表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーマードマイガール!  作者: 江野木エリ
29/46

act.1 【模造の怪腕と被虐の聖女】28

「なるほどね、話は大体分かった。お疲れさま、みんな」


カルカヤの診療所にあるパソコンからS.H.I.P.本部の来栖空斗へ映像を繋ぎ、本日あったことの報告を行なっている最中だった。


「しかし、色々と腑に落ちない点はあるね」


「腑に落ちない点、ですか?」


「うん、まず一番大きなところ、何故こんな小さな町にわざわざ戦力を投入したのか、ということ」


「それについては、まあ」


ここまで言ったところでカルカヤが口を閉じる。大きい方の男が言っていた『美羽がいたから』というところまで言ってしまうと、きっとこの子は自分を責めるだろう。少なくとも全員がいる場で伝える事実ではないと考えた。


どうやら一瞬の沈黙でそれを察した空斗が話を続ける。


「それについては推測を巡らせても仕方ないことだね。みんなよく頑張ってくれたよ。ゆっくり休んでくれ、と言いたいところではあるんだけど」


「けど、なに?」


「申し訳ないけど、君達にはまた別の任務を頼みたいと思ってる。一回本部に戻ってもらっていいかな?」


「別の任務、ですか?」


ウテナは美羽を見る。普通に歩けてこそいるが、まだ左腕は吊っている状態であり、とても今すぐに何か、と言う感じではない。


「空斗さん、美羽の怪我はどうするの?」


リコも同じことを心配してくれたみたいだ。


「ああ、そうだね。今回の任務は調査がメインになると想定している。それに、君達の共同任務って形にしようと思っているから、もし戦闘が必要な場合はリコにお願いするよ。元々はリコとセルゲイ君に頼もうと思ってた仕事なんだけど、まあ、ウテナ君と美羽は研修だと思ってくれればいい」


「ああ、なるほどです。それなら」


「まあ、今すぐにって訳でもないから、一旦家に寄ってから明日にでも来てもらえるといいかな」


………


ということで。


「ーーー声帯を認証。リコリス・ビスコッティ様、ようこそおいでなさいました」


四人は人工列島-アロイ・アイル-に向かうため、日本のP.o.r.t.a.l.に向かった。


「登録したんですね、リコ」


「色々便利だよ。美羽も後で登録しといたら?」


「オーダーを受諾。P.o.r.t.a.l.起動します。座標指定を開始、対象エヴァ地点名称、S.H.I.P.。準備中です。

ーーーオールグリーン。接続します」


「美羽、蓮見くん、先にどうぞ」


「じゃあ、そうさせてもらいますね」


「来栖美羽様、いってらっしゃいませ。貴方の行く先に、幸せがありますようにーーー」


「俺も先、いい?」


「もちろん」


「ゲスト様、いってらっしゃいませ。貴方の行く先に、幸せがありますようにーーー」


………


「怪我人の方は何とかなりそうかい?」


「何とかするよ。そこからはアタシの仕事さね」


四人が診療所を出た後、カルカヤと空斗は事後処理について話し合っていた。


「倒壊した建物の修繕費用とかは出来る限り補填するよ。ただ最近は上の方もケチでね」


「そこはアンタの腕の見せ所よね。期待してる。あ、あと支援物資のリスト見たんだけど……」


事後処理の手際は見事なものであった。次々と問題点が挙がっては解決されていく。


「ところで」


一息ついたところで、空斗が切り出す。


「カルカヤさん、何か上の空だね。どうかした?」


「ああ、うん、そうね」


表面に出さないように気を配っていた筈だが、空斗は恐ろしいほどに勘のいい所がある。カルカヤの疑念は二つ。一つは美羽の傷の治りがやけに速かったこと。『言祝ぎの送り手』を使い、もともと優れている美羽の治癒力を上げたとしても、いくら何でも速すぎる。そしてもう一つは。


「襲撃者の正体は調べてるけど、情報が少なすぎてね。街頭のカメラの映像とかを解析してるけど、時間はかかるだろうね」


「ん、まあ、仕方ないか。まあ進めてくしかないわね」


「ひょっとして、他に不安なことでもある?」


やはり、この男は恐ろしいほどに勘がいい。


「大したことじゃないわ。大丈夫よ」


「カルカヤさんは大丈夫じゃない時も大丈夫だって言うからね。心配だよ。僕も昔とは違ってある程度の悩みくらいなら解決できる力もある。カルカヤさんの為なら全力を尽くすよ」


「……何言ってんの、ガキのくせに」


「……照れた?」


「ナマ言ってんじゃないよ、下の毛も生え揃ってないヤツが」


「流石に生えてるけど!? 23歳だよ!?」


そんな軽口を叩きながらも一旦事後処理の確認は終了した。


「こんなとこかしらね。本当に助かったわ」


「お安い御用だよ。また何かあったら連絡して。あ、それと」


「それと?」


「本当に悩みがあるなら言ってよ。カルカヤさんは僕にとっても大事な人だからね」


「……んだよ、口説いてんの?」


「あはは、本心だよ。じゃあまたね」


そう言い通話を切る空斗。しばらくパソコンの前で立ち尽くすカルカヤ。


「……ほんっと、クソガキの癖に」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