女王侍従のためらい ~ざまあの芽吹き~
「ふひひ、いいわね、素晴らしいじゃない。やっぱりこの私のやることはすべて正しいのよ」
女王ヘンリエッタは、侍従から差し出された報告書をみるなり、満面の笑みでそういった。
火術研究室 生産性23%アップ
冷術研究室 生産性18%アップ
風術研究室 生産性25%アップ
王国騎士団 作業効率 10%アップ コスト8%ダウン
などなど
報告書には、景気のよい数字がずらりと並べられていた。
そのどれもが、ヘンリエッタがエルドラより導入した、最新機器や技術を導入した部門である。
「この調子でいきましょう。それから・・・・・・」
彼女は、上機嫌で続けた。
「今回は機器の導入を見送った他の部門。土術研究室や、冥術研究室にもエルドラから機器の導入をすすめなさい」
「おそれながら陛下。そろそろ予算が・・・・・・」
侍従のひとりが、そう忠言した。
彼はどこか、つかれきった貌をしている。
「お黙りなさい。今回のことで、生産性が上がることは理解できたでしょう? ならば、すぐに儲けも出る。お金など、黙っていても次々に入ってくるはず、ちがうの?」
「・・・・・・おっしゃるとおりかと」
「ならばすぐにおやりなさい。予算を気にしてチャンスを逃すなど、下の下なやりかたです。これだから無能は・・・・・・」
そこまでいって、ヘンリエッタはあることを思い出した。
「そういえば、冥術研究室で、なにか機器に不具合が起こったとかいっていなかったかしら? あれ、どうなったの?」
「陛下のご慧眼通り、エルドラからいらした技術者に依頼して、直していただきました・・・・・・その時は」
「そうでしょうそうでしょう。やはり私のいう通りにしておけば、間違いなど無いのです」
わかった? とヘンリエッタは侍従をみまわした。
侍従たちは頭を垂れるばかりで、なにもいい返す者はいない。
「あなたたち、やっとわかってきたみたいね。いい? すべて私のいう通りにやりなさい。それこそがシャントゥールの進む道よ!!」
ヘンリエッタは侍従たちに下がるよう申しつけた。
侍従たちに代わって、数人の男女が部屋にはいる。
エルドラから技術者たちにくっついて、いっしょにやってきた者たちだ。
エルドラの、ファッションデザイナーに商人たち。
ここからは、ヘンリエッタのおたのしみの時間らしい。
「こんなに結果を出しているのだもの。このくらいのたのしみは当然よね」
侍従のひとりがもらしたため息は、ヘンリエッタには届いていなかった。
□■□
「おい。大丈夫なのか? 陛下にあんなこといってしまって。冥術研究室の問題、まだ解決していないんだろう?」
何人かの侍従がよりあつまって、小さな声で話し合っている。
「解決したさ。あの時はな。すぐに他の部分が壊れただけで」
こんなこと、陛下に聞かれたらとんでもないことになる。
だからしぜん、声も小さくなるのだった。
「エルドラの技術者はなんていっているんだ?」
「二言目には、金金金だよ。意見を出すにも金を要求するときた」
「そもそも、直せなかったのにそれなのか?」
「いわれた場所は直した。壊れたのは別の箇所だろう? っていわれちゃあな」
それを女王に告げようにも、すぐに無能扱いされてバカにされるだけだ。
そうわかっているから、侍従のだれもが、女王への報告を怠るようになっていた。
「それについてはおまえもだろ。細かいメンテナンスの依頼、いまだにぜんぜん途切れないって聞いたぜ」
「ああ。こっちは5人がかりだ。ついでに外の人間までいれているのに、まったく追いつかないときた」
鍋の修理や飼い葉桶の取っ手の取り付け。そういった雑務まで持ち込まれるのだからたまらない。
金物屋や木工屋。そういった人たちをやとってはみたものの、うまくこなせているとはいいがたかった。
「メンテナンス室だったら、すぐやってくれたのに。アイオン殿なら、もっと丁寧にやってくれたのに。いわれる言葉はそればっかりだ。俺たちだって、一生懸命やってんだぜ?」
「なあ、メンテナンス室って、どうやってこの量の仕事をこなしていたんだ?」
それは、侍従のだれもが抱いた素朴な疑問だった。
「わからん。だがメンテナンスを依頼してくる奴らの話を聞いているうち、俺は思ったことがある」
「なんだ?」
「前メンテナンス室長のアイオン。奴は化け物だったんじゃないかなってな」
「それは、うん。実は俺もそう思っていた」
「俺もだ」
「あの仕事の量。あれをこなすなんて、化け物でもなけりゃあムリにきまっている!!」
沈黙。それはすぐに破られる。
「クソ、こんなところで黙っていてもしょうが無い。俺はエルドラの奴らにもう一度修理を依頼してくる」
「また、金を要求されるんじゃないのか?」
「それは仕方がないだろう。女王もそうせい、といっていたのだしな」
侍従たちはうなずき合って、そうして足早に散っていった。
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