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収穫祭

「優勝は、『プエラポルタン村』!!」


うおぉぉぉぉお!!

と僕の周りで歓声が巻き起こった。


収穫祭のメインステージ。

ちょうど今、料理コンテストの結果が発表されたところだ。


カラフルな燕尾服の司会者がノリノリで発表したその通り。

優勝したのは、僕たちのプエラポルタンの村。

コンテストに出品した料理は、僕もちょっとだけ改良に手を貸した、件の煮込みスープなのだ。


「やったぜアイオン。プエラポルタン、初優勝だ」

「さすがアイオンさんの煮込みだな。見た目はシンプルでも食べたらわかる、この素晴らしさだ」

「はじめてアイオンの煮込みを食べた瞬間から、俺にはもう優勝するってわかってたぜ。」


あたりのプエラポルタン村の住人たちが、口々にそんなことをいいながら喜び合っていた。


そんなプエルポルタンのみんなのことを、恨めしそうに見る目があった。

プエルポルタンの隣にある、ギドー村の人たちだ。

彼らはこれまで、料理コンテストで2年連続優勝をしていたみたい。


今年優勝していれば3連覇。殿堂入りがかかった年だったということで、悔しさもひとしおなのだろうか。

彼らがコンテストに出した肉のパイ包みは、見た目にも華やかで美味しそうだ。


プエラポルタンの煮込み料理は、よくあれに勝てたもんだ。

やっぱり素材がよかったんだろうな。

プエラポルタンの野菜も肉も、絶品だものな。


「ジェフ、僕にも煮込みをもらえる? みっつほど」

「がってん」


なんておどけながら、ジェフがこなれた手つきで皿に煮物を装ってくれた。

あたりではまだプエラポルタンのみんなが大騒ぎして喜び合っている。


僕はその輪をはなれ、すこしはなれたところにあるテーブルへ向かった。


「あ、アイオンさん、こっちです」


呼ばれたテーブルにはメイにミリエル、ふたりの女の子が、僕を待っていた。


「わふっ」


もちろん、クロのことも忘れてないよ。


「これがアイオンさんの煮込み・・・・・・楽しみです」

「ぺろっ・・・・・・これは、おい、しい・・・・・・」


煮物を口にしたふたりの顔をみるに、どうやらお気に召してもらえたようだ。


「それで、これからどうする?」

「はい、よければふたりでいっしょに」

「いっしょにおまつりを見てまわりませんか?」


メイとミリエルの声が重なった。

ふたりとも、そんなにおまつりが好きだったとはしらなかったな。


「じゃあ・・・・・・」


いおうとした僕の足が、誰かに引っ張られる気配がする。


「あれ、クロ?」


見れば、クロが僕のズボンの裾を甘噛みして、くいくいと引っ張っている。


「どうしたの、クロ?」


クロはわふ、と吠えると、もう一度僕の裾をくいくい引いた。


「あっちになにかあるのかな? わかったよ。いっしょにいくからさ」


「え、アイオンさん?」

「ちょ、室長?」


「ごめん、ふたりとも。僕、ちょっといってくるね。」


2人は顔をみあわせて、


「ねえ、もしかして室長っていつもこうなの」

「ええ、まあそうですね。クロさんが最優先というか・・・・・・」

「なるほど。これは相手を間違えていたのかも・・・・・・はやくなんとかしないと」


そんなふうになにかいっている。


「わふっわふっ」

「わ、まってよクロ。いまいくから」


僕はクロを追いかけるのに夢中で、そんなことはぜんぜん聞いていなかった。

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