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幕間(まくあい)

ナレーター(以降、「>」と表す。): 今週も、枚鴨市(まいがもし)を流れる遊鳥川(ゆうちょうがわ)河川敷(かせんじき)からお送りします。河川敷(かせんじき)と言っても、川は長いので前回とは違う場所――って事はなく、全く同じ場所です。

>事件後は、いわゆる封鎖線(ふうさせん)を引かれて、警察(けいさつ)が色々調べていましたが、物的証拠(しょうこ)は大破した軽自動車だけ。目撃証言が多数あったため、事件そのものは否定(ひてい)されませんでしたが、加害者である「鉄の(いのしし)」は(ちり)となり、鉄の(いのしし)を倒した(さむらい)虚空(こくう)に消えてしまいました。厄介(やっかい)な事に、目撃者の中で何人かはスマホで撮影(さつえい)していたのですが、再生して確かめたところ、鉄の(いのしし)(さむらい)も消えていました。

>物的証拠(しょうこ)は残っていなくとも、というかむしろ残っていないからこそ、この事件は重大な危機(きき)だと認識(にんしき)されました。突然現れた機械に破壊活動(はかいかつどう)をされるとなると、安全な場所は存在しなくなります。治安維持(ちあんいじ)根底(こんてい)()らぎます。

>これは一般市民に知れ(わた)るとパニックを引き起こしかねない情報だったので、直ちに当局は「詳細(しょうさい)がわかるまで他言無用(たごんむよう)」と統制(とうせい)を計りますが、SNSを通じて個人で情報発信できる時代に、秘密が守り通せるわけがありません。すぐにメディアに知られるところとなります。

>が、大手メディアは「証言(しょうげん)以外は壊れた車があるだけ」という状況に躊躇(ためら)いをみせます。わかりやすくいうと「信じられない話だから、報道していいのだろうか」という躊躇(ちゅうちょ)です。そこですっぱ抜いてみせたのが、有名なタブロイド系メディアでした。「未来からの攻撃か!? 平和な日常に幼児が狙われる!!」という見出しで、一応全国規模に情報が流布(るふ)されますが、発信元が信用されていないので「ウソくせ―」「またかよ」という反応がほとんどで、騒動(そうどう)沈静化(ちんせいか)しつつあります。


>こうして、落ち着いた事件現場に今更――あ! ……そ、そういう事ですか。これって、やっぱり次回予告のおじさんにパワハラをした、という件に対しての懲罰(ちょうばつ)的ロケだったんですね。……最勝寺先生が「追加のロケへ行け」って指示を出してくるから、「怪しいなあ」と思っていたんですよ。


>……あぁ、すみません。視聴者の方への説明が未だでしたね。実は、事件現場にある人物が来られていまして……。立っている場所は、軽自動車が壊されていたあたりです。もちろん、壊れた車は撤去(てっきょ)され、そこにあったとバミって――おっと、業界用語でしたね。えーと、そこに車があったと示すロープやテープなども残っていないのですが、なぜかそこ(・・)だと気付いているようですね。……恐ろしいですね。

>近づきたくないのですが……やっぱりダメですか。

>お仕事は、やりたくないなあと思うことでもやり()げるからこそ、お金がもらえるのです。楽な仕事なんてないんです。はい、我慢(がまん)します。


>近づく前に、説明しますと、そこにいるのは三人の大人です。二人は外国人の男女です。男の人は、二角帽、あのナポレオンが被っているので有名な帽子を被っています。……はい、場違いですね。女性は紫ヘアーで、すっごいパンクなファッションです。桜ちゃんの初登場シーンは、ファンキーでキュートな恰好(かっこう)で、分類すると同じ方面ですが、この女性はキュートへの寄りがないガチなパンクです。

>そして、最後の一人は個性的な二人に負けず劣らずの風貌(ふうぼう)です。まず、衣装(いしょう)は白衣。……え? 他の二人に比べたら普通? いえいえ、そんな事はありませんよ。最寄りの駅で観察(かんさつ)を続けたら、どちらの人が多いか納得していただけると思います。もちろん、お住まいの地域による差はありますが、少なくとも一応都内の枚鴨(まいがも)市の駅前でずっと立っていたらパンク系のファッションはちらほら見かけます。

>……え? 白衣の人も見掛ける? きっとそれは薬局薬店で働いている人で、休憩(きゅうけい)時間にふらりとそのままの服装(ふくそう)で歩いているだけでしょ。私服として白衣を着ている人はまずいないでしょう。

>……それでも二角帽子に比べたらまし?……ま、まあ、それは一理ありますね。一応、この男の人が被っている二角帽子はナポレオンの絵のように露骨に大きくないのですが、控えめな二角帽子だとしても、着用している人は演技の世界くらいしか見ませんね。

>ですが、被り物で言えば、白衣の男も負けていません。白衣姿でヘルメットを被っていますから! ……ほら、これならあまり見かけないでしょ? ヘルメットはライダーか作業員のアイテムですからね。科学者にはマッチしない!

