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エピソード5 ヒロイン登場

 第二王子とそんなやり取りをしていれば、担任教師が教室に入ってきた。

 

 さあここからが本番。ついにゲームの時間軸に入る。

 スチルで見たことのある担任が「これから一年ともに学ぶ仲間だ」とかそれっぽいことを言い始めた。

 地味におとなしく目立つことなくひっそり終えるつもりの三年間の始まりだ。気張っていくぞ。(矛盾)

 クラスに入ったら自己紹介イベントがはじまるはず。


 

「――では、私から」


 案の定担任の口から出た自己紹介の単語。「誰からやってもらおうか」という言葉に手をあげたのは第二王子だ。

 ゲーム通りの展開に、こっそりよしよしと頷きハトコに注目した。


「セルダンだ。第二王子という身分ではあるが、校内ではみな平等。気軽に話しかけてくれて構わない。学校では剣術を学びたいと思っている。よろしく頼む」


 平等を口にしながらも上から目線の挨拶。これもまたゲームどおりだ。

 それでもその堂々とした態度は、男女共に好感を抱かれたみたい。ぱちぱちと拍手があがる。

 女子生徒は、第二王子をうっとりした目で見ているのがわかった。

 まあ同い年でこんな立派なのってなかなかいないからそうなる気持ちはわからんでもない。


「次は――」

「身分が高い順に挨拶すればいいだろう。イザベル」

「はひぃ!?」


 いや確かにゲームだと第二王子の次に、勝手に立ち上がって挨拶していたのは(イザベル)だったけど、まさか王子に促されるとは思わなかった。

 とはいえ拒否する必要もない。さっと立ち上がった。


 地味に、地味に、よ。

 ここでいきなり目立ってしまわないように、ごく普通の自己紹介をしないと。

 目指せ、モブ!


「イザベルです。趣味は読書で、学校では魔法学を学びたいと思っています。よろしくお願いします」


 意識してゆっくり話し、ぺこっと頭を下げて椅子に座る。

 ゲームだと王子の婚約者であることを強調して高笑いをあげていて「何だこいつ?」状態だったけど、多分普通の挨拶っぽい感じにやれたはず。

 公爵家の名前も出さなかったし。

 

 ぱらぱらと拍手があがって椅子に座る。同時に次の生徒が席を立った。

 立ち上がったのは侯爵家の次男だったかな?

 彼も王子や私に倣って侯爵家の名前を出さずに自己紹介を終えた。

 

 侯爵、伯爵と続き、男爵家の子女がいないこのクラスで最後は子爵家の子女だ。

 子爵令嬢はヒロインのみ。

 乙女ゲーにありがちな下町育ってきたけど実は貴族の庶子だったパターン。

 貴族っぽくない裏がなく底抜けに明るい性格が特徴。うん、判を押されたかのような量産系ヒロイン的性格だ。


 伯爵家令嬢の自己紹介が終わった後、勢いよくヒロインが立ち上がった。

 パッケージイラストに描かれているとおりの黒髪ストレートにキラキラした光が宿る黒い瞳。正統派美少女だ。

 どこか気品がある真面目そうで、純情そうな子だ。

 なるほど、ヒロインだなあれは。一目でヒロインってわかるわ。

 ちなみに私は金髪に青い目の量産系貴族令嬢だ。美少女だけれど、少しだけ吊り上がった目と口角が下がった口元が量産型悪役令嬢の特徴。こちらも一目で悪役令嬢だとわかる仕上がり。


「ひ、ヒカリです。事情があって下町育ちでして、マナーは勉強中です。もしかしたら大変失礼なことをやってしまうかもしれませんが、遠慮なく指摘していただけると嬉しいです。趣味はお裁縫です。よろしくお願いします」


 少しだけ教室内がざわついたのがわかった。

 ゲームで見たときには何とも思わなかったけど、実際にこの場にいるとざわつくのがわかる。こんなに馬鹿正直に自分の出自を明かさなくてもいいのに、と。

 だけど、実直さはプラス評価ね。

 プレイヤーだった時の気持ちが残っているせいかヒロイン贔屓しがちだけど。

 明るくてかわいくて逞しい。何とか第二王子を攻略して私も救済してほしいもんだ。


「王子様と庶民が同じクラスなのかー……」

「なんの問題があるの、血統という意味では彼女も尊い血を引いているでしょう」


 侯爵令息の独り言に思わず反論を口にしてしまったせいで、クラスのみんなの目が私に向いた。

 やば。思わずヒロイン擁護をしてしまった。


「イザベルの方がよっぽど庶民のようなところがあるしな」

「ちょっと、殿下!」


 どういう意味だ! というツッコミは慌てて飲み込んだ。

 庶民っぽいって! そりゃ前世庶民だから感覚はかなり引きずっていると思う。

 おかげでちょっとだけ口が悪い。

 でもそういうのは全部上手に隠せるようにはなってきたと思いたい。

 たまにボロが出ちゃうけど。

 

「ヒカリ、イザベルに勉強中のマナーを教授し、少しは貴族令嬢らしく振舞えるようにしてもらえないか」

「え! いえ! そんな! 恐れ多いです!」


 ヒロインに冗談を言い放つ王子に、ヒロインは真っ赤に顔を染めて遠慮するヒロイン。

 何か漂う空気がちょっといい感じ。

 こうやって二人を交互に見ると、並んだらすごくお似合いの二人って感じに見える。

 そういう風にキャラクターデザインされているっていっちゃえばそうなんだけど、やっぱり私、この二人がうまくいくのを見たい。

 そのためには、とりあえず当て馬になる必要がある。

 ――あるかな? なんか自分やっていること裏目にでそうでかなり不安なんだけど。

 とりあえずは、あれよね、困った時には相談。父に相談だわ。

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