笑を浮かべ、こう呟いた。
「お前も大変だったな。こんな男のために芸をさせられて…ふっ。」
それを聞いた兼続は目を丸くした。
「おっ!殿、今…笑われましたな!」
景勝は何も言わず、猿を抱き上げて再び歩き出す。その表情は穏やかで、猿も安心したように景勝の肩にしがみついていた。
兼続も笑顔を浮かべながらつぶやく。
「殿、今日は良き日でございましたなぁ。」
「…ああ。」
そうして静かに家路につく景勝の後ろ姿は、いつも以上に堂々としていた。