Chapter5 Episode1 亀人。
どうもお久しぶり、シファニーです。
レナの魔術師、再開です。と言ってもまたどうせ単発投稿してしばらくお預けじゃないの? という方に朗報。なんと、毎週更新、の予定です。
はい、期待せずに待っていていただけると幸いです。
そして、バトルコンテストは最終盤。
各ブロック2名ずつが選出され、ブロック代表が決まる日となった。
「さて、バトルコンテストも佳境を迎え、決勝トーナメントに進出する4人を決めるぞ! その第1試合を戦うのはこのおふたり! まずは、Aブロック代表候補がひとり。人間たちからの刺客か!? 若き天才魔術師、レナだあああああぁぁぁ!」
舞い上がる拍手の嵐と熱狂的な激励たち。
身の丈に余るだけの歓声をその身に受けながら、レナは闘技場へと上がった。
体の前に杖を置き、両手で握ったその姿は、今日まで大勢の大物を負かせてきたとは思えない。けれど、確かな力を秘めていた。
「対するは、もうひとりのAブロック代表候補! 優勝候補と期待を寄せられ、今日まで苦痛など浮かべたことも無い鋼鉄の壁面の持ち主! 亀人族の希望、イアイス!」
レナにも負けぬ歓声の中現れたのは、背中に甲羅を背負った長身の男。
防具などいらないとズボン一丁なイアイスは、前面に押し出された筋肉を見せつけるようにポーズを決めた。それに、会場は一層沸いた。
彼なりのパフォーマンスだろうか。
彼はどちらかと言えば人間に寄った獣人なのだろうか。骨格、顔つきは人に似ている。だが、人間離れした肉体を持っている。それこそ、白熊の獣人アイシードと同等の体格だ。
「よぉよぉ嬢ちゃん順調じゃん? 妖術払うた優秀じゃん? だがなぁ、オラには勝てねぇぜ!」
「おおっと! ここでイアイスの十八番、亀ラップだ! レナ選手に心理的重圧を与えて行くぞ!」
ラップとは何だろう。レナにはよく分からなかった。
代わりに、杖を構えて応えることにした。
それを見て楽し気な笑みを浮かべたイアイスは、腰に携えていた二振りのナタを手に取った。
「両者準備が整ったようだ! それでは、試合開始のゴングを鳴らそう! 3,2,1,スタートォォォッ!」
「こいよ! ヘイユー!」
戦いの開始が告げられるのと同時、両者は睨み合う。だが動くことは無い。
「さて、解説のオクタロウさん、この戦況をどう見ますか?」
「うむ。イアイスは堅い防御からカウンターを得意とする戦士じゃ。どんな攻撃も見切り、防ぎ、反撃することが可能。それゆえに優勝候補の強豪若手近接格闘家と言われておる。その上ナタの扱いにおいては一級品。このエルグミアの中で見ても右に出るもはそういないだろう……じゃが、相手は魔法使い。飛び道具の使い手じゃ。その上物理的干渉ではない。イアイスの防御では、成す術もないじゃろう」
「やはり、そうですよね!」
《火付球術》
レナが振るって杖の先から、いくつもの炎の球が放たれ、イアイスへと向かった。
「うあああああああぁぁぁぁぁ!」
「イアイス選手、自分なりの戦い方を貫いての進出ですが、次回以降は臨機応変な対応を求められますね!」
「うむ!」
「オラの鉄壁、敗れ惨劇……ぐっばい」
火の球を浴びせられたイアイスは、悔しそうにそう呟き、膝から崩れ落ちて地に伏した。
レナが戸惑いに首を傾げる中、レナの勝利が司会によって宣言された。会場は唖然としていた。
呆気なさのあまり動揺が続くレナは言われるがままに舞台を降りた。
その途中で、壇上を見上げる女性と目が合う。
女性はレナを見つけると、興味を持つように目を細め、近づいて声をかけた。
「あら、あなたがレナさん? わたくし、ここからで試合は見えなかったのですけれど、速攻を仕掛ける戦術に変えたのかしら? Bブロック代表候補のひとり、ニベアと申しますわ」
ニベアは蛇人族らしい。下半身が蛇、上半身が人間という獣人にも珍しい姿をしている。また、髪の毛は蛇のようにうねるロングヘアー。人間の外見年齢で言うと30代に差し掛かるほどの大人びた風貌で、妖艶な魅力を演出していた。
「もし戦う機会がありましたら、お手柔らかにお願いいたしますわ。小さな人間のお嬢さん。……それでは、わたくしは出番ですので」
言うだけ言って、ニベアはレナの脇を通って行った。すかさず司会の呼び声がかかって壇上に上がる。
その背を目で追うのもほどほどに、レナは待機室へと向かった。
もし今日、すべての試合が順調に進めばレナの出番はもう1度回ってくることになる。最善の場合は、あと2回。
待機室の扉を開く。一応各ブロックからひとりずつ、この部屋に入るべき人たちがいたはずだ。だが、誰もいない。みんな、もしかしたら今日戦うかもしれない相手と同じ部屋にいたいとは思わないらしい。
レナは、静かに空いている椅子のひとつに座った。服装を整え、杖とダガー、得物の確認を行う。
何も問題が無いと分かり、安堵の息をついたところ、扉の開く音がした。
目を向ける。キオナかケルトでも応援に来てくれたのかと予想して。
けれど、レナの目はふたりの姿を映す代わりに、驚きに見開かれることになる。
「あら、レナさん。おられたんですね。先程ぶりです」
ニベアだった。ちょうど先程、試合が始まったばかりのはずの。
「これで、戦う機会が確約されましたわね?」
ニベアは、中和な笑みを浮かべた。




