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ダブル・デザイア 〜最強の力は神をも超える〜  作者: 真心の里
シン【神玉編】
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風の国(シン編)

 

「退院したとはいえ完治したわけではないんですから安静に……」


「そんな暇はないんだ」



 退院して二日後……シンとアルカの二人は草原にいた。

 シンの体を心配そうに見つめるアルカ、そんな心配など気にもしないシン。



(多分だが昔の俺に戻っていたんだろう、昔の俺は正確には難があるが戦闘面では俺の比じゃない、その昔の俺ですら倒せなかった相手……記憶をたどれば魔王が有力だと思ったが、魔王の神玉の魔法の神玉を俺が手に入れていることから違うと考えられる。誰にせよ、俺に敵対する相手と考えるのが妥当だ、そのためにも戦闘能力をもっと高めなければならない……)



 シンの目の前に現れたオオカミの魔物が襲いかかる。

 襲いかかってくる魔物に人差し指を向け魔力を集める。



「初級炎魔法【火弾】」



 人差し指の先に10㎝の大きさの弾が出現し、オオカミを焼き尽くした。

 本頼【火弾】は小さい弾を作り出し相手を貫く魔法であり、焼死させるほどの火力も大きさもない。



「火弾でこの威力、いなくなってから何があったなんでしょうか?」



 異常なまでのシンの魔法の威力にアルカは感嘆のため息を零す。

 しかし、当人のシンは納得いっていない様子だった。



(……こんな程度の魔物では練習にもならない、対等かそれ以上の実力者と戦う必要がある。だが本当に戦闘した場合死亡するリスクが極めて高い。何とかして実力者と模擬選をする方法はないだろうか?)




 シンが目を瞑りながらそんなことを考えていると後ろからアルカが声をかけた。

 それに反応しシンは振り返り返事をする。



「何か用か?」


「実は…………」




 ◆




 草原からジュエリニアに帰って来たシン達は中心にある城の廊下を歩いていた。

 城に来ている他の国の王族の一人が実力者を呼んで来いと指示を出しているらしく、シンもその一人として呼ばれた。



「来ている王族はどんな人物なんだ?」


「確か風の国リールの王様のクルス・ゼフィロス様です」



 シンはアルカの口から出た名前に何かを気がつき記憶を探る。



(風の国…………ゼフィロスか、トトの情報には三代目までの情報しかないが風の神玉を持っているのは確かだろう、それに文献では風の国では武道大会が毎年開かれるほど王様が戦闘好きらしいからな、戦うとしたら風の神玉使いになるだろう、ちょうど良かった……死ぬリスクもなければ、弱いわけでもない、最も求めていた状況だ)



 シンは都合よく進む現実に口角を少しだけ上げた。

 それを見たあるかもシンにはわからない程度に嬉しそうな表情をした。



(目が覚めてから笑うことがなくなって心配していましたが、大丈夫そうで安心しました)



