パンツイッチョマン VS ノーパン刑事 1
ナレーター(以降、「>」と表す): 前回ラストの次回予告で、衝撃的なタイトルを行っていましたね。「パンツイッチョマン VS ノーパン刑事」ですって! ゴツゴウ・ユニバースの枚鴨市界隈では頂上対決と言っても良い取組ですが、果たしてどうなることでしょう?
>初戦では、パンツイッチョマンが逃げましたね。ああ見えて、基本的には警察に手を上げていないパンツイッチョマンなので、見方によってはパンツイッチョマンの狙い通りの結果、ノーパン刑事にとっては失敗だったと言えます。今回も同じ展開だったら面白くないので、いくら異端の最勝寺先生でも、さすがに変えてくるでしょう。二人が激突せざるを得ない何かが起きるのではないでしょうか? ……その何かが銀子先生ではないと思います。正ヒロインじゃないですからね。
>もう一つ気になるのは、戦う場所が何処か、です。前回は雑居ビルの廊下でした。狭くて薄暗い、およそ他メディア向きではない環境でしたね。頂上対決ならば、そのあたり見栄えのする場所にしてほしいところです。スカイツリーなんか映えるんですが、パンツイッチョマンはともかくノーパン刑事をそういう晒し場に追い込むのは……いや、気にしないかな? むしろ、展望台の中どころか、どうにしかして外に出て突風吹き荒れる環境での戦いにも応じそうな気がします。風が強いと指弾の使えないノーパン刑事が圧倒的不利に思えますが、なかなかどうして、ここで列車が通った後でのタブレットパックン修行が生きてきますね。まさか、あれが伏線になっているとは……ということはないでしょうね。おそらく。
>最勝寺先生に以前聞いたところ、雑居ビルの戦いを気に入っているようです。「こじんまりした環境がいかにもゴツゴウ・ユニバース作品じゃん」と言っていて、「ボカァ好きだなぁ」と誰の物真似かわからない口調で締めていました。普段あんな話し方をしないので、物真似だと思うんですけれど、下手すぎるとオリジナルを知らなくてもイラッとさせられますね。……となると、頂上決戦ということで安易に高い所で戦うとなっても、スカイツリーより昭和臭がより強い東京タワーが向いていると思います。
>さんざん煽っておいて申し訳ないですが、個人的には「マント・ケープ論争」のような対決だと予想しています。だって素直に対決となると、「やり合えばどちらが死ぬ。つまらんだろう」というやつになりますからね。……まあ、「死ぬ」は言い過ぎですが、一応双方共に無敗の存在なので、どちらが上かハッキリすると、確かに「つまらんだろう」かもしれません。
>ここでグダグダ言っても始まりませんから、盗撮――じゃなくて観測を開始してみましょう。
>えーと、場面は……ん? 飲食店の内部ですね。……これは、中華料理店『天華』。枚鴨市警からノーパン刑事たちが時折訪れている場所、いわゆる行きつけの店ですね。
>お、やっぱり、その一角の座敷席にノーパン刑事と後輩刑事が座っています。ノーパン刑事はラーメンを食べていますが、後輩刑事は天津飯と餃子と卵スープのセットです。体は大きくないのですが、後輩刑事はよく食べるようです。……若いうちはいいけれど、年を取ってくる新陳代謝が落ちて、同じように食べていても贅肉が増えるようになるから気を付けた方がいいですよ。
後輩刑事(以降、「後」と表す): ところでアニキ……。
>後輩刑事は声を潜めて話す。彼らがこの店を利用するのはランチ客のピークが過ぎた後のことが多く、今日もそんな時間帯だった。二人の会話が漏れ聞こえる範囲に他のお客は居なかった。
後: あの「駅」での警報騒ぎ、アニキがお休みしていた日と重なりますけれど、まさか関係しては……いないですよね?
>なお、「駅」の部分は具体的な名称をあげていたが、なんだか立派な駅を汚すことになるのではないかと心配なのでボカシておきます。視聴者の方々が好きな環境に染めてください。
>後輩刑事の質問にピタッと動きを止めると、ノーパン刑事は丼から顔を上げた。サングラスは湯気で曇っているが、雰囲気から睨んでいるような鋭さを感じる。
ノーパン刑事(以降、「NPD」と表す。): タカ、お前、そう聞くからには覚悟ってもんはできているんだよな?