>と断言しましたが、粒子加速器の現場ではヘルメット+白衣というのはむしろよくあるスタイルなんですねえ。その格好で自転車に乗って移動するのでライダー条件もクリアです。ですが、このとおり特殊な環境なので、これは「一般的に見かけるかどうか」の議論の対象外ですね。

>ということで、白衣とヘルメットの組み合わせのレア度が低下したように思われているかもしれませんが、白衣の男のヘルメットは普通の代物ではありません。ここを含めるとダントツで()ですから、納得していただけると思います。そのヘルメットは、モヒカンヘアーのように、中央に板が立っていたのです! ね、変でしょ?

>白衣の男の人は、もうお爺さんと呼んで差し支えない年齢なのですが――え? 実は頭蓋骨(とうがいこつ)博士(はかせ)じゃないか、ですか? いえ、それが違うから問題なのです。……でも、考えてみたら頭蓋骨(とうがいこつ)博士(はかせ)も四六時中、白衣姿だな。一応、白衣の下がTシャツのようなラフスタイルが多い頭蓋骨(とうがいこつ)博士(はかせ)に比べて、この男はシャツにスラックスというフォーマル寄りの違いはあります。ただ、シャツは白いワイシャツではなく、青地のチェック柄なので白衣を脱いだらビジネスマンっぽいという感じではありません。

>え? ぐだぐだ外見の説明は要らないからとっとと先に進め、ですか? ……ええ、そうですよ! 私はあの人に近づきたくないのです。恐ろしいんですよ。あのモヒカンヘルメットを被っている人こそ、皆さんご存知の大科学者、大門(だいもん)京一(きょういち)その人です! ……あれ? あんまり衝撃(しょうげき)が返ってこないですね。いや、確かに見かけはちょっと背の低い不機嫌そうな顔をしているだけのお爺さんですが、ヤバいんです!

>……こちらのディレクターも、近づけ、と指示してきますから、仕方なく仕事をしますが、重ねて言いますが、本当にヤバい存在です。視聴者の方々も、あまりのヤバさに引いてしまわないよう、気を引き締めてくださいね。


>大門博士は腕時計にしては大きな、直径ニ十センチくらいの左手首につけたボードを見ています。右手には、手の甲側にワイヤーが何本も伸びた手袋をはめ、それで左手のボードを触っています。掛けているメガネは左目側が黒く、どうやらあそこに何やら情報が表示されるようです。そういった機械類の多くからコードが伸びており、バックパックに繋がっています。どうせその中にも怪しい機械が入っているのでしょう。

>……これ以上は、会話を聞いてみましょう。


大門: 残存反応が見られることから、やはりここで、報告のあったとおり、異界侵略者の活動があったようだな。しかし、そうなると……ここだけポッカリと反応が消えているのが謎、となる。空隙を挟んでの反応はあるが……。


女性: はーい、先生! あたし、一つ考えつきましたぁ。


大門: 何だ?


女性: 二つの侵入者が――


大門: ――ないな。次元断層の検知は一つだけだ。


女性: ……じゃあ、テレポートで――


大門: ――それもないな。こちらの宇宙(ユニバース)での空間転移は確かに次元断層を生じさせない方法もある。しかし、それなら多量の反応が残っているはずだ。


女性: だったら、どうだったらいいんですかぁ。


大門: ……侵入者は空隙を通過する行動をしていたが、その存在ごと消された、というわけだな。言っただろう。次元断層反応は一つのみ。侵入者は入っては来たが、出て行ってはいないのだ。……キャプテン・G、警察の報告はどうだった?


二角帽子の男性: はい。サムライの風体をした者が光の剣で斬ってチリにした、という事でした。


大門: ほほう。それは興味深いな。その者は今どこに?