 二人は木で造られた大きな門を魔力を使い少ない力で開いた。

 この扉は魔道具の門で、登録されている魔力を流さないと扉が凄まじい重さになるようになっている。



「…………どれが王様だ?」



 シンはすでに練習場に集まっている人たちを見てアルカに質問する。



「まだいないようですね」


「読んでおいて自分は遅刻か、王族らしいな」



 シンは笑いながらつぶやき、呼べれた人が集まっている場所に行く。

 集まっている人達の集団に近寄ると、近くにいた男に話しかけられる。



「こいつは驚いた、シンじゃないか、起きてたのかよ!」


「おぉ……トーマス、最近だよ、目を覚ましたのは」


「そうか、心配してたんだぜ」



 背中に剣を担いでいる男はトーマス、シンが魔道士の時に仲の良かった騎士だった。

 シンの背中を叩きながら嬉しそうに話す様子は、厳つい外見からは考えられないほどフレンドリーだった。



「それに……アルカちゃんも来てるたぁ、今日は珍しいことが続くぜ」


「お久しぶりです、トーマスさん」



 アルカの存在に気が付いたトーマスはそれまた嬉しそうに言う。

 トーマスの言葉に反応しアルカは一礼をしながら挨拶をした。



「今日はベールの野郎の世話はいいのか?」


「はい、ベール兄様も日常生活は自分で行える程度には回復しましたので……」


「日常生活……ベールの野郎は無理なのか?」



 トーマスはあるかの言葉で悲しそうな顔をして質問をする。

 何が無理なのかという大事な部分が抜けているのにもかかわらず、質問の意図を理解したアルカは俯きながら言う。



「はい…………そこまでの回復は望めないと」


「そうか、残念だ」



 アルカとトーマスの間に気まずい空気が流れる。

 その空気を無理やり破るようにトーマスが突如明るい顔になりシンに話しかける。



「まぁ!こんな辛気臭い話は後でもいいからな!シンはなんで呼ばれたかもう知ってるか?」


「あぁ、風の国の王様が実力者連れて来いって話だろ?」


「そうだ、なんと王様が戦いたいって言っているらしくてな、冒険者とかも呼ばれたわけよ」


「だから俺の知らない顔も多かったのか……」



 シンは呟きながら近くにいる多種多様な人たちを観察する。

 男性は当然ながら女性もいたが、魔法使いはシンだけの様子だった。



「魔法使いはいないのか」


「魔法は才能の部分が大きいからな、認知されるレベルの才能なら学校に行くだろうしな」


「俺以外の魔道士はどうしたんだ」


「普通の魔道士は戦争の役に立つために大技が使える奴が選ばれるんだぜ、お前みたいな個人戦闘も得意な奴とは違ぇ」


「そうだったな」



 トーマスははっとして何かを思い出したかのようにポケットをあさる。

 取り出された物をシンが見ながら質問をする。



「そういえば、渡していなかったな」


「これは?」


「なんでも風の国の王様の従者が持ってきた魔道具らしくてな、これをつけるのが義務なんだってよ」


「そうか」




 シンが魔道具を服につけると、突如としてドアが開く。想定していない扉の音に集まっている人たちが驚く。

 微細な魔力の動きも感知ができるシンが気が付かなかったという事は、扉をあけるのに魔力が使われなかったことを意味する。



(あの扉を魔力なしで開けるとは……神玉持ちは伊達ではないということか)



 シンは扉をくぐって来た二人組を見る。

 華麗な装飾が施された服を着た緑髪の男と横にオールバックの男がいた。



「この度は我が主の我儘により、お集まりいただきありがとうございます」



 オールバックの従者が説明を始める。

 一対一の対決で武器は指定された危険性のない物を使用する。

 互いに装着する障壁を発生させる魔道具が壊れた場合、戦闘不能とする。



「御託は良いからよ、早くやろうぜ、勝ったら賞金もらえんだろ」



 従者が説明しているとシンの後ろからそんな声が聞こえてきた。

 その声の主は態度の悪い冒険者の男だった。



「随分やる気じゃないか」


「当たり前だろ、戦闘のせの字も知らねぇ王族様にちょっと勝つだけで金貨とか良い仕事だぜ」


「じゃあ、お前が最初の相手か」


「最初つーか、俺にボコボコにされて帰っちゃうと思うけどな!」



 冒険者の男がクルスに襲いかかる。

 その瞬間に従者が手を合わせると冒険者とクルス以外の人間の下に魔法陣が発生し、観戦席まで一瞬で転移する。



(固有魔法の一種の空間魔法……いや、普通に【転移】か?)



 シンは従者が発動した魔法について考える。

 そんなことを考えているのはシンだけで他の者は試合を見ていた。



「中級剣技【連撃】」



 冒険者の男がクルスに向かって鋭い連撃を加える。

 クルスはその攻撃を欠伸をしながら全て避ける。



「おいおい、その程度でイキっていたのか、とんだ期待外れだな」


「舐めやがって!中級剣技【一線切り】」



 冒険者の男が怒りをあらわにしながら脇腹めがけて攻撃を放つ。

 クルスがその攻撃を指でつかみ受け止める。



「やはり有象無象じゃ中級が限界か……」



 クルスがそう言いながら拳を握り冒険者を殴る。

 冒険者の男は吹き飛ばされ、練習場の壁に激突し、魔道具が壊れる。



「一般人たちに期待した俺が浅はかだったか、レイドに勝つ為に強敵と戦っておきたかったんだがな」


「……!?」



 クルスのつぶやきが聞こえたシンは従者の魔法などどうでもよくなり、クルスの方を見る。

 そしてクルスには聞こえない程度の声でシンも呟く。



「レイドって言ったのか?」



 その声がたまたまクルスには聞こえてしまい反応される。



「お前、レイドを知っているのか?」


「は、はい」



 クルスが質問をすると聞こえていないと思っていたシンは少し慌てながら答える。

 シンの返事でクルスは少し笑顔になり、シンに話しかける。



「どうだ、俺と戦ってみないか?」


「…………」



 シンは近くにいる参加者の顔を見る。

 それは冒険者が一瞬で倒されクルスを恐れている顔だった。



「私からもお願いします」


「分かりました」



 シンが他の参加者に先に戦うことを了承するように見ていると従者がそう言った。

 そしてシンは返事をして、一回の練習場に降りる。



(やってみる価値はある……)



 降りたシンは気絶している冒険者の男に人差し指を向け魔法を発動する。



「固有魔法【転移】」


「「…………!?」」



 シンが魔法を発動した瞬間、気絶している冒険者の男の舌に魔法陣が出現し二階に移動させた。

 クルスと従者はシンの固有魔法を見て驚く。



(固有魔法を持っていたのか?いや、あいつの固有魔法を見ていて驚いていたからな……もしかしたらこいつは一般人じゃないのかもしれないな)



