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アーマードマイガール!  作者: 江野木エリ
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act.1 【模造の怪腕と被虐の聖女】14

「あっはは! そっかそっか、随分色々大変だったんだねえ。そう言う時はホラ、飲んじゃえばいいのよ。飲んじゃえば」


「はい、ありがとうございます、何ですかこれ?」


「これ? 炭酸麦茶だよ」


「へぇー、初めて見ました」


「カルカヤさん、ビールって言ってください。それと美羽は未成年ですよ」


「何だよー、固いなー。それは日本の人間の法律だろー? アタシら神造機だもんね」


そう言いつつジョッキを呷るカルカヤ。ウテナは棚からコーヒー粉を取り出し、二人分のコーヒーを淹れる。


「ありがとうございます、ウテナ」


コーヒーを淹れている間も二人の話は弾んでいた。時折挟み込まれるカルカヤの下ネタと、それに気付かない美羽。にも関わらず、意外と二人は気が合うようだ。


「んで、まだ《契約》はしてないのね」


「ええ、指輪はお渡ししてますので、ウテナのタイミングで」


「こんな可愛い子に『契約して!』なんて言われたら二つ返事で契約すると思うけどね」


「……ちょっとまあ、色々ありまして」


「ううん、いいと思うよ。慎重になっても」


「えっ?」


「契約するって事は、神造機にとっては『これから先、何があっても自分の《花婿(グルーム)》と戦い続けます!』って決意表明だからね。人間側はそんな一世一代の、って感じではないけど、勢いでやるもんじゃないっめ思ってくれるならそれはそれでこっちとしては嬉しいかもだしね」


「……カルカヤさん」


「まあ、ウテナがそこまで考えてたかは分からないけどね」


「ウテナ、前も言ったかもしれませんが、契約は直ぐじゃなくても大丈夫です。契約しなくてもある程度までなら機能は使えますし」


「機能?」


「なんだ、機能の話もまだしてないの。それでよく《花婿》になれなんて言ったよね、空斗は」


「ウテナ、私たち神造機は特殊な能力を持っています。能力は個体個体で異なりますし、使い勝手もかなり変わります。中には一つの軍隊に匹敵するような機能を持った神造機もいます」


「美羽にもカルカヤさんにもそれぞれ別の能力があるって事ね」


神造機と人間の違いとして最も顕著な部分であるのが、機能と呼ばれる異能力の有無だ。多くの神造機は”超常(フェノ)欠片(メノン)”のランクでいうとCランク、『存在または起動により得られる影響が数人規模の一個小隊に匹敵する物』と定義されているが、判別の基準は即ち機能の規模を反映している。それ故に、稀にBランクである『存在または起動により得られる影響が1つの軍隊の存在に匹敵する物』の神造機も存在するが、個体数としてはCランクと比べると少数である。機能の中には、物質、主に武器などを出現させる物、身体能力やその他自己の能力の変化、周囲環境や物質への干渉など、つまりは何でもありなのだ。


「って解釈で合ってますか」


「めっちゃ物分かりいいね、アンタ」


「能力の特性的に私はCランクだと思うんですけど……」


「ところで、美羽の機能って?」


「ああ、それでしたら昨日ちょっとお見せした通りなんですが」


「昨日?」


何か見せてもらったっけ。


「一番最初ですよ、ほら、猫に囲まれて私が木から降りれなくなって」


よく思い返してみる。


………。


見上げると、樹の上で両手に猫を抱えた美羽がいて、そして、スカートの中が見えそうで……


「そこじゃないです!」


「な、何も言ってないじゃん!」


「言わなくてもわかります! その後です!」


えーと、その後は確か、美羽が樹から降りられるように猫を退かして、その時に手を引っ掻かれて。


……ああ。


そう言えば、手にあった傷が一瞬で消えたっけ。


その出来事を美羽の機能によるものと推測するのであれば、傷を治すだとか、回復に関係したものと考えられる。


「えーっと、部分的にはそうなんですけど」


「そういうのはアタシの機能かな」


「ええっ? カルカヤさんが!?」


「何驚いてんだ引っ叩くぞ」


「いや、だってこんな乱暴で乱痴気で強引でgoing my wayで昼間っから酒飲んでるような無法者が」


「よーし、お前がアタシのこと普段どういう目で見てるかよく分かった。そこに座れ。三途の川で反復横跳びさせてやる」


「何されるんですか俺」


具体的に何をされるかはよく分からなかったが、語感から推測するに何度も死にかけるんだろう。


「ってか、そういう話はどうでもいいんだよ」


カルカヤが話題を転換する。


「要するに、美羽の機能は単純な回復能力ではないってこと?」


「ええ、まあそういうことになります」


「と言うと?」


「んー、なんて言うか、回復は結果(・・)と言うか、私の機能の副産物と言うか……」


「……?」


「えっと、これを見てもらえれば分かるかなと思います」


そう言うと、美羽は右手の甲をウテナに向けた。


「あっ」


そこにあったのは猫の引っ掻き傷。ちょうどウテナがあの時に、つけられた傷と同じ物のように見えた。


「ってことは……」


「ええ、そうです」


美羽は自分の手の甲を撫でながら、一息ついて言った。


「私の機能の一つは、誰かの傷を受け取る、ことです」

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