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Chpater3 Episode20 悲劇。

 どうもシファニクス、もといシファニーです。

 先週の投稿、勝手ながらお休みしたことを謝罪させてください。報告もなく一週間が経ってしまいましたことも重ねて謝罪申し上げます。

 楽しみにしていてくれた読者の皆様に、大変ご心配とご迷惑をおかけしたかと思います。改めまして『レナの魔術師』の最新話を更新させていただきます。

「ク、クソッ! こっちに来るな! っ、うあああああーっ!?」


 最終的にイアノシアに残る決断をしたのは、私を含めた数人だけだった。デッドランドからの魔物の襲撃を防ぐのだと考えると心許なさ過ぎるけれど、街に駐屯している騎士もいる。それにイアノシアはそれ自体が強固な要塞だ。そう簡単に落とされたりはしない。


「こ、こんなのどうすればいいんだよ! 逃げっ、っ、ああアア嗚呼ぁーっ!」


 ウランさんもそういう理由があるからこそ、冒険者たちを無理に引き止めたりはしなかったのだろう。

 すでに王都への救援依頼は出したという。そう長くないうちに、王都からの救援も期待できるとのこと。


「お母さん、おかああさああがががぎゃがぎゅあぎゃあああーっ!」


 キールさんたちは結局、ウランさんの話があった翌日にはイアノシアを去った。ニーナさんはギリギリまで申し訳なさそうに私を振り返っていたけれど、私は出来るだけの笑顔で大きく手を振りながら見送った。また会いましょう、とも大きく叫んだ。


「もう駄目だ、何もかもおしまいだ、このまま、皆――」


 今回の件は覚悟や根性と言った感情論で片付けるべきものではない。イアノシアから去ることを悪いことと言う人は誰もいないだろう。私もそれを逃げだとかは思わない。


 だから私は一人残った。この街を去って行く人々の背を見ながらもそうしたのは、そうすることが正しいと心のどこかで強く信じたからだった。そしてまた、私の力ならばこの街を救えるのではないかと淡い期待をしていたからだ。

 だから、それは間違いだったのだろう。


「た、助けてくれ、ペル――」


 目の前まで伸ばされたその手には、もう意思は宿っていなかった。力なく垂れ下がり、血に塗れたまま地面に落ちたその腕は、すぐに異形によって食い荒らされた。


 全身の震えは治まることを知らない。体中が寒くて、しかし内側から燃え上がるように熱くって。見ているものが現実と受け入れるだけの理性も、これからどうするべきかと考える思考力も尽きかけていた。いや、もしかしたらとっくに尽きていたのかもしれない。

 尻餅をつき、立ち上がれなくなった膝に力を入れようと両手で抑えても、両肩にまで響いて来る震えを感じて絶望が増すだけだった。剣を握るだけの力も立ち向かうだけの覚悟もとうの昔に消え失せていたのだ。


 また一滴、また一滴と鮮血が頬を汚す。すぐそばで惨殺されて行く仲間たちを唖然と見守る事しか出来ない私のことを、しかし誰一人として責めることは無かった。無力に去って行く戦士たちの末路を、情けないと罵る者はいなかった。

 だって当然だろう。これはあまりに一方的過ぎる虐殺で、圧倒的過ぎる巨悪だったのだから。


「うっ、あっ……ァッ」


 また一人、私のすぐそこで屍となった。これでこの場に残るのは私だけ。

 ギルドを出る前はあれだけ頼もしかった仲間の誰一人として、既にここには残っていなかった。ウランさんでさえ真っ先に殺された。

 私は、どうしてこんなことになったのかと、そんな解のない問いを頭の中で巡らせることしか出来なかった。


 ああ、私はどこから間違ったんだろう。


 キールさんたちを見送った後、私はギルドへと向かった。

 これから侵略してくるであろう魔物に対して対策を練るためである。しかし、集まってすぐに街中に警報が鳴り響いた。


『緊急、緊急! デッドランドより魔物の大群が進行中! 繰り返す、魔物の大群が進行中! 現在斥候部隊を派遣した。至急、戦えるものは北門へ集合されたし!』


 ギルドの中が騒めいた。その進行があまりに早く、また、いきなりであったから。 


「皆さん、あまり準備も出来ていない状況ではありますが、各々出来る限りの戦闘態勢を整え北門へと向かってください。現場での指揮は私が執るようにします。くれぐれも、勝手な行動は避けるように」

「「「はい!」」」


 携帯するべき装備が剣一本だけだった私は、ウランさんと共に真っ先に北門へと向かった。


「ペルナさん、今回が本当に最後になります。いいですか、この戦いは今までの物とは違います。ペルナさんは期待の新人ではあります。けれど――」

「死ぬかもしれない、ですよね。分かっていますよ。それでも私は戦いたいと思った。あまり、私の覚悟を侮らないで欲しいですね」

「……そうですか。ならば止めません。ただ、逃げ出したとして誰も責めたいということだけ、もう一度言わせてください」

「はい。そう言って貰えるのなら気軽でいいです」


 この時はまだ、逃げることすらままならない程の戦況なんて、一片たりとも想像できていなかった。


「な、なんだあの魔物は!」


 全冒険者が北門に集結し、しばらくして斥候部隊が返って来た時。その顔色が青ざめており、また、全身を震わせて恐怖していた時点で私たちは逃げるべきだったのかもしれない。

