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Chpater2 Episode5 試験。

 水晶玉が強く光り輝いた。


「こ、これは!? 眩しっ!?」

『な、何事ですか!?』


 水晶玉の近くにいたネクアとレナは思わず目を覆い、レナたちの様子を伺っていた冒険者たちも何事だと慌てた様子で声を上げる。


「手を、手を放してください!」

『わ、分かりました!』


 ネクアの指示に従ってレナが水晶玉から手をはなすと、光は自然と収まった。レナは困惑の表情を浮かべていたが、すぐに冷静を取り戻したネクアによって説明が行われた。


「こ、この水晶玉は使用者の魔力に反応して光を放つ性質を持つ、クリア鉱石と言う魔石を使用しています。光の程度によって使用者の魔力を測定するのですが、レナさん、あなたは文句なしの合格です。こんなにも強い光を出せる人は、そうそういません」

『それは良かった……これで、一つ目の試験は合格、ですかね?』

「はい。二次試験の会場にご案内させていただきますね」

『お願いします』


 カウンターから出てきたネクアの背についてレナはギルドの奥の方へと移動する。廊下を通って辿り着いた扉の前には、講義室と書かれた掛札が掛けられていた。


「こちらです。すぐに試験官を呼んできますので、中で待っていてください」

『分かりました』


 ネクアが一つ頭を下げたのを見送ってから、レナは部屋の中へと入る。その部屋はかなり広く、また入って右手側の壁には大きな黒板が設置されていた。その反対側は奥に行くほど段が上がって行き、その一段一段に机といすが設置されている。

 レナはそんな一番前の席について静かに目を伏せ、試験官を待つことにした。


 レナが静かに待つこと約五分。講義室の扉がノックされたのちに開かれた。

 そこから現れたのは眼鏡をかけた四十代半ばのように見える男性。黒髪を短く切りそろえ、脇に分厚い教本のようなものを抱えていた。


「どうもこんにちは。今回試験官を務めさせてもらうウランだ。よろしく」


 ウランと名乗った男は黒板の前に置かれた教卓の前に立つ。


『はい、よろしくお願いします』

「よし、それではさっそく筆記試験を行う。出題するのは主に魔法の基礎知識、また正しい運用方法についてだ。よろしいかな?」

『問題ありません』

「それでは解答用紙と問題用紙を配らせていただこう。以後私語厳禁、使用する道具もこちらで用意させてもらったこの筆記用具のみとさせてもらう。不正行為のないように」


 ウランはそう言った後でレナの前に二枚の紙と一本のペンを置いた。


「それでは試験を開始する。制限時間は一時間。始め」


 レナはウランの合図と同時にペンを持ち、書き始める。


 問題は視線を動かすだけで確認し、手を止めることなく記入を続ける。そのあまりの速さにウランは目を見開くが、レナはそれを気にせず書き進める。すぐに最後の問題に辿り着き、記入を終える。その後、しっかり五分かけて見直しを行い、一度も直すことなく小さく頷くと、顔を上げて右手を高く上にあげた。


『試験官殿、終了いたしました』

「……そ、そうか。それでは採点を開始する」


 試験開始から、わずか十五分の出来事であった。それからウランがレナの回答した用紙に目を通し、驚きに目を見開く。


「ぜ、全問正解……ど、どこでこれだけの知識を蓄えたのだ?」


 驚愕の表情を浮かべるウランは、思わずと言った様子でレナにそう問う。聞かれたレナは何でもない風に答える。


『ほとんど独学ですよ? うちにあった魔導書をたくさん読んだだけです』

「ま、まさか……その年でこれだけの量の知識を、独学で?」

『ああ、一応魔術学校にも通っていました。スラナ村の学校です』

「スラナ村? まさか、あの天才魔術師村の住民だというのか? ……」

『え、何ですかその異名』


 今まで何でもない表情をしていたレナが、ウラン以上に驚いて見せたことでウランは落ち着きを取り戻したのだろう。ずれた眼鏡を元に戻して表情を改める。


「いや、すまなかった。取り乱してしまった。文句なしの合格だ。正直、一次試験の成績と合わせて考慮してもすでに三次試験の必要性はないように思うが、規定なので受けてもらう。付いてきてもらおう」