二角帽子の男性: 光の筒に呑まれて消えた、と。テレポートしたようです。


大門: なるほど。光の筒ならばアニチャレドの技術か……ならば、もう痕跡は残っていないか。しかし、アニチャレドが直接干渉してくるとは考えにくいな。アメリカならまだしも日本での活動は、少なくとも儂に連絡がくるはずだ。はてさて、これは何が起きているのやら……。


二角帽子の男性: いずれにしても、採取するデータがこれ以上ないようなら移動しましょう。銀の暁(シルバードーン)号に守られているとはいえ、こうも視界が広い場所は落ち着きません。


女性: あたしも()きちゃいました。


大門: うむ。だが、まだ情報収集はこれからだ。……黙っておればばれないと思ったか? 観察者(ウォッチャー)


>あ、バレていました? ……いつ頃から?


大門: それはお前が知る必要がない。それで、お前はこの事件について何か知っているのか?


(はた)から見ると、大門博士は独りで話している状態なのですが、お付きの二人はそれをおかしいとは思っていないようです。つまり、大門博士がこういう独語を始めるのはいつものこと――


大門: ――その説明的内容からすると、お前は、あの、儂らの世界を覗き見て放送しているという連中か。


>はい。ご無沙汰しております。それと、いつも情報提供ありがとうございます。博士をゴツゴウ・ユニバースの代表として、御礼を伝えておきます。


大門: 何が情報提供だ。人権無視の盗撮行為ではないか。……まあ、それはどうでもよい。肝心なのは、この事件について、お前たちが知っているかどうかだ。


>えーと、知っています。


大門: 何があった?


>話すとなるとかなり長くなるのですが――


大門: 前にも言っただろう。報告は簡潔に。詳細はこちらから掘り下げる。


>は、はい。……未来から殺戮機械がやって来まして、それをタイムスリップした、かた――(さむらい)が倒しました。


大門: なかなか、支離滅裂(しりめつれつ)な話だな。


>いえ、本当――


大門: ――誰も(うそ)だとは言っていない。では、未来から来たと判断した根拠は?


>その殺戮機械が「ナントカの虐殺の元凶」などと言って、子供を殺そうとしたからです。子供が虐殺の指示をしたとは考えられないので、未来の話ではないか、と考えました。


大門: ふむ。では、その子供とは誰だ?


>答えたくありません。だって、博士は捕まえて調べるつもりでしょう?


大門: ほう。盗撮者風情が、今になって人権について説教か。


>盗撮と、誘拐や人体実験とは比べ物になりません。……それに、盗撮されていると本来なら気づかれないはずなので、本人は不幸になっていないはずです。


大門: 面白いな。犯罪は、発覚して初めて罪となる、というわけか。道徳的には間違っているが、実際上はその通りだな。……では、ひとまず、その子供については放置してやろう。次に、殺戮機械とやらの形状は?


>大きさは大型車くらいで、全体的に丸い卵型をしていました。タイヤではなくて球状の……パーツで移動しているようでした。


大門: やはりジラドリアンか。では、表面に秘数魔術による紋様が描かれておっただろう?


>え? えーと、そこはどうだったかな。詳しくは覚えていませんが、表面がキラキラしていた……自分から輝くというより、光の反射が――


大門: 構造色だろう。昆虫の、玉虫のような(きら)めきだったのではないか?


>そういえば、そんな感じで光っていました。


大門: ジラドリアンの傾向だな。アニチャレドの、サムライだったかな? それについては?


>本人の話によると、いや本人は「月の民」と思っていましたが、おそらく宇宙人に連れられて、江戸時代から現代にタイムスリップしたようです。その時に授かった刀で、未来から来た殺戮機械を倒してしまいました。


大門: その後、テレポートした。


>はい。もしかすると、警察が逮捕しようとしたからかもしれません。


大門: 危機回避機能か。アニチャレドの奴らめ、儂に技術が漏れないように手を打っておったか。ならば、追跡も不能か。……しかし、前回といい、お前たちの事件察知能力は大したものだな。どのようにしているのか、教えてもらえないか?


>それは、直接、私たちの能力ではなく、パン……いえ、回答を拒否します。


大門: そうか。まあ、別に協力関係を築いているわけではないからな。強制はできない。だが、儂はそちらのアクセスを阻害しようとすればできるのは知っているな?