>声色も脅しているかのような低さだ。後輩刑事はブルリと体を震わせると、背筋を伸ばす。なお、足は既に正座だ。
後輩刑事: い、いや、その……すいません。ちょっと気になっただけで、別にアニキを疑って――
NPD: ありかなしかで言えば、なしだ。……いや、この場合、ありなのか?
>ノーパン刑事は小首を傾げながら、またラーメンをズルズルと啜る。この対応に、後輩刑事の態度が変わった。前屈みになると、片手をテーブルについて、ノーパン刑事の顔を横から覗き込む。あ、眼差しは丸っきり変わっています。「地雷を踏んだ」と焦っていた目から、今はいわゆるジト目。
後輩刑事: アニキ、もしかして、やっちゃいました?
>ノーパン刑事は後輩刑事の態度の変化に気付いていないかのようにラーメンを食べ続ける。
NPD: いや、だから、俺じゃねえぞ。やったのは、駅員の偽者だ。
後輩刑事: なるほど。……確か、公式発表では「誤作動」となっていましたが、違ったというわけですね。
NPD: 俺も直接、警報機を鳴らしたところまでは見ていないが、まあ、状況的にあいつがやったのに違いねえな。
>後輩刑事はホッと息を吐くと、肩の力を抜いた。
後輩刑事: アニキが直接やらかしていないなら、一安心です。しかし、真相まで行き着いているのはさすがアニキっすね!
>後輩刑事も食事に手を付け始める。ノーパン刑事が顔を上げると、向かい合う二人の中間に置いている餃子に箸を伸ばす。どうやら、二人で分けているようだ。
NPD: あれだ。白バイが不審車を追いかけたら事故ったのと同じだ。
後輩刑事: ああ、なるほど。じゃあ、その偽者とやらは何かやっていたのですか?
NPD: さあな。そこのところを聞こうとしたら、騒ぎを起こして逃げちまったんだ。ダチの話では、無賃乗車くらいはやらかしているようだが、俺たちの守備範囲じゃねえな。
後輩刑事: ちょっと、そういう事、外で言わない方がいいですよ。
>後輩刑事が低く言うと、周囲の客に聞かれていないか見回すが、その際も、天津飯を盛ったレンゲを口に持っていくのは止めない。
NPD: 世間じゃ、「事故を誘発させるから追うな」という声もあるが、警察官として舐めた真似されるとコケンに関わるからな。
後輩刑事: それはそのとおりなんですが、その事故で親族を亡くした場合だと「仕方ない」で済まないですから。
NPD: いや、それも、そもそも追われたくらいでビビって事故る連中がいけねえに決まってるだろうが。なのに、どうしてこっちが「悪い」って言われなきゃならねえんだ?
後輩刑事: 追いかけなくても、ナンバープレートを記録さえできれば、後から安全に捕まえられる、という意見がありますね。
NPD: はん。そういう連中は、「車の所有者だけど、その時は乗っていない」なんて言うに決まっているだろう。そもそも、ナンバープレートを偽造されていたら、繋がらねえだろう。その場に居る奴を現行犯逮捕が一番いいのに決まっている。
後輩刑事: それらは、そのうちコンピューター技術が向上して、押さえられるようになると思います。例えば、白バイ隊員はみんな録画装置を装備して、それに映った情報と、周囲の監視カメラの情報をリンクすれば、誰が乗って運転していたのかは特定できます。偽造ナンバープレートも、俺たちが見たらおかしいのがわかる物だったら、カメラ判定ですぐに星を付けられます。ナンバープレートの盗難利用も同じで、カメラ判定で被害届が出ればすぐ捕まえられるようになりますよ。
>ノーパン刑事が顔を上げると動きを止める。
NPD: ん? そんな事、できんのか?
後輩刑事: はい、将来的には。……でも、さらにコンピューター技術が進んでしまうと、証拠となるはずの動画があっさり加工できちゃいますから、「偽造だ」と騒がれると証拠能力が低くなりかねません。やはり、なるべく現行犯に近い状態なら、「加工する間もないのに動画として残っている」と言えるので強いですね。でも、これもコンピューターの処理能力が上がると、ライブ動画に対して加工が簡単にできてしまうようになっちゃうから、やっぱり証拠能力は低くなるかもしれませんね。
NPD: ……なんだ? コンピューターってのはそんなにすごいのか? だったら、そのうちコンピューター刑事ってのも出てくるかもしれねえな。
>ノーパン刑事はフッと笑うと、箸でつまみ上げた麺にフーフーと息を吹きかける。
後輩刑事: ええ、いずれはそうなるかもしれませんね。
>あっさりそう言われて、ノーパン刑事は硬直する。どうやら、冗談で言ったつもりだったらしい。
NPD: いや、そんなことになってみろ。お前、どうするんだ? 仕事がなくなるじゃねえか!
