其の弐
ある日、ハックが人間の町を見て回っていると、子どもたちがヘンテコなおかしをおいしそうに ほおばったり、ピカピカひかるオモチャで夢中になって遊んでいるのを見かけました。
『いいなぁ……。
おいしそうだし、楽しそうだナァ……』
ハックはキョウミしんしん です。
そこで こんどは人間の子どもを お世話することにしました。
ハックが お世話することに なったのは生まれたばかりの男の子。名前はエリオンと言いました。
お父さんは、がんばって お金持ちになった、いわゆる〝成金”です。
お金持ちの おうち の子なら、ゼイタクが できますからね。
これが都会の名家だと奪い合いになるのですが、ハックは そこそこのところで手をうったのです。
もちろん、お金のない おうち でも、両親にわるい おまじないを教えて他人を操らせれば、ギャングやペテン師として成功させられるのですが、それは それで面倒なのでした。
(彼らは、被害者を脅したり騙したりして言うことを聞かせ、「教訓を与えてやった」「これは知恵くらべだ」などと嘯いて良心を誤魔化しますが、ホントは被害者を わるいおまじないで操ってるだけなのです。まぁ、操られたなんて言っても誰も信じませんけどね……)
さて、男の子はスクスク育ち、おかし や オモチャを楽しむ お年頃……。
でも、オモチャで遊んでばかりでは、お友達ができません。
お勉強だって おろそかになります。
おかしを食べすぎれば太りますし、冷たいジュースを飲みすぎれば おなかをこわします。
ふつうは、イタイ目にあうと自分で気をつけるものですが、お父さんやお母さんがいくら言っても 聞きません。
いつしか、エリオンは、
『遊んでばかりで、だらしのない子』
と呼ばれるようになりました。
ここがハックの かしこい ところ……。
なにしろ、生きものたちは妖精さんのことを知りません。
そういった評判を作ってしまえば、乗っ取って遊びほうけたところで、誰にも(それこそ、エリオン自身にも……)気づかれませんからね。
そんなハックが なにより困るのは、エリオンが お手伝いや勉強の楽しさを知ってしまうことでした。
ここだけの話、お手伝いにはパズルや積み木のような楽しさが、勉強にはクイズやナゾナゾのような面白さが、それぞれ あるんです。
そういったことを知られてしまったら、いろいろと やりにくく なってしまいますからね。