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ラスボスはあっさり倒すものです

『よーくここまで辿り着きましたねぇ。お陰様で面目丸潰……視聴者様も盛り下がってますよ?』

「今本音漏らしたね。てかそれはこうなる事を想定せずに企画進めた貴女の咎じゃないの?」


 さて、目の前に旗が見えるところまできた。詰まるところゴールはもう目前。でもその前に上の人がうるさいから、少しだけ話に応じてあげようか。

 

『……減らず口が達者ね。そんな余裕顔を絶望に染めるのが、私は大好きなのよ』

「いーからとっととゲーム進めなってクソ司会者さん。どーせラスボスみたいなの用意してんでしょ? ホラ、早く」


 そしてそんな俺の調子に乗っかる形で来夏さんも軽く挑発する。で、当の本人は……、ほらやっぱり苛立ってるよ。

 自分より下だと思ってた人間にこんな態度取られちゃ、こういったタイプの人はそうなるだろうな。


『こ、の……。見下すなよ端役がぁ!! これ見て泣いて懺悔しろっ!!』


 そんなおばさんの声に続けて、目の前の壁が重い音を立てて開く。そして現れたのは、

 

 でかいロボット。二足歩行。

 手の部分には銃火器が取り付けられ、顔部分にはバルカンらしきもの。

 これを見て俺が思った事。それは、


「なんか最高に頭悪そう」

「そう言ってやんなって。一応ウチ最新型の兵器なんだからさ。ま、実戦に導入されてんの見た事ないけど」

「え、それ大丈夫なの?」

「さぁ?」


 まぁ確かに手の内が明るみになってないって事だけど、実績ゼロとも言える気がするんだよな。

 あと操縦してるのAIじゃなくて人か。コクピット見えるし。でも流石にこの巨体をAIが緻密に動かす事はできないだろうし、妥当か。


『さぁやっちゃいなさいっ!! でもただやるんじゃダメよ。圧倒的な火力差で蹂躙して追い詰めてからにして。そっちの方が盛り上がるからねっ!!』

「来るよ。来夏さん」

「分かってますって、のっ!」


 ロボから繰り出されたバルカン砲。だけど予測できたので横に飛んで躱す。

 着弾したところ見ると、地面が大きく抉れている。成程、自信満々に喚くだけの火力はあるみたいだ。


 けどね、このロボット、思った以上にあっさり倒せそうだ。


「ねぇ来夏さん。あのロボット……」

「えぇそうね。上手く誤魔化してるけど、よく見たら弱点ばっか。笑っちゃうわ」


 やっぱり彼女も気づいてたか。可笑しそうに微笑んでる姿が可愛らしい。

 でも、それなら話は早い。とっととケリ付けちゃおう。


「その様子だと考えてる事は同じだね。俺が陽動で前出るよ。隙見て君がサクッと決めちゃって」

「了ー解。任せなさいっての」


 そう言うと彼女はに髪をぐいっとかき上げた。

 一瞬、彼女の青いインナーが顕になる。こうする事が彼女の願掛けみたいなものなんだろうな。


「んじゃ、せーのっ」


 そんな声と共に俺は飛び出す。

 近くまで寄ると、ささっと後ろに回り込んだ。ロボも遅れて追いかける……、けど。


 動きがやたらにどんくさい。

 そう、こいつの弱点その一。遠距離戦を想定してるのか動きが超鈍い。近づけば容易に撹乱できてしまう程だ。


 現に俺の動きに全くついてこれてないし。銃火器の照準すら合ってないぞ。大丈夫か。

 そしてそんな現状に痺れを切らしたのか、ロボは少し前屈みになる。


 その時、こいつのもう一つの弱点が見えた。

 そう、それは、


「装甲でカバーしてるけど、関節部分に空きが出てる。配線丸見えね。ま、遠くのモンを相手するならいいとは思うけど」


 俺が動き回ってる間にそばまで寄ってきた来夏さんが言ってくれた。つまりはそういう事だ。

 で、そんな彼女は悠長にタバコを吸ってるように見える……、けど。


「近くに寄られると弱点になる。そうでしょ? 悟くん」

「うん。正解だよ」

 

 そう言いながらタバコの火を消さずに、その隙間に投げ込んだ。タバコの煙が投げ込んだ部分から立ち上がってはいるけど、ロボに目立った変化はない。

 距離取っとこ。なんかヤバそうだし。


『あらぁ? 何をしたかと思えばタバコ捨てただけじゃない! そんなのでこの兵器がやられるわけ――――』

「バーカ。火ぃ消してないタバコの先端ってさ、何℃あると思ってんの?」


 そう、彼女は火を消さずにタバコを配線の中に投げ込んだのだ。確かタバコの先端って600℃はあったはず。そんなのが飛び込んできたら。


 そう思ったその時、何かが弾ける音がした。

 音のした方を見ると、あーやっぱり。引火して火の手が上がってるよ。

 

 そしてその火が更に別のところに引火して――――、豪快な音が鳴った。そして足部分がスクラップに。いやそうは……なるもんなのかね?


 そして、ロボはバランスを失いグラグラと体を左右に揺らし、情けなくどてーんと体を横に倒した。

 いや本当あっさり倒せましたね。


『は……ぁぁあっ!!? 嘘、でしょぉっ!?』

「あっははははっ!!! あー最っ高だわ。切り捨てやがってふざけんな、ってさっきまで思ってたけどさ」


 気分爽快……と言わんばかりに来夏さんは声高く笑う。

 そして、上を高く見上げた。


「こんな結果なら捨てられてよかったとさえ思えるわ。ありがとね。支部長サマ?」


 そして、不敵に笑った。

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