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Chpater1 Episode11 仲間。

「まあ、なんとなく事情は分かった。よし、こいつらは俺が引き取ろう。ふたりとも怪我はなさそうだし、良かった。嬢ちゃんの方は、なんかギルドから連絡が行くかもしれない。名前と、今泊まっているところを教えてくれるか?」


 レナの前に現れた男は、レナと女性から状況を聞いて、そう言った。


 女性を襲った三人はその男によって縄で縛られており、身動きの取れない状態となっている。そんな三人を尻目に、レナと男は向かい合って話をし、そのかたわらで女性が見守っていた。


 しかし、突然泊まっている場所を教えてくれ、などと言われたレナはいぶしし気な視線を向けた。


「おっと、すまない。まずは俺から名乗るべきだな」


 男はレナの顔を見て察したのか、そう言って自己紹介を始めた。


「俺はC級冒険者のリルスと言うものだ。まあ、この街には偶然立ち寄っただけでな。それでもギルドマスターには顔が利くし、ギルドには他にも知り合いがいるからそいつらに任せればいいだろう。任せてくれるか?」


 リルスと名乗った男は言うと、胸元から名刺のような大きなのカードを取り出した。それを見て、レナは小さく頷いた。


『冒険者と言うなら、信用できますね。私はそこの三人に興味はありませんし、お願いします。お姉さんもそれでいいですよね?』

「は、はい、大丈夫です。その、よろしくお願いします」


 女性は男たちの方をチラチラと見ながらそう言った。どこか居心地が悪そうなのを察してか、レナは女性に声をかける。


『あの、先に行っていいですよ? あとは、私とこの人でどうにかしますので』

「え? あっ、そ、そうですか? あ、ありがとうございました!」


 深々と頭を下げた後で、女性は小走りで去って行った。それを見送った後で、レナは再び口を開く。


『それじゃあ、お任せしますね。名前と、泊っている場所、でしたっけ』

「ああ、教えておいてくれると助かる」

『名前はレナ・クライヤ。今泊まっているのはドーナと言う人が経営する宿屋ですね。ギルドの前の広場にある宿です』

「クライヤ……そうか、了解した。ありがとな。あとは任せておけ」


 男は言うと、縛られた男たちのそばに寄って行った。縄を掴み、引っ張っていく。後ろ手に手を振ったのを見て、レナは小さくお辞儀じぎした。


 その後は順調に宿屋に戻り、約束通り二時間程度で帰ってくることが出来た。レナが宿屋に入って食堂に向かうと、すでにまばらだが客がいた。ここは昼食も出しているようだ。


「あ、レナさん! 帰って来たばかりのところ悪いですけど、手伝ってください! 手は洗ってくださいね!」

『はーい!』


 厨房ちゅうぼうの方から顔を覗かせたペルナの声を聴いて魔法で手を洗った後、レナはペルナから料理を受け取る。


「はい、これをあの席のお客様のところに届けてください」

『分かりました。他の方の注文も伺ってきますね』

「うん、お願い」


 レナは料理を持って客のところに届け、別の客から注文を取った。


『はい、かしこまりました。少々お待ちください』

「ああ、よろしく……あ、そうだ、少しいいかな?」

『はい、何でしょうか』

 

 注文を言い終わった客が、厨房の方へと向かおうとしていたレナを呼び止めた。


「君、魔法使いだよね? さっき、生活魔法、使ってた」

『そうですけど……どうかしましたか?』

「俺、冒険者やってるんだけど、ちょっとだけ手伝ってもらえないかな? もちろん、報酬は渡す。実はとある依頼を受けたんだけど、うちには補助要員がいなくてね。手を貸してほしいんだ」

『そうは言われましても、私、冒険者じゃありませんよ?』


 男の提案に、レナは戸惑いながらそう答える。


「いや、一回でいいんだ。ほんのちょっと、手を貸してほしい。もちろん、君に戦ってほしいってわけじゃない。実はダンジョン探索の依頼を受けて、俺と仲間たちじゃあ明かりも焚けないし水も出せないで少し難しいんだ。ダメだろうか?」

