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エピソード4 ゲームのはじまり

 そんなわけで入学式。

 

 伝統を重んじる国立の学校である。通うのは貴族の子女のみ。

 優秀な平民はまた別の学校があってそちらに通うので、ここにいるのは純粋に貴族のみなのである。

 15歳から18歳までの3年間、大人社会への入り口ともいえる。

 ここを卒業したあとは、家を継いで領主になったり、国で事務官として働いたり、騎士になったり、魔術研究所に就職したり、もちろん適当な家に嫁いだり、割と進路は広く開かれているようだ。

 私は卒業したら、家事手伝いという名目で慎ましく贅沢三昧をしたいと思っているので、留年しないで卒業できたらいいなぁぐらいの気持ちだけど。


 こんなすねかじり思想の娘がいて公爵家大丈夫か? と思われそうだが何を隠そう我が公爵家は私以外皆超有能なのである。

 兄姉全員が学校を成績トップで学校を卒業しエリートコースまっしぐら。

 兄1は領主代行として領地で活躍、兄2は第一王子の側近、姉は他国の王子様に嫁ぎ将来の王妃様と。

 我が家の将来は安泰だというのが世間の目。

 だからまあ、一人ぐらいみそっかすがいても問題ないはず。多分。


 とはいえ、世間体もあるからな、成績は真ん中ぐらいを保っておこう。

 でもって、第二王子と婚約して破棄されて傷物扱いとなれば、一生家にいることも可能かな?

 やっぱり婚約申し込もう。今日帰ったら即行で。


 入学式も佳境、新入生代表の挨拶へと次第が進む。

 当然ながら新入生代表は私じゃない。第二王子が壇上に登る。

 ハトコにあたる彼とは一応親戚付き合い程度の交流はある。

 今日はその金髪も綺麗にセットされていて、いつも不機嫌そうな表情もうまく隠されているのがわかる。

 王子様、と言ってみんなが想像するような絵にかいたような王子様がそこに存在していた。


 壇上の王子様に、あちらこちらでうっとりしたようなため息が漏れる。

 皆、奴の本性を知らないからそういう反応になるのだろう。

 

 恒例の親族新年会で『世の中の何もかもが気に食わない』みたいな目つきの悪い顔で現れ、側近やら重鎮やらの愚痴を私に一方的に吐き捨てていったハトコの姿を思い出し、思わず遠い目になってしまった。

 アレは小さいころから私のことを愚痴吐き捨て担当と思っている節がある。

 関係的には幼馴染にもなるんだけど、そんなに甘酸っぱい関係じゃない。

 ゲームではイザベルとの関係がギスギスしてたけど、婚約していない今はキラキラ王子様☆ではない暗黒面っぽいものばかり見せてくるのはホントどうかと思う。

 そして破棄される前提とは言え、アレと婚約すんのはちょっとだけヤだなと思っている自分もいる。

 安泰が保証される未来のために! てのはわかってるけどね。


 でも檀上で堂々と言葉を述べているアレは結構マトモよね。

 あの愚痴吐き王子が自分で考えたとは思えないほどの立派な挨拶を原稿なしで述べ終え、ぴんと伸ばした背筋で元の席に戻っていく王子の姿を感慨深い思いで眺めていたら入学式が終わった。


 貴族の学校なのに、椅子がパイプ椅子っていうのはどうなのかしらね。



 入学式が終われば教室に移動だ。


 1年生のクラスは全部で3クラス。1クラスの人数が15人程度しかないというのだから、 貴族社会も少子化が進んでいる様子。


 第一王子の学年は、王族とお近づきになるチャンスということもあって、同学年に生まれた貴族の子女がとても多くてクラスを増やしたと聞いたけど、第二王子の学年はほかの学年に比べれば少し人数は多いけれどクラス数を増やすほどではなかったらしい。

 第一王子が盤石とはいえ、圧倒的なまでの差は愚痴を吐きたくなるのもわかるかも。

 救いは第一王子が既に卒業していることがぐらいか。


 一応ゲームの中では私は王子とヒロインと同じクラスだったけど、婚約者にならなかったことで変に改変とかされてないといいな。



 やっぱり同じクラスだ。

 緊張して張り詰めた空気の中、前方の黒板をぼんやり見つめながらもとりあえずはよかったと安堵した。


 あと入学式前に会った犬ことアシュフィールド令息は別クラス。

 助かった。あのノリでからまれるのは結構しんどい。


「イザベル」


 隣の席の第二王子にこっそり呼びかけられて視線をやる。

 私は高位貴族だし、第二王子と親戚なこともあって、席を近くにしておこうという学校側の忖度を感じる。

 まあ親戚だし、割と気安い間柄ともいえるから別に気にしないけど。


 あれ、でも、ゲームだと、第二王子はイザベルのこと蛇蝎のように嫌ってなかったけ?


「いかがなさいました、殿下」

「挨拶どうだった?」

「立派でございましたよ」


 小声で簡単に答えれば自慢げな顔になるので、扱いが簡単な小僧だなと思う。一応本音は心の中だけにしまっておいた。

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