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エピソード7 フラグを折った!……かもしれない?

 翌朝、教室に入った途端に第二王子が寄ってきた。

 教室にいる生徒の数はまだまばら、まだ始業時間には早い。

 こんな早い時間から教室で待っているって、第二王子ってもしかして暇なのか。楽しみで仕方なくて早く来ちゃった系男子なのか。だったらいっそ微笑ましいわ。


「おはようございます、殿下。お早いですね」


 微笑んで挨拶をする。『早い』は嫌みではない。純粋な感想だ。


「おはようイザベル。アシュフィールド家の三男と婚約したそうだな、おめでとう」

「は?」


 笑顔のまま固まる。

 あ、そうか、王命だって言ってたっけ。第二王子が知っていても不思議はない。


「あ!……それは」


 承知したつもりはないんだけど、強制なんでしょ! 和やかな笑顔でお祝いの言葉を言っているこいつの意図はなんだろう。


「アシュフィールド令息たっての希望と聞いたが、イザベルのどこがよかったのか」

「さすがに殿下であってもその言葉は失礼ですよ」


 抗議を入れるところはちゃんと入れておかないと。

 第二王子の中でどんなイメージなのか気になるところだけど、今はそうじゃない。


「私にだって、良いところはあるでしょう?」

「……ある、か?」


 ひどすぎる!

 でも、いいわ、殿下に好かれたいわけじゃないし。

 ――昨日の放課後まではこの人と婚約するって息巻いていたのに、どうしてこうなった。

 ……つーか第二王子はこのまま放っておいてちゃんとヒロインと恋に落ちるのかな。不安しかない。


「そういう殿下のほうこそ、そろそろ婚約者を選ばなければならないでしょう?」

「ん、イザベルに先を越されるとは思っていなかったからな、今頃選定委員会も大騒ぎだろうな」

「他人事みたいに」

「どうせ、わたしの意思など一切聞いてはもらえないだろうから、他人事になっても仕方ないだろう」


 そうだよね。王子様だもん、個人の感情で決められるもんでもないか、って駄目駄目! もっと「俺はこいつがいい!」ってヒロインを手に入れるぐらいのガッツ持たないと、ゲームが進まないでしょ!

 それとも何? ヒロインに惹かれていくうちにそういうガッツが生まれるとでもいうの。


「イザベルとともに将来を歩んでいくのだと思い込んでいたから」

「は?」


 何だかやけに優しい口調でそんな言葉をかけられて、時が止まった。

 何言ってんの、こいつ!?


「描いていた将来を再構築させなければならないのは面倒だな」

「で、殿下?」


 なんだそりゃ! って気分だ。

 それって、イザベルが結構好かれてたってことか? 順当にいけばそうだったってこと?

 今私殿下に口説かれてるで認識合ってる? わかりずらいよ! 言い方も遠回しすぎる。


「魅力のない女を妃にしないで済んだではありませんか。もっと素晴らしい女性と出会う機会を得たということでしょう」

「イザベルほど愚痴を聞いてくれる者もいなかったからな」


 そういう愚痴聞き役を妃にしちゃだめだと思うの。

 でもこれは照れ隠しなのかもしれないしな。こういう時どういう反応すればいいか、経験値が低すぎてわからない。


「婚約者になる方には優しくして差し上げてくださいね」

「言われなくても」


 いつものように図々しい笑みを浮かべる第二王子の表情からはその真意を伺い知ることはできない。

 だけど、これ、婚約しなくてもよかったのかもしれない。うっかり婚約申し込んだら、なんか普通に婚姻までたどり着く未来が私にも見えた。私が結婚してどうする!? みたいな。

 そういう意味においてはアシュフィールド三男坊ナイスアシスト! なあんて思っちゃうけど、そういう場合じゃなさそうだ。

 話し合いがんばろう。


「殿下、ありがとうございます。ちなみに私、まったく承諾したくないのですが、これって断れないお話なんですよね」

「当然だ」


 わかってはいたが、一応確認しただけだ。

 こうなりゃ腹くくって婚約を受け入れるしかない。


 でもさ、もがけばもがくほど「空の囁き」からとおざかっていくような気持ちになってきたんだけど。

 やっぱイザベルがヒロインいじめをしないのが悪いのか。

 悪かったとしたら、今からいじめをするのかっていうとできる気はしないけどね。

 『いじめかっこ悪い!』だから。



 授業初日なので簡単な授業内容の説明と、担当教員の自己紹介で授業は終わる。

 こちらの学校は日本でいうところの高校と同じで、同じクラスの人間が同じ授業を受けるという形。

 高校時代に戻ったような気分だわ。っても前世の記憶って全然ないんだけどね。

 何となく絵にかいたような「ごく普通の」社会人だった気がする。んでもって死因はたぶん落雷だわ。

 

 雷が近くにおちて、視界が一面白くなった時、「あ、このまま死ぬのね」と思った感情がよみがえったから多分そう。

 それしか覚えていないし、最近唯一覚えていたはずのゲームの知識すら半分以上消えていることが判明したところだ。

 転生したのに記憶が使えないってどういうことよ。

 ミニゲームで裏カジノで遊べるんだけど、そこでコインを購入するとき、838861枚が4Gで購入できる某有名タイトルゲームのパロディは覚えているのに、肝心なメインストーリーの記憶がないって。

 どうなってんだ、私の海馬!(記憶をつかさどる脳の部分)

 ※ちなみにこの世界の通貨はGじゃないから実際にはコインは購入できません。

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