襲撃
聞いたことがある。世の中には、たった1人で一国を滅ぼすことができる<精霊術師>と呼ばれるごく稀に生まれる種族がいると。その者達は微精霊から、絶対に契約が禁じられている<精霊獣>と呼ばれる精霊達と契約し従えさせることができると。だが、その者達は精霊との契約の代償から契約が切れてしまうと、たちまち体を蝕ばれていきやぎて死に至ると。
その事を思い出したフィンはなぜ今まで忘れていたのか、今、目の前に起きていることから後悔をしていた。
確かにフィンはフェイスの家に着いたはずだ。それなのに目の前にあったのは家という形が完全になくなり、ただ瓦礫の山だけがそこに残っていた。フィンはその様子に完全に言葉がなくなり持っていたものを落とす。
ただ、その場で立ち尽くすのみだった。
ーフェイスは?フェイスは何処だ。
フィンは瓦礫の山を呆然としながらゆっくり歩き始める。そして数歩行った先に、ぐにゃっと柔らかい何かを踏みつけ下をみてみると、そこにはベッタリと血塗れになった手があった。
フィンはゾッと冷や汗をかき急いでその瓦礫をどかす。そしてそれは姿を表した。見知った顔でありフェイスの大切な人。元精霊術師だったであろうフェイスのお母さんだった。
身体はもう瓦礫の影響により押しつぶされてしまいみるも無惨な姿。心臓がある場所から腹部の真ん中までくっきりと穴が空いてしまっていたのだった。
ーくそ、私のせいで…。私がもう少し早く気づいていれば…
たとえ聴こえていなかったとしても何度も何度も心の中で謝り続けた。
「誰…か…たす…けて」
すると反対側の方で本当に小さく掠れ切ったような声が瓦礫の中から聞こえる。
フィンは急いでその場所に向かい瓦礫を退かすと中からフェイスの護衛を頼んだ衛兵が姿を現した。
ーーー
「フィンさん…お手伝いしたかったな…」
フェイスはフィンと別れ帰路につきながら呟いた。
「そ、それにしても貴方が無事でなによりです」
衛兵は気まずい雰囲気を変えたくフェイスに問い掛けるがこくりと頷く程度ですぐ元の気まずい雰囲気に戻ってしまう。
「困ったなぁ…」
フェイスは先程の問い掛けに対してかと少し反応を示すと、衛兵は直ぐ言葉を続ける。
「あの男は一体なんだったのだろうか。まぁ街の皆さんが無事でほんとなによりなんだけどハハッ…」
自分のことじゃないのかとフェイスは少しホッとするが、確かにフィンさんも何事もなかったことを考えるとよかったと思う。
「あの男性なんか怖かったです…」
フェイスはつい本音を呟くと、衛兵はやっと話してくれたと嬉しい反応を示す。
「そうだね…でも!大丈夫!今は僕が君のことを守るから安心してね」
堂々と胸を叩きながら意気揚々とする。
そして、その後も今までのことや何でもないこと等色々なことを喋っていると段々と心を開いて気づいたら家に着いていた。
「早いものですね。もう着いてしまいました。ここからはもう安全ですね。では!僕はこの辺で失礼します!またなにかありましたらいつでも声をおかけください!」
衛兵はそういうとビシッと背筋を伸ばし敬礼しその場を去っていく。
フェイスは去っていく衛兵の背中をみながら「ありがとうございます」っと一言だけ伝えると、フェイスは中に入ろうと玄関を開けた。
だが、それはいつも暮らしていた家とは全く違う家となっていた。天井は大きく崩れ、奥には母ではない誰かが立っていた。フェイスはその誰かに見覚えがあった。
忘れるわけがないあの男。先程までの男が立っていたのだった。その男はフェイスに気づいたのか、こちらに振り向き手を挙げた。
「おや、お早いお戻りで。貴方のおかげでようやく見つけましたよ。私が探し求めていた彼女をね」
っと男は言い放す。
フェイスはその手をみて膝から崩れ落ちた。あまりの恐怖に憎悪に怒りにただ呆然とするだけだった。男の手先にはびっしりと赤い血がついており、それと同じくらい脱力しきっている母のお腹に赤い血と大きく空洞が開いていたのだった。
フェイスはあまりの恐怖により全身から大量に汗が吹きだす。
誰かに助けを求めるように言葉にはならない悲鳴をあげた。
その悲鳴はあたり一面を響かせ、衛兵の耳にまで届き、衛兵は急いで来た道を戻っていったのだった。
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