 クルスの表情が一層笑顔になり指を鳴らす。

 驚いていた従者もその音で我に返り、試合開始の合図を送る。



「は、はじめてください!」


「上級雷魔法【雷撃】」


「……っ!」



 クルスはシンの人差し指から放たれた雷を見てから避ける。



(上位魔法である雷属性に加え上級、それを無詠唱ってのは可能性が一気に増えたな……)



 クルスはそんなことを考えながら、シンとの距離を詰める。

 シンは向かってくるクルスに人差し指を向け魔力を集める。



「上級雷魔法【雷撃】」


「風精霊魔法【旋風】」



 シンの人差し指から放たれた雷をクルスは下から風を起こし強制的に方向転換させる。

 そしてその風の中を通り抜け、クルスは拳の届く距離まで距離を詰めた。



「上級拳技【重拳】」


「上級無属性魔法【魔法障壁】」



 クルスが腕を振りかぶり重く鋭い一撃を放つ。

 その攻撃をシンは障壁を作り出して防いだ。



「これは剣を抜く必要がありそうだな」


「認めてもらい光栄です。上級炎魔法【火連弾】」



 シンが障壁の中からクルスに向けて10発の炎の弾を放つ。

 クルスは腰に掛けている剣を抜き、全て切り落とす。



「ファーム!後は頼んだぞ!」


「えっ……?」



 クルスが両手をシンに向けながら従者の名前を叫ぶ。

 従者……ファームはなにがわからないと言った表情で声を漏らす。



「ここじゃ本気を出せないだろ?少し場所を変えよう」



 クルスがシンにそう言いながら手をつかみ、上着の中から取り出した巻物を開く。

 そこには「転移」と書かれており、その文字をが光り出すと同時にシンとクルスが練習場から姿を消す。



「シン達は一体どこに行っちまったんだ?」


「おそらくですが、草原だと思われます。ですがクルス様が本気を出すとおっしゃっていたので向かうのには時間がかかりそうですね」


「シンさん……」



 トーマスがきょろきょろしながらそう言うと、ため息交じりでファームが呟く。

 ファームの言葉を聞いたアニムスは病み上がりの体のシンを心の中で心配していた。





 ◆




 シンは転移が終わると同時に手を解き、クルスと距離を取る。

 クルスは手に持っている何も書かれていない巻物を捨てて剣を構える。



「名前は?」


「シンといいます」


「隠すなよ、神名持ってるんだろ?それも聞かせてくれよ」


「……シン・アルカナ」


「アルカナか……聞いたことが無いな、まぁ俺は頭はよくないからな、知らなくても不思議じゃない」



 クルスは笑いながらそう言う。



「なんにせよ、神玉使いと戦えてよかったぜ、レイドと戦ってから自信が付かなかったんだ」


「レイドに負けたんですか?」


「いや、引き分けまで持ち込んだ、けどなレイドは使っていない力があると感じてな」


「それで力を上げるために強敵を探していたと」


「そういうことだ、だから俺をあんまりがっかりさせんなよ!」



 クルスは叫びながらシンに襲いかかる。

 練習場の時の比ではない殺気の籠った攻撃。



「上級炎魔法【業炎】」


「風精霊魔法【中風】」



 シンが人差し指を向け炎を放つとクルスも魔法を放つ。

 クルスの魔法によって発生した風でシンの炎が一瞬で消える。



「凄まじい風……固有魔法【身体能力強化】」



 シンが自分の魔力を体に纏わせると風でぐらついていた体が安定する。

 そんなシンにクルスは攻撃範囲まで近寄り、攻撃を放つ。



「上級剣技【重力斬】」


「上級土魔法【硬土壁】」



 クルスの攻撃が自分の体に届く前に土の壁を発生させ攻撃を防ぐ。

 そしてシンは敵の姿が見えない状態にもかかわらずクルスのいる方向に正確に人差し指を向け魔法を放つ。



「中級土魔法【土槍】」


「風精霊魔法【強風】」



 壁から突如として出現した土の槍をクルスは避け、手を合わせる。

 それと同時にさらに風が強力に吹き荒れ、土の壁が吹き飛んだ。



「まだ強力になるのか、戦術級風魔法【風遊】」



 吹き荒れる風を巧みに魔力でコントロールし、体勢を維持する。

 そんなシンとは反対にクルスは何もせずにその場に立っている。



(この風の中で立っている……魔法だけではなく身体能力も凄まじいわけか、相手は本気で倒しに来ている、こっちも本気を出さなければ)



 シンから魔力が一気にあふれだす。

 その魔力を感じ取ったクルスは口角を上げながらも汗をたらす。



(この魔力量、魔法系の神玉を持っているのは確かだな、さらにあの時の俺やレイドよりも強い……これは良い修業になりそうだ)



 本気になった二人が目を合わせる。

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