『分かりました』


 続いてレナはウランの背についてギルドの外へと向かった。そこはどうやら訓練場のような物らしく、スラナ村の魔術学校にもあった的のようなものが用意されており、その隣にローブを羽織り、とんがり帽子をかぶった魔法使い風の老人が立っていた。

 白髪を長く伸ばし、長い顎髭を持ったその男は、しかし鋭い視線をレナへと向けている。


 その男の前までウランが案内し、男に手のひらを向けながら言う。


「この方は元B級冒険者のルガルドフ教官だ。ここらでは有名な魔術師で、今回の試験官をしてもらう」

「よろしく」

『よろしくお願いします』


 ウランの紹介を受けて厳格に言ったルガルドフに、レナは礼儀良く頭を下げ、スカートの裾を上げてお辞儀じぎする。その一連の動作に感心するようにルガルドフが声を漏らす。


「ほう、礼儀がなっとる嬢ちゃんじゃな。貴族か何か、と言った所かな?」

『いえ、残念ながら。私は平民ですよ』

「なんと、これは失礼。言葉使いと言い、洗礼されたものを感じたのでな。さて、早速じゃが試験を始めるとするかの。用意はいいかい?」

『はい、大丈夫です』


 ルガルドフの言葉を受けて、レナは背負っていた杖を取り出す。レナの取り出した杖を見て、ウランとルガルドフが目を見開く。


「こ、この杖は……」

「魔核を使った逸品いっぴんだな。荒はあるが性能は申し分ない。さぞ腕のいい者が作ったのであろう。レナ、だったかの。その杖をどこで?」


 ルガルドフが興味深そうに問うと、レナはどこか誇らしげな表情を浮かべながら言う。


『この杖は、母からのプレゼントです。魔術学校を卒業した際に貰いました』

「なるほどのぉ、いいお母さんだ。では、試験を始めるとするかの」

『はい』


 ルガルドフの言葉に従って、レナは的の前で杖を構えた。


「ではまず、使える魔法の中で最も確実性のある魔法を見せてもらおうか。基礎魔法、初級魔法、中級魔法。どれでも良いから使ってみなさい」

『分かりました。それでは、行きます』


 レナは大きく深呼吸をして呼吸を整える。杖を的に目掛けて正面に構え、ゆっくりと魔力を高めていき、唱える。


『《火付弾術かふだんじゅつ》ッ!』

「ほう」

「なんとっ!?」


 レナの放った火の球は、立てられていた的を貫いて壁にぶつかりはじけ飛ぶ。

 それを見たルガルドフは興味深そうに声を漏らし、ウランも驚きに目を見開く。ルガルドフは自分の顎髭を撫でる。


「《火付弾術かふだんじゅつ。火属性の初級魔法、か。なるほど、素晴らしい。その精度で初級魔法を使えるのなら、申し分ないだろう。合格だ」

『あ、ありがとうございます!』

「いや、こちらこそありがとう。良いものを見させてもらった」

『え?』

「こちらの話だ」


 ルガルドフの言葉にレナは小首を傾げるが、ルガルドフはそう言ってはぐらかす。先程から驚きっぱなしだったウランも何とか気を持ち直し、背筋を正して高らかに言う。


「これにて、レナ・クライヤの合格試験を終了とする。結果は、合格!」

『ありがとうございます!』


 ウランのその宣言に、レナは心からの喜びを口にする。


「それではこれから冒険者である証、冒険者カードの発行手続きを行います。レナさんはギルド内にて待っているように」

『分かりました。それでは、また後程』


 ウランの言葉を聞いたレナは、深々と頭を下げてからその場を立ち去る。それを見届けて、ウランも仕事のためにその場を去ろうとしたところでウランはルガルドフに止められた。


「待てウラン。おぬし、あのお嬢ちゃんをどう思う?」

「レナさんについてですか? 若くして豊富な知識と類稀ない技術を持つ、逸材だと思います」

「いや、そういうことを言っているのではないのだ。どこか、我らもよく知る人物に似ている、と言うより、そっくりだとは思わないか?」

「……やはり、そう言うことなんでしょうか。クライヤ、と言う家名には気付いていましたが」

「ああ、間違いないな」


 ウランの反応を見て、ルガルドフは自身の考えが正しいと確信を抱いたのだろう。迷いのない声音で言う。


「あのお嬢ちゃんは、レイナ・クライヤの娘だ」

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