後輩刑事: いや、まだ先の話ですよ。でも、ボクが定年を迎える前にはそういうややこしいことにならないといいですね。
NPD: あ、ああ。そうか。
>まだショックを引きずっている様子だが、ノーパン刑事が食事を再開する。
後輩刑事: あ、それで、その偽駅員には騒ぎの中、逃げられてしまったんですか?
NPD: ああ。なんせ、あの人の波だからな。あと、こっちは非番で目立つわけにいかなかったから、無理だったな。
後輩刑事: 非番と言うか、事実上の謹慎でしたけれど。
>後輩刑事の呟きも、異世界鑑賞万華鏡システムは逃さず拾い上げます。
NPD: ん? 何か言ったか?
後輩刑事: いえ。
NPD: そうか。……で、仕方なかったから、先回りして待ち伏せた。
後輩刑事: え!?
>今度は後輩刑事が驚きから固まった。
後輩刑事: あんな広い駅をどうやって先回りしたんですか?
NPD: そりゃあ、決まっているだろう。刑事の勘だ。
後輩刑事: あ、そうですよね。
>これ以上聞いても無駄だと良く分かっている後輩刑事は、また食事に戻った。重要なことではありませんが、後輩刑事は食べるのが早いです。あまり噛んでいないのかもしれませんね。
後輩刑事: でも、そこでも取り逃がしたんですか? アニキらしくもない。
NPD: ああ。だが、あれはまあ、幽霊みたいなもんだったからな。
後輩刑事: え!? ……ヤだなぁ。季節でもないのに、そういう話。
>顔が引きつっているだけでなく、食べるのが止まっているあたり、怖い話は苦手なようですね。
NPD: いや、マジだぞ。あっちからこう向かって来て、捕まえようと思ったら、消えちまったんだ。ぶわっ、と風だけ残してな。
>ノーパン刑事の正面からの手振りを交えた話に、後輩刑事が身を震わせる。ノーパン刑事はそんな様子を気にせず、後ろを振り返りながら、話を続ける。
NPD: 当然、俺は後ろを確かめるよな。そうしたら――
後輩刑事: ひっ!
>先読みして怖い想像をしてしまったのか、後輩刑事が声を漏らす。再び前を向いたノーパン刑事は後輩刑事の態度になにやら違和感を覚えたようだが、首をちょっと傾けた後、そのまま話す。
NPD: 後ろにも誰もいなかったんだ。
後輩刑事: あ、そ、そっか。そ、そりゃあそうですよね。そういえば、消え失せたって言っていましたよね。アハハハ。
NPD: ありゃあ、幽霊みたいなもんだったが、だが、実在する。
>ちょっとややこしい物言いに、また後輩刑事の顔が曇る。まるで「幽霊は実在する」と言われているように感じているのでしょう。
後輩刑事: 大丈夫ですか、アニキ? この後、ちょっと神社でも寄って、お祓いでも受けた方が――
NPD: おそらくはH案件だな。
>警察内で使われている隠語である「H案件」。異能者が関わる事件を指しているようである。それがどう処理されているのか。そもそもゴツゴウ・ユニバースで異能者はどういう目で見られているのか。そして異能者の犯罪はどの程度手が付けられないものなのか。それらについての資料は、最勝寺先生から届けられていますが、面倒くさいのでここでそれを詳細に語るつもりはありません。
>ただ、世間的には、異能者の起こす事件は異能者が解決するのが妥当、と見られています。一部の視聴者からは出る出る詐欺と言われているあのヒーロー「花鳥風月」が人気の理由でもあります。実際には、一般人による組織が対処していることも多いのですが、それらはあまり公にされていません。都合の悪い情報が幾らか含まれているからですね。どう都合が悪いかについては、コメントを控えさせていただきます。
後輩刑事: あ、異能者ですか。そ、そりゃあ、そうですよね。うんうん。お化けは関係ない。良かった良かった。
NPD: ん? 消え失せられるんなら、お化けみたいなもんだろう?
後輩刑事: いやいや、アニキ。そこは大きな差がありますよ。消えられても生きている存在と、死んでいるのにこの世に未練があって化けて出てくる存在は全く違います。
NPD: 透けて見えるかどうか、か?
