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異世界留学生  作者: 曇天
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異世界留学

(なんてことだ......

 当たりだと思っていた親ガチャがはずれだったとは......)


 周りの生徒たちは楽しそうに話をしているのを見ながら、オレはそう思ってため息をついた。

 

「おい、ユーヤ飯行こーぜ」


「今日のおすすめジャイアントトードのコロッケらしいよ」


 そう声をかけてきたのは、顔が爬虫類のような《リザードマン》のザインと小学生ぐらい身長の《ホビット》のリビィだった。

 この二人はオレの寮のルームメイトでクラスメートだった。

 

 そうここはオレの住んでた世界とは異なる異世界だった。


「ジャイアントトード......カエルか」


「おいおい、なんだその顔。

 お前はこっちの文化を知るためにきたんだろーが。

 何事もチャレンジだぜ」


 ニヤニヤしながらザインは言った。


「ジャイアントトードは美味しいんだよ。

 食べてみればわかるから」


 そううなづきながらリビィはいう。


「わかったよ。

 食えばいいんだろ。

 食えば......」


 そういってオレは重い足取りで食堂へと向かう。


 オレは神目こうめ 悠哉ゆうや15才。

 この異世界の国ディステラの学園に留学生として通っている。

 何故かと言うと、それは一ヶ月前のある日のこと。


「はあ!? 

 オレが何で異世界に行かないきゃいけないんだよ!」


「異世界とのゲートが現れて繋がっただろ。

 むこうさんとの交流が不可欠となったんだが......

 まあ、あまりうまくはいってない。

 そこで文化交流の一貫として留学生を送ることになった。

 だから行ってこい」


「だから! 何でオレなのかって聞いてんだ!」


「さすがに、モンスターのいる危険な所に一般人を向かわせるわけにはいかないだろ。

 そこでだ、外務官僚である俺の息子である君が友好親善大使として選ばれました!

 ハンパカパーン!」


 親父はにこやかに肩をバンバンたたいてくる。


「ふざけんな! 

 かってに決めんなよ!

 オレはだらだらとした高校生活を夢見てんだぞ!」


「しょうがないんだ悠哉。

 今官僚が世間から叩かれてるのは知っているだろう」


「そりゃ、特殊法人やら企業への天下りやら、中抜きの使途不明金なんやら特権つかうから当然だろ!」


「まあ、その仕事のおかげで、お前は食ってこれたんだけどな。

 で、モンスターのいるような異世界行きの人選を身内からださないと、さすがに国民からの反発が強くなるのは予想できるだろ」


「で、何でそれがオレなんだよ!」


「まあぶっちゃけお前勉強できないし何もないから、人生ここらで何かテコ入れしとかないとヤバイからだよ。

 お前異世界に留学したなんてこれからの将来にめちゃくちゃ有利なんだぞ。

 良かったな親ガチャに当たって、普通いきたくてもいけんのだからな」


 親父は勝手なことをほざいて笑った。

 だが確かにとも思う自分が悲しかった。

 

「だいたいお前はなんの目的も夢もないだろ。

 そんなんじゃ人生は楽しめない。

 このままじゃ死んだ母さんに申し訳ない。

 ちょっと外にでて、やりたいことをみつけてこい。

 異世界なら退屈はしないだろ」


「くっ!」


 母親を出されるとつらい。

  

 結局押しきられ異世界留学が決定した。

 そしてオレは異世界のこの《ザハーストラ英雄学園》にくることになったのだ。


(とりあえず、一年間だけ我慢するか......)


「ほら、ユーヤここあいてるぜ」


 そうザインにいわれて食堂の奥のテーブルの席に着く。


「あーあ、次の授業魔法実技だ。

 僕苦手なんだよね」


 そうイスに頑張って座ったリビィが憂うつそうに言った。


「俺もだがな。

 そういやユーヤお前は? 

 今まで見学だったけど参加するんだよな。

 確かお前の世界も魔法あるんじゃなかったっけ?」

 

「概念的にはあるがオカルトとかスピリチュアルの扱いだよ。

 当然オレは使えないから今まで見てたけど、今日は参加しろってさ」


「でも、僕たちと話せてるよね」


「この世界にくる前に魔法を使われて会話できるようにされたんだよ。

 どうもオレの知ってる言葉なんかに変換されてるみたいだな」


 この世界では言語が各種族ごと異なるため、魔法で会話できるようにしているのは当たり前らしい。


「で、魔法ってオレがやられたように、呪文を唱えて体に模様書いたあれなんだよな」


「まあ、本来は魔力マナを使うのが魔法なんだが、魔力マナを使っての呪文スペルによる詠唱術と、魔力マナ紋様サインを描く紋様術が基本だな」


 ザインがうまそうにデカイコロッケを食いながら言った。

 

魔力マナって誰にでもあるんだろ。

 なんか説明されたけどわけがわからん。

 やってもなんにもならん」


 フォークでカエルコロッケをツンツンしながらオレは二人に聞いた。


「精神を集中して頭でイメージする。

 その集まった魔力マナ呪文スペル紋様サインで発動させるんだよ」


 小柄な体でコロッケ二個を一気に食べながらリビィは言う。


「そこだよ!

 なんだよイメージするって!

 ないもんどうやってイメージすんだよ!」


 オレはそう言いながらコロッケにかぶりついた。


「あっ、うまい」


「だろ」


「ね」


 そう言いながら二人はほほえんでいる。


「まあ、俺たちの場合生まれたときからそばに魔法があるからな。

 なんとなく使えんだよ。

 といっても簡単なやつだけど」


「だね。

 僕も考えなくてやってるから、まあ他の人間ヒューマンも使えてるからそのうち使えるようになるんじゃないの?」


「そうかな」


「魔法もろくにつかえんとはな」


 隣のテーブルの四人組のクラスメートが聞こえるようにいう。


(こいつは確かイザールとか言うやつか)

 

人間ヒューマンとはいえ、しょせん異世界人は亜人デミヒューマンどもと同レベルの蛮族らしい」


「なに!」


「やめとけ。

 ほっとけよ」


 オレが立ち上がろうとするのをザインが止めた。

 笑いながらイザールは立ち上がり取り巻きたちと去っていった。


「なんなんだあいつ!」


「まあいつものことだよ。

 気にしない気にしない」


 あきれたようにリビィが言った。


「だいたいお前一応友好親善大使だろ。

 問題起こせばまずいんじゃないのか」


「まあな。

 ただムカつくだろ」


「俺たちは慣れてるからな。

 元々人種と認められたのがここ100年だしな。

 それまではモンスター扱いだったし、戦争も頻繁だったらしい。

 こんぐらいたいしたことはないさ」


 ザインがゆっくり皿を下げながら言った。


「それでよく和解できたな」


「魔王との戦いで各種族が協力せざるを得なかったからだよ。

 それで一気とは言わないけど和解していったってわけさ」


 リビィも皿を下げて言う。


「魔王!? 

 そんなもんいんのか!

 モンスターがいるとは聞いてたけど......」


「まあ、魔王は千年前、各種族と六英雄に倒されたからもういないけどね」

 

(魔王に英雄か......

 完全にゲームの世界だな)



 オレは残ったコロッケを食べきるとため息をついて席をたった。



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