>はい。心得ています。実際、リヴァイアサン周辺のアクセスはできませんので。


大門: その存在を知っているだけで、こちらの世界にいれば抹消候補に入るのだが、観察できるだけで干渉はできない能力ゆえ、こちらから手を出す必要はないだろう。


>しかし、博士のように私と会話できる力を持つ者が他に居れば?


大門: もちろん、可能性はある。科学の優れた所は、異能のように特定の個人にのみ効果が縛られない点だ。使いこなすには知識と技術があるが、越えられない壁ではない。だが、もし儂の科学力に比肩する存在がいたとしたら、その相手にはリヴァイアサンの存在など既に漏れているはずだ。お前に口止めを頼む意味はない。


>な、なるほど。


大門: 情報提供を受けた礼として、一つ教えておこう。お前は「未来からの侵略者」と言ったが、それはない。未来から過去への旅など空想に過ぎない。


>え、でも現に――


大門: ――「子供が虐殺の元凶」だな。それは、おそらく、いや他に考えようがないので確定的に、予測に過ぎない。


>予測ですか? 何十年も先の出来事を?


大門: そう。バカげている。しかし、そのバカげている事を本気に実行するのがジラドリアンという存在だ。秘数魔術による未来予測、数多く発生しうる未来の一つがその虐殺だったのだろう。


>そのジラドリアンとかいう連中ですが、やはり別次元からの侵略者なのでしょうか?


大門: イエスでありノーでもある。別次元と言うより、別宇宙の存在だが、次元断層を作り、そこから我々の宇宙へアクセスしうる技術を持っている。


>ちょ、ちょっと待ってください。次元断層とかを操るなら、別次元の存在という表現でいいのではないでしょうか?


大門: 違う。奴らがアクセスする手段が、こちらの世界の多次元平面への干渉を……と説明しても理解できないだろう?


>はい。


大門: では、黙っておけ。


>……。


大門: ともかく、ジラドリアンがこちらを観察している段階で儂が察知できたので、交渉し、相互に不可侵でいるよう話を付けている。それが反故にされたのは、ジラドリアンの中の過激派の犯行なのか、はたまたそもそも一枚板ではないのかもしれない。思考傾向も政治形態もはたまたその正体すら未だ不明な相手だからな。それでも、一応、今回の事件についてはこちらから抗議を入れておこう。そのための証拠があれば良かったが、明確な物は残っておらぬなら仕方あるまい。向こうで検証できることを期待しよう。


>あのー、あと、アニ……アニなんとか、とかいうのも、もしかして別宇宙の存在ですか?


大門: アニチャレドはいわゆる宇宙人だ。正確には連合体だが、グレイといわれる宇宙人なら聞いたことがあるだろう?


>はい、そう言えば、パンツ……いえ、なんでもありません。


大門: ふん。では、行くぞ。


女性: あれ? もうお話はいいの?


大門: 向こうは未だ聞きたい話はあるだろうが、こちらはもう大体わかった。


二角帽子の男: 了解。ハニー、腕を組むなら博士と組め。


女性: はーい。


大門: よせ。恭一郎(きょういちろう)と同じと思われたくない! 目立つだろう。


女性: アハハ、せんせー、既にそのカッコで目立ってるって……


>……ふう。離れていきましたね。恐ろしい人でした。あの人と話していると、学生時代、怖い教師に説教されているような息苦しさを感じます。もう出会いたくないですね。視聴者の皆さんも、私が解説できなかったら、状況がいまいち見えてこないでしょうから、嬉しくないですよね? ……え? だったら状況説明と同時進行をすればいい、ですか? いやいや、無理でしょ! 怖い先生に説教をされている時点でスマホを触ってSNSで実況しているようなもんですよ。できっこないでしょ!

>しかし、一応、パンツイッチョマンと(かたじけな)(ざむらい)の存在については守れたと思います。まあ、(かたじけな)(ざむらい)の方は、また出てくるかどうかもわからないんですけれどね。パンツイッチョマンが大門博士に「面白い」と思われたら捕まってもおかしくありませんから。あの人は、どうやら別次元――じゃなくて別宇宙……いや、それだけでもなくて宇宙人からの侵略に対して防衛行動をとっているようですけれど、その一方で人権をまるで無視しているようですからね。……確かに、人類どころか地球規模の危機の前に、人権など考慮に値しないのかもしれませんが、それで押し通られるのはやっぱり怖いですよね。


>ふう。もう次回予告について、厳しい発言をするのは控えますね。十分に反省いたしました。

>では、また来週。

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