エピソード0 ハイブリット幼女爆誕
薄暗い部屋を稲光が照らす。
その間隔は少しずつ短くなっていて雷雲が近づいてきていることを告げていた。
兄と姉たちは使用人に交じりおっかなびっくりテラスに通じる大きな窓から外の様子をうかがっている。
私はそんな兄弟たちを遠巻きに眺めながら愛用のブランケットを頭からかぶり、お気に入りのウサギのぬいぐるみをこれでもかというほどぎゅうと抱きしめていた。怖かったのだ。
怖かったけれど、頭を覆うブランケット隙間から遠くに見える窓から外を見ていた。
怖かったのだが、興味はあった。
時折鳴り響く怪獣の唸り声のような雷鳴に、5歳の私は身を竦ませながらも、どこかわくわくしていたのだった。
カッと音のない光の迸りとともに、爆発音のような音が鳴って、窓辺から「キャー」と大きい悲鳴が上がる。
目の前が真っ白になって、指先がびりびりとするような感覚が走る。
思わず悲鳴を上げようとして、大きく息を吸って――。
幼い頃の自分の記憶をなぜこんなに鮮明に覚えているかというと、視界が真っ白になったその瞬間、私は前世の記憶を思い出したからだ。
5歳の体に享年25歳の記憶が一気に流れこんできて、息を吸った瞬間私は昏倒したらしい。
起きたら、大人の記憶を持つハイブリット幼女が出来上がっていたのであった。