act.1 【模造の怪腕と被虐の聖女】10
結局、新生活最初の夕食は、上手に炊けたご飯に冷蔵庫の中にあった卵で作った卵焼きとなった。
「ごちそうさま。美羽、料理上手なんだね」
「昔からよく作ってましたから。今度はちゃんと食材調達からしましょうか」
夕食後、二人で後片付けをしていると、ウテナのスマートフォンが鳴った。
「ちょっとごめん」
「ええ、どうぞ」
画面に記されていたのは、ウテナのよく知る名前。
「……はい、蓮見です。お久し振りです。そうですね。……ええ、はい。……いや、どこでそれを? ……そうなんですけど……。はい、ごめんなさい。わかりました。すみません……」
電話の主はウテナのよく知る人らしい。ただ、会話が進むにつれてウテナの表情は曇り、声は落ち込んでいった。
「分かりました。ええ、行きます。はい、すみません。失礼します……」
そう言い電話を切るウテナ。
「……ウテナ、大丈夫ですか?」
「美羽……」
だいぶ気まずそうな顔を浮かべ、美羽を見るウテナ。
「明日、ちょっと付き合ってほしいところがあるんだけど……」
「はい、どこでしょうか?」
「……日本」
「日本!?」
そして、急遽、日本行きが決まった二人なのであった。
「……人工列島から日本って、いくらかかるかなあ……」




