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アーマードマイガール!  作者: 江野木エリ
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act.1 【模造の怪腕と被虐の聖女】25

身体から白煙を上らせながら倒れ込む怪腕。


「カルカヤさんから電話もらったの。ちょうど日本でのお仕事も終わったし、急いで来たら間に合ったみたいでよかった」


タピオカを啜りながら経緯を説明するリコ。その後方には、幾つもの砲門が浮遊し付随していた。


「……それ、機能なんですか?」


「そう、美羽とかと比べると、ちょっと派手だけどね。本当はもっと可愛い機能が良かったんだけど」


少し照れたように答えるリコ。


派手なんてレベルではない。小さく華奢な彼女にアンバランスな武骨な砲門の群れ。今だに青白い硝煙を棚引かせる砲身を怪腕に向け、ウテナへと歩み寄る。


「蓮見くんは、怪我はない?」


「俺は大丈夫ですけど、美羽が」


護れなかった。


むしろ、美羽に護られた。


「俺のせいで、美羽が」


「何言ってるの」


悔恨を遮るようなリコの声。


「あんなにデカいの相手に時間稼いだんでしょ。マジ努力賞じゃん」


そうして、単独で前に出るリコ。


「だから、あとは私に任せて」


そう言うと再び砲門を展開する。さっきよりも多い。


怪腕は漸く身体を起こし、なんとか膝を立てる所まで体勢を整えている。


「よくも、私の友達に酷いことしてくれたね」


そう言い、全ての砲門から砲撃を開始した。


立ち上がりかけていた怪腕は再び仰向けに転倒する。それでもリコは攻撃の手を緩めない。


「まあ、ああなったらもう大丈夫だ」


ウテナがその様子を呆然と見ていると、セルゲイに声をかけられた。


「リコさんの機能って」


「自分の身体の周囲に、大砲を生成する。今はざっと見て、二十門くらいはあるか。」


「……要塞みたいですね」


「名前通りだろ? あっちはリコに任せて美羽の手当しよう」


要塞と化したリコの砲撃を一身に受け続けた怪腕は、やがて動かなくなった。


「……もういいか」


「ああ、お疲れさま」


「ごめんなさい、リコ。ありがとう」


「美羽、派手にやられたね。やられた? やった? どっちだろ。まあいいか」


「ウテナ、怪我はありませんか?」


「まず自分の心配してくれよ」


「ところで、カルカヤさんは?」


「カルカヤさんも怪腕と戦ってるはず。……ってか、まだ他に怪腕残ってるかもだな」


「なら、俺とリコで残りの怪腕を処理しよう。ウテナ、お前も休んだほうがいい。先に引き上げろ」


「え、でも」


「蓮見くん、ひょっとして美羽を一人にするつもり? それはちょっとないよ」


「え、あ、すいません」


「あと、今後は敬語禁止ね。私にもセルゲイにも」


「急にですね」


「禁止ね」


「……うん」


有無をも言わさぬ圧。というか、美羽はどうなのだろうか。


「美羽はコレかデフォだから仕方ないの」


「俺は敬語でもどっちでもいいが」


「もー、そこで距離詰めないから友達出来ないんじゃん。君たちタメでしょ?」


「え、タメ!?」


だと、十七歳? 外見はどう見ても二十代後半……


「見えないよねー。老けてるよね」


さっきから言いにくそうな事を、サラッと言うリコ。セルゲイがほんの少しだけ悲しそうな顔をしている。


「だから好きにしてもらっていい。俺も好きにする」


「……うん、分かったよ。よろしく、セルゲイ」


「私は?」


「……リコリス?」


「リコ」


「……リコ」


「よろしい」


満足そうなリコ。


じゃ、後はやっとくねー、と、町の見回りに向かった。


「美羽の友達、いい人達だ」


「……そうですね。でも、もう、ウテナの友達でもありますよ?」


「……なんか、嬉しそうだね」


「そう見えますか?」


「担ぐよ。痛くない?」


「痛いです。なので、優しく運んでくださいね?」


美羽は、ボロボロの身体で悪戯っぽく笑った。


「……っし、分かった」


「えっ、ちょっと、うわっ!?」


ウテナは美羽の正面に体を潜り込ませ、右の手首と太腿を抱え、肩に背負うように持ち上げた。ちょうどうつ伏せの美羽を肩に背負うような形だ。


「なんですかこれ!」


「なにって、ファイヤーマンズキャリーだけど」


「ファイ、えっ、何て?」


ファイヤーマンズキャリー。消防士が怪我人を救出する際に用いられた事に由来する搬送方法である。単独でも怪我人を輸送でき、更に片手が空くというのが大きな利点だ。


「もっとお姫様抱っことかなかったんですか」


「腕も足も折れてるんだから、そんな運び方危ないよ」


「あ、そうなんですか……」


美羽を担いだまま駆け出すウテナ。


(……意外と揺れないですね)


「お姫様抱っこが良かった?」


「……まあ、ちょっとは、ですけど」


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