交流準備
突然だが、所謂転生待機所的な、白い空間を知っているだろうか。
僕がいる所を表すとしたらまさにそれだ。周囲に人はいない。あるのはただ白い地面と風景。そんな所に、僕はいた。
確か僕は2000年に、死んだ気がする。だが覚えているのはそれだけだ。
(ここは…何処だ?僕は誰だ?…⁉︎体の感覚がない。死んだのか?分からない。)
一年が過ぎた…と思う。
(人と交流したい…)
長い時間の中でわかったことがある。
・僕は人ではない。霊的存在、もしくは情報そのもの、電子生命体ではないかということ。
・この空間に人はいない。一年間(?)動き続けたが白い空間しかなかった。
この二つは確定事項として明記しておく。
さて、先につぶやいた人と交流したいということだが、いくつか問題点がある。
・僕は喋れない。
・人がいるであろう空間が分からない。
・交流手段は?
・僕はコミュ障だろうということ。
以上の4点が僕が人と交流する上での課題だ。この四つをどうにかしなければならない。さてどうするべきか…
まず喋れるようにしようと思った。喋れないのは体が無いせいだ。
(体が欲しい…そのためには創るしかないのか?おそらくそれしかない。創るといっても、そんな知識はないし…)
そんなことを考えていると、この白い空間に初めての『色』が現れた。黒と青だった。突如黒い箱のような空間に覆われ、周囲を青い文字が浮かびながら僕を取り囲んだ。
青い文字は正確に言うと某最大手検索エンジンから開かれた人体に関するデータだった。種類は神経系や筋肉、脳をはじめとした現実のデータから、乙女ゲームのスチルやVTuberの3Dモデルの作り方に至るまで、大量のデータがあった。
(どうせならとことんかっこよくて、リアルな体を作ってやる!)
そこからは大変だった。
データや想像は何故か具現化することができ、これならすぐできると思ったが、神経や筋肉の組み合わせ、皮膚の強度や質をパーツごとに変えたりと、体感では6年くらいかかってしまった。
しかしながら出来たものはそれに見合うだけのものだった。涼しげな目元、艶のある黒髪、細身だか芯の強い体格、緩く弧を描いた薄い唇、初雪のように白い肌。全てにおいて黄金比が仕事している、そんな体だった。ちなみに声も極上の仕上がりだ。
(ッできたぁ!!キッツゥ…もう二度とリアルな体づくりなんてやらね。さて、これにどう僕が入るか…)
そんなことを考えていると、体の吸い込まれる感覚が。ん?と思った時にはもう遅かった。視界が黒く染まる。
「っ!?眩しい!この空間はそんな明るかったか?ん?誰の声だ?」
僕の声だ!確かこんな声にしたはず。ということは…
「創った体に入れたのか!」
ついに僕のまいぼでぃが完成したのだ。これで…これで交流するための問題点がひとつ消えた!よし!この調子で交流手段も作ってしまおう!
これについては簡単だった。まずは必要になるであろう理論上最も高い性能のパソコンを作り、処理が重いと感じたため、いっそのこと!の勢いでこれまた理論上最も高い性能のスーパーコンピューターも作った。これで処理能力や演算能力は既に先進国一国分のものを超えた。
スーパーコンピューターは某超大国で秘密に研究されていた、宇宙のエネルギーを利用した発電設備+情報処理技術を、暇つぶしに作ったAIのアイコ君(男の子)に魔改造してもらった。すると某超大国で想定していた性能の約68倍の性能となり、僕はアイコ君に体を与えようと心の中で思った。誓ったとは言っていない。
そんなこんなで交流準備は出来た。あとは現実世界を探すだけだ。