後輩刑事: うん、まあ、それもそうですね。でも、ちょっと感覚的な問題なので、アニキは分かりづらいかもしれません。
NPD: そうか? じゃあ、ダーツで例えると?
後輩刑事: いや、ダーツで例えると、と言われましても……。ダーツはよく知りませんし、そもそも、こう言っちゃあ失礼ですが、ダーツってそんなにも物事を拾い上げられるほど広い世界ですか?
NPD: 広いかどうかと言われれば、狭いな。これくらい広く見えても、なかなか思った所には刺さらないみたいだから。まあ、俺は問題ないが。……ん? これって逆に思った所に刺さらないのは広いから、と言えるのか?
後輩刑事: あ、はい。もう大丈夫です。ありがとうございます。
>なんだか、ノーパン刑事に理論の通用しない怪しい議論へ連れて行かれかけましたが、さすがは相棒の後輩刑事は切り方がうまいですね。助かりました。
後輩刑事: ……でも、そこで取り逃がしたんなら、そいつはまたどこかで何か善からぬ事をやっているという事なんですよね。
>ここで、ノーパン刑事が突然箸を置いた。まだ食事は途中だが、爪楊枝を一本取り出すと、それを咥え、唇の端から端へと転がしていく。
後輩刑事: アニキ?
>食事に目を落としていた後輩刑事だったが、雰囲気が変わったことから顔を上げた。
NPD: いや、たぶん、それはねえな。
後輩刑事: ん? どうしてですか?
NPD: 一つは、そもそも偽駅員が出没するって言っていたダチから、そういう話が届かなくなったのが理由だが……一番は勘だ。
後輩刑事: はぁ。刑事の勘ですか。
>この言葉について、後輩刑事は軽く流すこともあれば、今のように少し立ち止って考えることもある。なかなか奥が深いものなのかもしれない。
NPD: なあ、タカ。法ってのは何だと思う?
後輩刑事: いきなり、難しい問題ですね。
>後輩刑事が言いながら、両手を胸の前で合わせる。そう、食べ終わってしまったのである。ちなみに、食べ方はあまり美しくはなく、皿にはご飯粒があちこちに残っているぞ。
後輩刑事: ……あ、杏仁豆腐、追加で貰っていいですか?
>む、まだ食うようだ。しかし、これはノーパン刑事の食事を待つのも合わせているのかもしれない。
後輩刑事: 法律は、人が社会を形作るうえでのルールです。誰もが好き勝手やっていたら、社会が成立しませんからね。
NPD: では、法を守っていれば、市民は平和に暮らせるのか?
後輩刑事: それは簡単に答えることはできません。平和、というのが人それぞれで感じ方が違いますからね。法律が示しているのは、理想社会の形ではなく、誰もが平等に感じられるルール、と言うべきですか。
NPD: つまり、そこからはみ出した先にも、幸福か不幸かを分けるラインがある。
後輩刑事: ええ、そうですね。一番わかりやすい例が、警察は基本的に家庭に立ち入らないことです。もちろん、家庭内で取り決められるべき内容は民事法として整理されていますが、例えば、お箸の持ち方は何歳から訓練するべきなのか、食べ物の好き嫌いはどの程度許容されるのか、そういったものは個々の家庭で教育されるものです。しかし、社会的には大したことのないそれらの内容が、子供たちにとっては不幸を生み出すことはありますね。……つーか、個人にとっては、家庭内の平和こそが幸せに繋がるものなのじゃないでしょうか?
NPD: うむ。そうだな。……だが、家庭内ではなく、こう法律の外にも飛び出してくるものがあるな?
後輩刑事: ……異能者の事ですね。確かに、H案件として一応対策は取られていますが、こちらからすると丸投げしているだけで中身は見えてきませんからね。おそらく――
>後輩刑事が言葉を止めた。追加注文した杏仁豆腐が届いたからだ。店員が離れたのを見届けてから、後輩刑事は話を続ける。もちろん、食べながらだ。
後輩刑事: おそらく、毒を以て毒を制す、的なことがなされているんでしょうけれど。
NPD: だろうな。……だから、アイツも必要なのかもしれない。
後輩刑事: アイツ? ……誰ですか?
NPD: ……パンツだ。
後輩刑事: えっ!?
>後輩刑事が思わず大きな声を出した。これまでも同じセリフは口にしていたが、声は抑えられていた。それだけ、この発言に驚いたのだろう。
後輩刑事: ちょっと、それはダメでしょう。だって、アイツは俺たちの標的じゃないですか?
