Chapter4 Episode19 妖術。
お久しぶりです。
少しずつ再開していきますね。
翌朝。
今日はAブロック第三回戦が行われ、決勝トーナメントに進出する二人を決める日。
当然、レナも朝早くから闘技場を訪れていた。
「お姉ちゃん、もう大丈夫? 無理してない?」
レナの顔を覗き込んで言うキオナに、レナは笑顔で頷いて見せる。
現在会場の準備が進められており、レナは第一試合なので待機所で待っているところ。与えられた個室で椅子に座って順番を待つレナは、キオナに過剰な程に心配されていた。
「本当に? 私のために無理しなくていいんだよ? ……うん、そっか。分かった。それじゃあお姉ちゃん、頑張ってね。私、応援してるから!」
キオナが精いっぱいの激励を送ったすぐ後、待機所の扉が開いた。
「レナの嬢ちゃん、少しいいか?」
「あ、ケルトさん。ノックくらいしてよ。こっちは女の子二人なんだから」
「お、おう、悪かった。次からは気を付ける……」
キオナに注意され、気まずげな表情を浮かべたケルトは後ろ手に扉を閉め、二人の方へと近づいていく。
「もうすぐ試合が始まるが、レナの嬢ちゃん、本当に大丈夫なのか?」
「お姉ちゃんは大丈夫って言ってるよ。体はどこも悪くないみたいだし」
「しかし、昨日の怪我はそれなりのものだったぞ。無理せず、棄権するって手もある」
「だから、お姉ちゃんは大丈夫! 私が止めたってやるって言うし、ケルトさんが何言っても無駄だよ!」
「まあ、それもそうか。精々、今日は無理しないでくれよな」
キオナとの言い合いの末に諦めたらしいケルトに言われ、レナは小さく頷いた。
「それじゃあレナの嬢ちゃん、そろそろ出番だろうし、行ってこい」
「お姉ちゃん、頑張ってね!」
大きく頷いて、レナは舞台へと歩き出した。
「Aブッロク第三回戦、開幕だああァァァ!」
「「「うおおおおおおおぉーっ!」」」
「この試合で、決勝トーナメントに進出する二人が決められる! 決して見逃せない一試合だ! 特に、今回の対戦カードは注目だぞ! まずは大番狂わせの人間少女、レナあああぁぁぁっ!」
「「「うおおおおおおおぉっーー!!!」」」
観客からの呼びかけに応じて舞台に上がるのは、先端を桃色に染める茶髪の少女、レナ。髪の長さが強さと言わんばかりに風になびかせ、幼いながらも凛々しさのある顔つきをして杖を構える様は、これまでの試合ではったりではないということを証明している。
小さな一歩を重ねて舞台に立てば、再度大きな歓声が沸き上がる。
「対するは同じく大番狂わせを起こした異質な新星、弧人ナイアァァァー!」
「「「うおおおおおぉーっ!」」」
レナに送られたものと遜色ない歓声が会場に響き渡り、レナの対面に現れたのは狐の耳と尻尾を持った男。今まで見てきた戦士たちは筋肉質な戦士たちだったが、今回の相手はそうではないらしい。
線の細く、どちらかと言えば華奢な印象を抱かせる体格をしている。
「やあやあお嬢さん、おはようございます。本日は対戦よろしくお願いしますね?」
ナイアは細められた目を怪しくレナに向け、怪しく微笑んだ。
それは優し気にも見えたけど、底の知れない雰囲気を漂わせ、レナは思わず頬を引きつらせる。その視線に自分を見定めるようなものを感じた。
「おやおや、どうしましたか? 初めましての握手をしましょう?」
ナイアはゆっくりとレナに近づき、手を差し出した。
レナはそれを見て少し悩んでから、杖を抱えていた手を放して左手を差し出す。
「おや、すみません」
ナイアは小さく断ってから差し出す手を変え、同じく左手でレナの手を握る。
「それでは、よろしくお願いしますね」
何度か上下に小さく振って、ナイアはレナから離れて行く。
「毎度恒例となった紳士の握手が終われば、さあ試合の始まりだ! 両者位置につき次第、決闘開始の怒号を上げるぞ!」
単調に流れる盛況は、二人が向かい合ったところで一度納まる。そうして訪れた静寂を舞台として、決闘の始まりを待つ。
「それでは両者準備は良いな!? それでは試合、開始いいいいぃぃーっ!」
「「「うおおおおおぉーっ!」」」
歓声と同時、レナは大きく距離を取り、魔法陣を描く。
《火付球術》
炎の塊が一直線に進み、ナイアの目の前にまで迫ったとき、それは散り散りになって消えた。
「おおぉっ! 早速出たぞナイア選手の妖術だぁ!」
妖術? とレナが小首を傾げるのに答えるように、ナイアはその手に扇を持って微笑んだ。
「ナイア選手はこれまでも多くの妖術で相手をかく乱してきた! レナ選手の魔法も妖術の前には無力なのか!?」
会場はその言葉に湧きたつが、レナにしてみればそれどころではない。妖術とは何だ。魔法とは何が違う。そもそも今ナイアは何かしたか? 何かしたようには見えなかった。どちらかと言えば、魔法の方が勝手にナイアを避けたように見えた。
それは、なぜ?
裏がある、とは思う。妖術なんて言ったって、そこには必ず仕組みがある。でも、今はあまりに情報が少なすぎる。少し、動いてみるか。
《火付弾術》
「おおっと!? 前回の試合でアイシード選手を苦しめた極大の火の球だ! これにはナイア選手もひとたまりもないのでは!?」
騒がしい実況の声を聞き流しながら、レナはナイアに目掛けて魔法を放つ。
それを見たナイアの頬が引きつるのを見て、勝負あったかと内心微笑むレナだった。
しかし――
「なんとぉっ!? 再び火の玉は消し去られた! やはりレナ選手の魔法も妖術の前には打つ手がないのかぁ!?」
再び、炎の弾は消え去った。
受験もひと段落と言うことで。
これから先また何があるか分かりませんが、ちょっと息抜きもかねて更新再開です!




