表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/105

Chapter5 Episode4 蜥蜴。

 どうもシファニーです。

 この前別作品のお話を投稿していたことに今気づきました。直したましたが気付いた方教えてくれたら嬉しかったな……って。あ、なんでもないです。

「レナお姉ちゃん!」


 キオナは思わず闘技場の観客席から声を上げた。

 そして身を乗り出しそうになるのを、隣のケルトが手を出して止めた。


 キオナは苦しそうな表情をケルトに向ける。

 ケルトは首を横に、静かに振るだけ。


 それを見て、キオナは心配そうに舞台を見下ろす。

 きゅっ、と締まる胸元に、力む拳を握るだけ。


「お姉ちゃん……」


 小さく呟かれたその声は、静かに宙へ消えて行った。



 レナは、両手に走る苦痛を堪えようと唇を噛んでいた。


「ふふっ、驚いた顔をしているわね? やっぱり私たち蜥蜴人族を見るのは初めて? 元々数は少ないから分からなくもないけれど、対戦相手の情報は集めておくべきよ? ね? お嬢さん?」


 白い足で舞台を踏みしめるニベアは妖艶に笑う。その手に鞭を持ち、勝ちを確信したような表情を浮かべた。


「どうする? 降参したいのならしてもいいのよ?」


 誰が。

 そう、レナは心の中で口にする。


 キオナと約束した。必ず勝って、砂宮都市エルグシアに連れて行くと。

 それ以前に、レナは負けず嫌いなのだ。

 一度決めたことを簡単に曲げたくなんてない。そんな気質だからこそ、ここまで生き残って来た。強くなってきた。

 

 それを証明するように、レナは立ち上がる。

 そして闘志を顔に浮かべ、ニベアを鋭く睨み上げた。


「そう。まだ戦う気なのね? なら、私も容赦はしないわよ?」


 ニベアはそう言って構えを取るが、レナは杖を握る事すらままならない。ダガーだって当然使えず、先程受けた攻撃のせいで舞台の外へと飛んで行ってしまった。

 出来るのは杖を浮遊させておくことくらい。でも、レナ自身は攻撃が出来ないため挟み撃ちのような戦法は取れない。魔力を消費し続けてそれじゃあ、じり貧だ。


 ならどうする? この状況を打開して、勝つためには何が必要だ?


 ある。勝つために必要な手段が、揃っている。必要な武器ならある。

 けれど、いいのだろうか。こんなことのために力を使って。これはもっと、みんなのために使うべき力であって、ただ勝ちたいなんて欲のために使っていいものなのだろうか。


 いや、迷っている暇はない。負けられない戦いをしている。なら、全力を出すべきだ。


 レナは覚悟の籠った視線を浮かべる。

 それは、思わずニベアが気圧されるような迫力を纏っていた。


(っ。な、なによ、この迫力は。もう戦う力なんて、ほとんど残っていないはずでしょう? 高を括って準備を怠った。それこそが彼女の敗因、そのはずでしょう? それなのに、どうして……)


 ニベアは困惑した。

 勝利を確信していたはずの自分の体が、わずかに震えていたから。それを武者震いだと言い聞かせ、鞭を強く握り直す。


 だが、そうして籠め直した力すら嘲笑うような魔力の塊が、目の前に現れた。


(あれは……剣? それも、ただの剣じゃない。とんでもない魔力の塊。力の権化とも言えるような……ど、どうして人間の彼女が、あんな代物を持っているのよ!?)


 今まで一度も見せてこなかった。


 ニベアは用意周到な女性だった。ナイアと同じか、それ以上に。

 むしろ、ニベアはナイアを内心小馬鹿にしていた。準備を怠り、穴を突かれたことで敗退し、あげくにフェルティア様直々に手を下された、愚かな小物。

 だから、自分は勝てるはずだと思っていた。魔法を封じるのではなく、使われたうえで勝つ。相手がどれだけ全力を出しても勝てないように、圧倒的な力でねじ伏せる。

 本当は決勝で使いたかった鞭を使ったのも、肩慣らしのつもりだった。レナが控室に行き、情報を集められない状態なのを確認したうえで使った。だからこそレナは対処できず、一方的に追い詰めることが出来た。

 レナのとっさの機転で蜥蜴人族の十八番、しっぽ切りを使わされたが、それも想定内。決勝の相手はレナのような小手先の手を使っても仕方がない力任せの相手だ。このバトルコンテストで最も厄介そうな相手はレナだ。ここで隠し玉はすべて使い切るつもりでいた。


 その上で、レナは上回ろうとしていた。ニベアの知らない手段を使おうとしていた。


 杖の浮遊、ダガーの近接攻撃、とっさの対応力。彼女に備わった力は、すべて見たと思い込んでいたと言うのか? ここまでの戦いの中で、彼女はまだ全力を出していなかったのか?


(い、いえ。まだ焦る必要はないわ。彼女はどうせ腕が使えない状態。浮遊させるにしたって距離を取り続ければいいだけ。その間に、無防備な彼女を攻撃すれば私の価値よ……落ち着いて、落ち着くのよ、私)


 深く呼吸をして心を落ち着ける。焦る鼓動が少しずつ静まっていく中で、改めてレナの剣を見る。


 白い剣だった。金色の装飾が施された、華やかな剣。武器と言うよりは装飾品に見えるような外観だが、込められた魔力は一級品。獣人が持つ武器と比べても圧倒的な力を秘めているように見える。


 そんなものを今の今まで隠し持っていたのは見事なことだ。けれど、だからと言って負ける理由にはならない。


 ニベアは、戦う覚悟を決めた。

 このお話しで第100話を迎えたらしいですよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