第一章 第八話 死ぬ準備はできたか?
俺はサクヤの顔の口角を上げ下げしていた。よく見てなかったけど、サクヤの顔は綺麗だ。この子ほど涙が似合わない子は見たことない。笑え...笑うんだ。ん、てかなんだこの痛み。胸が痛い。これが、恋、てやつなのか。いや違う。これは...
俺の胸には、刃こぼれの酷い刃が突き刺さっていた。
「いってぇぇ...違かった...みたいだ。」
なんでこんなことになってんだ?全然理解が追いつかない。なんで俺刺されてるんだ。
「なんで俺、生きてんだ。」
「なんでお前生きてるんだ!!!」
驚いたのはショウだけではなかった。バルカンと呼ばれていた男も驚いていたのだ。
「おい....ショウ。あと数cmズレていたら我の翼に穴が空いていたぞ....誰だ....?我に刃を向けたのは...」
バハムがイライラした様子で服の中からふわふわと出てきた。周りの者は皆キョトンとした様子でバハムを見ている。
こいつ出てきやがった。めんどくさい事になる、て言われたけど、どうなるんだ。俺以外まだバハムの存在を誰も認知していない。てか、胸が痛い。気絶しそうだ。
「なんだ?あのトカゲ。」
「ほんとだ、トカゲだ。見ろ、羽生えてるぞ。」
「我を侮辱するか。破壊してやろう...」
火に油が注がれてる。めんどくさい、てこういう事か。まずいな。こんなとこであのドラゴンに顕現でもしたら。ここにいるヤツらどころか、ダンジョンが破壊される。
「人形じゃねぇの?なんかちょっと可愛いな。」
「我が...可愛いだと.... ふん、うるさいわ///」
バハムは...単純だった...ドが付くほどの。しかも、わかりやすい。鼻からプシュプシュと煙が出ている。
「しかし、ショウ...心臓だけに魔素を集中させるなんてよくできたものだ。」
「え?」
「え?」
気づいていなかったが、話によると俺は心臓を白い炎で守っていたらしい。刃はその炎に触れ、溶けて跡形も無くなったと、バハムは言った。
無意識にそんなことしていたのか...
「お前は刺される前にこんなこと言っていたな。「いいかげんにしろ」と。」
「あぁ...そういや言ってたような、言わなかったような... 違う形で魔法を使用したのは2回目だな。いや、一旦置いていいか。また後で触れる。」
そう、しばらくほーちしてしまった。目の前の男。今触れるべきのはそっちだ。
「終わったか?一時の休息は...死ぬ準備ができたようだな。」
「終わった。死ぬ前に聞きたいことがある。」
「いいだろう。1つだけだ。」
「サクヤは、お前の女なんだろ。大切にしろよ...」
「大切にする?奴隷をか?」
その男はサクヤを奴隷だと言った。奴隷は、主人に忠誠を誓うもの。この世界では当たり前のように売買される。サクヤは、一切の自由を許されなかったのだ。
バルカンはサクヤが自分の利益を生み出すための道具に過ぎないといった。
「俺は...利益のために仲間を雇い。仲間の為に欲しいものをあげた。サクヤは仲間の為のおもちゃに過ぎん。その為にわざわざ奴隷商人の元へ行き買ったのだ。」
人を殺すことを強制し身ぐるみも剥がさせた。サクヤがもっている武器も元は死んだやつが所有していた武器らしい。
悔しかっただろう...辛かっただろう...何日も何日も、よく耐えたな。
...! まただ、なにか溢れそうなこの感じ。そうか...刺された時、痛みで一瞬気を失って...忘れていたが、思い出したぞ。
これは怒りだ!あの時...俺が死ぬ前も感じていた。恐らく、この感情が働いて火の中に飛び込んだ。間違いない。
傍観者とかしたアイツら。なぜ見てるだけで行動しないのかと。
俺は、前に進んだ。これは優しさじゃない。怒りだ。
「なぁ、おっさん...死ぬ準備はできたか?」




