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リアルの世界情勢

 20XX年。

 世界は“食糧枯渇”の危機に瀕していた。

 不足ではない。枯渇である。

 いくつかの発展途上国が地図から姿を消し、先進国ですら餓死者が相次ぐ、飢餓の時代が訪れていた。

 不景気だ不景気だと騒がれて久しいながらも、何だかんだで世界は金と物で満たされていた。

 ……肝心の食糧を除いては。

 

 人類は、負けなかった。

 自然由来の資源に一切依存しない、万能栄養転換体“シルバーゼリー”を生み出したのだ。

 この水銀のような見た目のゼリーを経口摂取すると、その人の体に合わせて必要な栄養素を過不足無く生成してくれる。

 副作用は無い。

 滅亡の回避は、呆気ない幕切れだった。

 ただ、新たな問題が発生した。

 自然、既存の食品は高級品とされていた。

 食の大半をシルバーゼリーに依存した低所得~中流層は、ほぼ例外なく、遅くとも常用開始から五年以内に重篤な精神疾患を患っていた。

 シルバーゼリーは無味無臭。

 フレーバーを添加しようにも、そもそも、その原料が無いからシルバーゼリーが生まれたのだ。

 楽しみを伴う文化が、一転して、“食”の概念が一変した。その事態に適合するには、人間の精神は脆すぎたのだろう。

 

 そこで、当時、成熟を迎えていたVR技術に白羽の矢が立った。

 実写同然のグラフィック、完全無欠の物理演算エンジン……そして、五感を直接刺激する神経作用システム。

 まさしく“もう一つの現実”に迫るものが、既に実現していた。

 現実での体は無味無臭のシルバーゼリーを摂取しつつ、脳では高級懐石料理だろうとフレンチだろうとイタリアンだろうと自在に感じる事が出来る。

 政府主導で“シルバーゼリー消費層”に、VR空間への退避が推奨されたのだ。

 

 当初は、単純なもう一つの人生(セカンドライフ)空間で食べては寝るの繰り返しであった。

 しかし、いかに食糧の消費が抑えられるとは言え、それでは全人口の大半が生産を放棄する事となる。

 変化に乏しいVR食っちゃ寝生活で、やはり精神を病む者も相次いだ。

 更なる対策を余儀なくされた政府が行き着いた先が“ゲーム”と言う媒体であった。

 VR居住者が精神を病む事の無い、変化に富んだ環境。

 そして、プレイヤーが活動する事によってゲーム内に生じる、広告収入などの経済効果。

 それらが噛み合った結果、ゲームの世界で生きると言う新たな生活様式が普及するに至った。

 

 ゲームメーカーが第三セクターとされる世の到来を、数年前までの誰が予測したものか。

 これが、VRMMO制度の始まりだった。

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