第一章 第六話 忘れていた感情。
ショウとサクヤは、一直線に走り出した。巨像は、向かってくる2人に拳を振り下ろす。だが動きが遅い為、簡単に避けることができた。背後に回りこみ、錆びた刀を振り下ろすが、弾かれてしまった。それもそうだ。相手は岩そのもの。ハンマーでなければ砕けない。
「くっそ、やっぱり硬い!」
「ショウさん!私達の武器ではゴーレムに対して有効な手段がありません!ゴーレムの体勢を変えて、岩に亀裂を入れます!そこに攻撃を!」
サクヤは「緑」と唱えた。その瞬間、地面から植物が生え、みるみる成長し、太く巨大なつるとなった。つるは、ゴーレムの全身に絡みつき、動きを封じた。
緑は植物魔法だ。植物を生成するだけではなく、生成した植物を自分の体のように操ることができる。
つるはその巨体を跪かせてた。植物の力は強い。時間はかかるが、硬いものでも突き破る力がある。縛られた箇所にヒビが入っていく。
「ショウさん!!!」
「うぅおぉおおおおお!!!!!」
ひび割れた箇所に刀を叩き込み、中の肉が剥き出しになった。核の一部が肉から突き出しているのが分かる。そこにすかさず刀を突き刺し、核を破壊した。
「終わりだ!」
ゴーレムは、知性が低い。あの小さな村に来るまでに複数回出くわしている。対処は難しくない。
「なんとかなりましたね。これでダンジョンクリアです!お疲れ様でした。」
「ありがとう。助かった。それにしても凄いな...魔法は。」
「ただの植物魔法ですよ?大袈裟です。」
「そうか?魔法が使えない俺からすれば凄いと思うけどな。」
サクヤは、俺の発言に驚いていた。魔法が使えない人など、見た事も聞いた事も無いと。転生者だから、ではないよな。ジェクトという男は転生後から魔法を使えたらしい。なぜ俺だけ使えないのだろう。わからない。わからないことが多すぎる。だが、いずれわかる事だろう。それより、今は...
「よくやった、サクヤ。命令とは少し違う形だが...まぁいい。これで宝は俺らの物だ。後は、わかってるな?」
1人男がボス部屋に入ってきた。サクヤのパーティーの者だ。今までどこにいたのだろうか。
「俺らの物?何言ってんだお前ら。コイツを倒したのはサクヤさんだ。」
「そのサクヤは、俺の女だ。」
サクヤが怯えてるように見える。その後続々と仲間がやってきた。
「リーダー!魔物の素材と冒険者の装備品回収完了しました!」
「よくやった。そこに倒れてるゴーレムも回収しろ。」
「了解しました!」
「サクヤ...どうした?お前に伝えた命令はまだ残っているだろ?」
「バルカン様...その方は...我々の力になっ、」
「黙れ。俺の命令に逆らうのか?その男の持つ武器の回収。それがお前の伝えた命令のはずだ...そうか...まだ足りないようだな。」
重装備の男は、サクヤの話を聞く気がないようだ。俺の女と言っていたが、扱いが酷すぎる。なんだろう。さっきから体の底から溢れ出ようとしてるこの感じ。
サクヤは怯えながら俺を見た。そして、刃こぼれした刃を向けた。しかし、その剣から殺気は感じられなかった。
「殺れ。」
マスター呼ばれるその男は、サクヤに命令するが、サクヤはその剣を下ろした。
「で...できません!!!」
「そうか...残念だ。お前には失望した。」
男は指を2人に向けた。中指に指輪をはめており、怪しげな色に輝き出す。サクヤの胸に謎の模様が浮かび上がり、意志とは関係なく体が動き出した。
「バルカン様!やめてください!私は...私は!!!」
サクヤは抵抗するが、体が言うことを聞かない。その刃を再びショウに向け、近づいて行く。
まただ...なんだ。....! この感じ。...あの時も感じていた。そうか...忘れていた...これは....
「ショウさん!避けて!」
......んにしろ。
サクヤの剣は、ショウの心臓を貫いた。




