第一章 第九話 バルカン戦
俺の目の前には、大剣を構えた屈強な男が立っていた。自分の女を奴隷と言った男。サクヤを自分の利益の為に泣かせた。クソ野郎...
俺は人を殺したことがない。だけど...それは、法律に縛られてるからだ。法律さえなければ、俺は生前、人殺しになっていた気がする。この世界にも法律はあると思うが、ダンジョンのシステムを知ってしまった今。
俺は...このクソ野郎を殺せる.....
「なぁ、おっさん。死ぬ準備はできたか...」
「面白い。俺の名はバルカンだ。あの世でその名を広めろ...」
「覚える気ねぇよ。あの世に行くのはてめぇだクソ野郎。地獄にな。」
俺の胸に刺さっていた剣はいつの間にか無くなっていた。そういえば、体がやけに軽いな。刀も軽く感じる。
ショウは、サクヤとバハムの場から離れ、バルカンに歩み出す。
「ショウ...さん。ごめんなさい。ほんとうに...ごめんなさい。」
「女よ。名はサクヤと言ったか。謝るのは後にしろ。目の前の相手に集中させるのだ。」
「はっ...はい!」
バハムの目にはかつて共に旅をしたジェクトの背中が映し出されていた。誰かの為に前へと進むそのショウの姿が...
だが、ショウはジェクトとは違う。決定的に何が足りないと思った。バハムとショウの心は一体だ。感じるのは「怒り」だが、その怒りの感情に違和感がある。
...なんなのだ。この感じは。
ショウは一直線にバルカンの元へ飛び出し、その刀を振るった。しかし、バルカンの大剣に軽く抑えられてしまう。その屈強な体は、見た目だけではないようだ。
「赤!!!魔法がろくに使えないガキが俺に勝てると思っているのかぁあああああ!!!」
力の差が全然違う。競り合いで負けているショウ。肩にバルカンの燃えた刃がめり込んでいく。
「口だけかぁぁああ!ガァァキィィ!!!」
「ぐぅぅぅ...るぅあぁぁぁぁぁ!!!」
腕が持っていかれそうだ。メリメリと肉の中に入っていく刃。とんでもない量の血が吹き出し、エンチャントされた炎がショウの服を燃やして行く。
ギリギリ大剣をいなし後方へ離れる。バルカンの大剣が地に落ち、衝撃が辺りに広がる。
体制を立て直し。呼吸を整える。
(ショウ。よく聞け...まずは傷口を塞ぐんだ。回復魔法は使えない。我の力を使い、皮膚を焦がせ。)
(わかった。)
俺はバハムの言った通り、白と唱え、吹き出す血を止めた。服はもうダメだ。その場に来ていた服を破り捨てた。
「ショウさん。魔法が...」
「白い火だと?見たことがない魔法だ。」
...クソ、やっぱりバハムの力無しじゃ、俺は何も出来ないのか。だったら、この力...
(バハム...お前の力使うぞ!)
(今のお前ならある程度使いこなせるはずだ。やってみろ。)
(言われなくても、そのつもりだ!)
俺は刀を両手で持ち、再び「白」と唱えた。刃に白炎がエンチャントされた。
...どうする、力では向こうの方が有利...
...! そういえば、この魔法、火だよな。
「ショウよ。やっと気づいたか。」
「なにがですか?」
「サクヤよ。分からぬか。まぁ...見ればわかる。」
バルカンは大剣を横に振った。炎の斬撃がショウ目掛けて飛んできたのだ。ショウの刀はその斬撃を軽く切った。
...これなら、いける。
勝ちを確信したショウは真正面からバルカンの大剣を受け止めた。
「お前はバカなのか!競り合いで俺が負けるわけないだろうがあぁあ!」
「...バカはお前だ。」
そう、ショウの狙いは相手の大剣を真っ二つにすること。火には温度がある。青→赤→白 これは現代でも同じだ。白炎が通常の炎に負ける訳がない。
エンチャントされた炎の勢いはみるみる弱くなる。
そして...
このガキの力は俺には匹敵しない。やはりな..大剣がガキの方に進んでいる。俺のかっ....
大剣はたしかにショウに向けて進んでいた。だが、それは大剣が刀に斬られていたからだ。大剣はやがて、真っ二つに斬られた。
「なにぃぃ!!?」
「これで終わりだ!」
戦いはこれで終わりだと思った。ショウは、バルカンの首に刀を振りかざそうとした。しかし、バルカンは腰から銃を取り出し、瞬時にショウの腹に穴を開けたのであった。
「グァッ.......」
「ショウさん!!!」
ショウは、バルカンの目の前に倒れた。息はしていない。ショウの命はここで終わりを告げた。