 斥候部隊が強く撤退を進言する中、それでも敵をこの目で確かめるまでは逃げられないと言った騎士団の後に続いてデッドランド方面へと向かった私たちを待っていたのは、全身を腐らせた例の魔物だった。


 その外観の恐ろしさは話に聞いていた通りだったが、恐らく驚きの声を上げた冒険者が言いたかったのはそこではないのだろう。その言葉を修飾するのなら。


 な、なんだあの魔物の量は!


 になる。

 それは視界全てを覆いつくくすんだ黒や緑、青に紅。

 死体の山、いや、海とも表現できる魔物たちを前にして私たちはその時、本当の意味でデッドランドの恐ろしさを思い知らされた。


 それからのことは、壮大な出来事に反して特筆するべき点があまりに少なすぎる。それは、その悲劇があまりに一瞬で、あまりに簡潔だったから。


 まず最初に魔物たちの進軍の遅さを見て騎士団が魔物たちの側面目掛けて突撃した。その後ろに続いて私たちも進み、向かって来る魔物たちを追い払う。

 騎士団は次々と魔物を薙ぎ倒し、側面から畳み掛けた。進軍の遅い魔物たちを相手にする上で囲まれることを避けるために有効な戦法だったのだろう。実際、ある程度は上手くいっていた。ただそれは、不死性によって覆される。


 騎士団の進軍は最初は勢いがあり、スムーズだった。けれど時間が経つにつれて勢いは失われ、進軍はどんどんと遅くなる。それは中心部に向かうにつれて魔物の数が多くなったから、とでも騎士団は考えていたに違いない。

 けれど、違った。


 私たちも違和感を覚えていたし、忠告だって何度もした。けれど騎士団は聞く耳を持たなかった。

 魔物たちは確かに、不死身だったというのに。


 地面に倒れていた魔物たちが一斉に立ち上がった。それはまるで、その時を待っていたかのように。自ら穴に飛び込んだ騎士団たちを嘲笑うような刹那の出来事だった。

 騎士団は、悲痛な悲鳴を一秒と長引かせることなく全滅した。


「皆さん、撤退してください!」


 そう叫んだウランさんの言葉を聞くよりかは早く、私たちは駆け出していた。こんな状況においては勇気も決意も覚悟も無いに等しかった。

 振り返って見えたウランさんの魔法の瞬きは長く続かなかった。


 そして思い知らされる、魔物の恐怖を。

 ゆったりとした侵略は、私たちを引き寄せるための戦法だった。一気に加速した魔物たちに私たちはすぐに追いつかれた。先ず一人が足を食い千切られて囲われた。食い荒らされる悲痛な叫びを聞きながらも私たちは走り続けた。

 肩口から噛みつかれ、奪われた投擲物で頭を砕かれ、背中を切り裂かれ、どんどんと倒れて行った。


 逃げることの無謀さを知った私たちは武器を抜いた。それが無意味だと信じることだけは出来なかった。


 次々と折れる剣、灰になる決意、積まれて行く亡骸。


 やがて、私は足を滑らせて尻餅をついた。甲高い金属音が響き、絶叫が響き、雄叫びが響く。飛び散る悲鳴と肉片、鮮血、命。蹂躙されて行く感覚に怯えるのは、これが初めてではなかったはずだ。


 半年前、ゴブリンを前にして動けなかった私はもういないんだって、私は強くなったんだって、どこか嬉しくて、誇らしかった。たくさんの人に認められて、たくさんの人を守る度、ああ、私はこのために生まれて来たんだって思えた。


 きっと涙が流れている、鼻水だって出ているかもしれない。血や涎だけじゃない。全身から逃げ出したいと溢れ出した衝動は、私を置き去りにして消えていく。


 雨が降り出した。まるで戦場に溢れ返った濁流を洗い流さんとするように。

 そして陽光は遮られた。希望はないと囁くように、ゆっくりと。

 先の件がありましたので改めて明言させていただきます。

 『レナの魔術師』は毎週日曜日に最新話を更新しております。更新をお休み、延期する場合にはX(旧Twitter)や『小説家になろう』様の活動報告にてお知らせします。

 今後また更新ペース、曜日に変更があった場合も最新話の前書きもしくは後書き、及びX(旧Twitter)や『小説家になろう』様の活動報告にてお知らせします。もしよろしければX(旧Twitter)のフォローをしていただけるとすぐにお知らせをお届け出来るかと思います。


 以上、改めて『レナの魔術師』の更新についての諸々でした。


 X(旧Twitter)→https://twitter.com/sihulani0816

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