NPD: わかっている。
>ノーパン刑事自身、納得していないのは眉間に寄った皴が示していた。
NPD: しかし、あの幽霊駅員はおそらくパンツがやった。なんとなく、感じる。
後輩刑事: いや、そうだとしても他の罪が消えるわけじゃありませんよ。
NPD: タカ、お前、河川敷で未来から戦車が来た、とかいう話が流れたのを聞いたことがあるか?
後輩刑事: ……はい。緊急通報があったやつですよね? しかし、その証拠は見つからなかった。証言者は複数いたので、何もなかったことはないでしょうが、何もなかったこととして扱うしかなかった。実際、何の被害も出なかったそうですし。
> 厳密には、車が一台壊されていましたけれど、社会に与えるダメージは確かに無視できるほど最小限でした。
NPD: あれにもパンツが絡んでいた。
後輩刑事: え、そうなんですか? どうしてそれを?
NPD: 直接、現場にした巡査たちに聞いた。幻を見たとバカにされるだけだから、取り調べ以降、話題にするのを避けていたようだが、聞きだした。それによると、パンツは未来の戦車にてんで敵わなかったようだが――
後輩刑事: まあ、生身では戦車に敵いませんよね。まして、相手は未来なのに、人はむしろ過去の恰好ですから。
>お、意外に、なかなかうまいことを言いますね。「過去の恰好」だなんて。これ、どこかで使えないか覚えておこうっと。……いや、使う場面なんか存在しないか。
NPD: いずれにせよ、アイツは俺たちの手の届かない所で、平和の為に戦っているようだ。
後輩刑事: でも、法律違反ですよ。
NPD: それは、どうやって決める? 暴行事件としても被害届は観察された規模のわりに少ないらしいな。取り下げられているという話も聞いているぞ。
後輩刑事: ですが、ゼロではありません。それに、迷惑防止の観点からも違反している疑いが濃厚です。
NPD: その疑いってのは誰が最終的に決めるんだ。
後輩刑事: それはもちろん裁判官です。法律文と過去の事例から公平に判断を下す。そういう仕事です。
NPD: 俺は、そこが引っかかる。そいつら、結局、現場が見えていないんじゃないじゃないのか? 法律の外で起きている事は法律では縛れない。俺はそういう気がしてきている。
後輩刑事: ダメですよ、アニキ。俺たちがそんな考えを持っちゃ。
NPD: だから、タカ。お前、裁判官に成れ。
後輩刑事: え? ど、どうしてそういう流れに――
NPD: お前は法律に詳しいし、現場の風ってものもわかっている。最終的に他の裁判官と同じような結論に行き着くことも多いだろうが、それでも現場を知っているのと知っていないのでは、罰を受ける者の感じ方が変わってくる。そうじゃねえか?
後輩刑事: ……わかりませんが、まあ、情状酌量の采配は変わってくるかもしれませんね。
NPD: ほら、やっぱり。お前はこんなところにいるべきじゃねえんだ。裁判官に成れ!
後輩刑事: いや、何ですか、急に。俺は……いや、アニキに付いていくって決めているんですから――
NPD: その俺が「行け」って言ってるんだから、行けよ。
後輩刑事: え、そうなるものなんですか? ……いや、その前に、俺、高卒ですよ。今更、大学の法学部だなんて――
NPD: 無理か? 一度現場を踏んだやつは入れてもらえないのか?
後輩刑事: いや、そういうわけじゃなくて、学力の問題もあるし、そもそも今の年齢から大学へ入り直すなんて……
NPD: お前はまだ若いだろ。なぜ、諦める。
後輩刑事: いや、諦めるとかじゃなくて、バカげているから――
NPD: ほら、やる前から諦めているんじゃねえか。勉強する時間はこれから作っていけばいい。なんなら、報告書は俺が書いてやるぞ。
後輩刑事: え! アニキが? 本当にできます?
NPD: できるかどうか、俺もチャレンジする。だからお前も一度試してみろ。
後輩刑事: そんなこと言われても、気軽にできるものでもありませんし。
NPD: 勉強は俺が教えられないから、あの鑑識の子に見てもらえばいいんじゃないか?
後輩刑事: あ、リョウちゃん? ……リョウちゃんの個人授業か、それはなかなか……。あ、だったら、先輩からも頼んでもらえます?
>おっと、いきなり乗り気になったぞ。というか、そろそろ放送時間が終了しそうですね。大学受験のお話がこんなところで生まれてくるとは予想外でした。続きはまた来週~~。




