プロローグ:裏切られた司会者
「……」
「えーっとだよ。いい加減泣き止めって」
「ぐずっ……。うっさいバカ」
「いや、まぁ君の気持ちも察せる……、ってなんで俺こんなこと言ってんの?」
突然ではございますが今の俺の状況を一言で言わせてくれ。
非常にめんどくさい。
目の前には1人の女性が体育座りで、顔を埋めて泣いている。
歳は見た目、俺と同じか少し上くらい。俺こと八柱悟が19だから……、それくらいか21とかかな。
格好は黒髪にショートヘア。スーツを着てちゃんとした格好をしている風だ。けど、よく見ると耳にピアス空けてたりとか、髪のインナーを青色に染めてるのが見えるあたり、プライベートじゃそこそこ遊んでそうな印象が見え隠れする。
人間的には、普通に俺が苦手とする……というか、関わるのを避ける部類だろう。
「そう思うなら黙っててよ。なんでわざわざデスゲームに巻き込まれたアホに憐れまれなきゃなんないのよ」
「そーいうなら黙ってますけど? 俺と君は敵対関係にある訳だし。でもさ――――」
そう、俺と彼女は本来敵同士。だから彼女に対して俺が哀れみの言葉をかける理由も、同情する必要性もない。現に向こうからも拒絶されてるし。はっきり言って寄り添う必要性ないんじゃ……とも思うわ。
でもね。彼女の今の状況酷いんですよ。割と。
それは――――、
「デスゲームの司会者だったけど、運営に裏切られて参加者に成り下がった貴女にそんな風に凄まれましても」
「言うなぁ!!!」
そう。つまりはそういう事。
俺はこのデスゲームの参加者。彼女は……、司会進行役だった人間。
それがこうして俺と同じ、弄れる立場になってんだから、さ。
まぁ可哀想だよねって話ですよ。