『……本当にいいんですか? 私、九歳ですよ?』

「いや、実は君の噂を聞いてさ。生活魔法を使いこなすってことじゃないか。その魔法でちょっと手伝ってくれるだけでいい。な、頼むよ」


 両手を合わせて頼み込む男性を、レナはよく観察してみる。

 年齢で言えば二十歳前後。とても質が良いとは言えない服と鎧に身を包み、安物の剣を腰に差している。体つきからも、決して優秀そうには見えない。しかし、逆に言えばその程度の人が受けるクエストなら自分でも最低限の戦力になれるかもしれない、と考えたレナ。

 小さく、頷いた。


『詳しい話はあとでお伺いします。今は、仕事をさせてください』

「いいのかい!?」

『まだ了承はしてません』

「それだけでも十分だ! 前向きに考えておいてくれよ!」

『はい……それでは、少々お待ちください』


 そうしてレナは仕事に戻り、一通りの接客を終えたら客の食べた食器の後片付けをし終えた。そんなところに、ペルナが声をかけてくる。


「レナ、さっきお客さんと何か話してたけど、どうかしたの?」

『あ、ペルナさん。実は、依頼を手伝ってくれないかと頼まれてしまいまして……どうやら私が魔法を使えるとどこかで聞いたみたいですね』

「ああ……噂って、広がるの早いよね。魔法使いってそれだけで珍しいし、新人でも魔法使いだと優遇されるって、お客さんから聞いたことあるよ」

『そうなんですか? やっぱり、私の感覚とは違うんですかね? 魔法使いはそんなに珍しいものだと思えないのですが』


 疑問符ぎもんふを浮かべるレナに、ペルナもペルナで疑問を浮かべる。


「レナの出身って、どこだっけ?」

『スラナ村です』

「あー……スラナ村。たぶん、あそこがおかしいだけで魔法使いって結構珍しいよ。子どもが百人いて、一人なれるかどうかって話だしね」

『そうなんですか!?』


 ペルナが言うと、レナは珍しく本気で驚いて見せた。その動揺は大きく、ペルナが逆に驚いてしまったほどだ。


『そ、それは……噂にもなりますね』

「ね、そうでしょ? まあ、でも、いいんじゃない? レナの目標は冒険者みたいだし」

『で、でも受けてしまったらお手伝いが……』

「まだお客さんは少ないし、一日くらいなら大丈夫だよ。明日一日お休みとって、ついて行ってみたらいいんじゃない?」

『ヘランさんは、何と言うでしょうか』

「たぶん大丈夫って言うよ。ほら、早く行って、ついて行きますって伝えてきな。私はレナの夢、応援したいから」


 ペルナはレナの手を取ってそう言うと、ニコリと微笑んだ。


『はい、ありがとうとざいます!』


 そのあとレナは男と待ち合わせの約束をし、翌朝。レナは部屋の掃除だけして回った後、ペグアの南門へと向かった。

 そこには先日の男と、あと二人がいた。


「ああ、来てくれたか。それじゃあまずは自己紹介から始めるか」

『おはようございます。そうですね、よろしくお願いします。私はレナ・クライヤです』


 男が言うと、レナはそう自分から名乗りを上げる。


「よろしくな、レナ。じゃあ、次は俺。俺の名前はキール、って言う」

「私はニーナ、よろしくね」

「俺はブラインだ。このパーティーでタンク役をやらせてもらっている」


 先日の男がキールと名乗り、シーフ風の女性がニーナ、重装甲に身を包むブラインの三人でパーティーを組んでいるらしい。

 キールとニーナが同年代、ブラインが少し年上と言った感じだろうか。


「よし、それじゃあ出発しようか」


 キールのその言葉合図に、目的のダンジョンへと移動を開始した。

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