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ナマケモノの妖精  作者: 尾生 礼人
4/11

其の三人

いそがしい妖精さんにも休みはありました。妖精の世界に帰るのです。


以前、

『妖精さんは自分の体をもちません』

と書きましたが、それは こちらの世界での こと。


むこうの世界に体を置いて、タマシイだけで遊びに来ているのです。


ここだけの話、むこうの一日は、こちらの数ヶ月……。


ゆだんしてると、あっという間に時間がすぎてしまいます。


でもハックは、ウッカリねぼうしたフリをしては、オヤスミを おおめに とっていました。


なぜって、『おいしい』や『きもちいい』はともかく、『いたい』や『くるしい』は “ごいっしょ” したくありませんからね。


ハックはエリオンがつらくなると里帰りし、ほとぼり が さめると、ちゃっかり戻っていました。


でも、妖精さんがオヤスミ中に 生きものがキケンな目にあったら どうするのでしょう?


そこは さすが神様…。そんなこともあろうかと、魔法のかんさつ日記にはヒミツの機能が つけてありました。


なんと! 未来のページに『予定』を書いておくと、生きものが その予定の とおりに動くのです!


たとえば、


『一日中、家にいる』


と書かれた生きものは、一日中 家にいます。


ベンリですよね?


でも、こんなベンリな機能を妖精たちが ほうっておくはずもないのでした。


実は最近、妖精たちの間では、


’イタズラするだけじゃ、もの足りない!’


‘ひどい目に遭うよう仕向けて、ベスト アングルから鑑賞しよう♪’


と言うのが、流行っていたのです。


妖精たちは、さっそく この便利な機能を ‘鑑賞会’ に利用しようとしましたが、問題が二つ ありました。


一つは、『ありそうにないこと』を書いてもダメということ。


勉強ギライな子がいきなり勉強しだす とか、オシャベリ好きの子がズッとだまりつづける とかですね。


しかし、ここでも妖精たちは『ぬけみち』を見つけました。


なんと! 予定を書く妖精さん が『それが起きても おかしくない』と思い込めれば、大丈夫なのです。


よく言う、『ある! ある!』ですね。


わるいことに、妖精たちは自己暗示の達人……。


これまでイタズラをするたんびに、自己暗示で良心をごまかしてきたので、そんなことは朝飯前なのでした。


二つ目は、日記をチェックする神様の目を どうやって ごまかすか? でした。


おとなしかった女の子が いきなりダイタンになった とか、育ちの良いお嬢様が一人で貧民街に出かけた とか……。


ふだんの行動から かけはなれすぎてると、さすがにヘンに思われますよね?


でも、アイドルに あこがれていたら どうでしょう?


好奇心という言い訳が あったら どうでしょう?


何年も前から伏線を張っておくのも、生きものの お世話をしてきた妖精さんには必須テク。ライフ ワークに過ぎません。


何年も前から~なんて聞くとタイヘンそうですが、前にも言ったように こちらの数ヶ月は むこうの一日……。


妖精さんにとっては、予定を書いてオヤスミするのを繰り返せば済む話なので、かくべつ気が長い というわけでは ないのでした。


ときには、『みんなの前でハダカになる』など、ムチャな予定を書かれた 生きものもいましたが、そんな予定を『ある! ある!』と思えるのは、ほめられたことでしょうか?


『作品には、作者のココロが表れる』と言います。妖精たちの心は、そうとう病んでいたのかもしれません……。

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