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6話 姫神子ルティナ

 ロンドは伝説の勇者の資格がある。

 そう言われてしまい、彼は正直やめてくれと考えてしまった。

 だが、同時に巡礼巫女の護衛候補にもなる事が出来るとの事だ……。

 彼の運命は? そして、その巫女らしき姫は?

 王様から衝撃の言葉を受けたその後。

 どうしたものかと考えていると……。


「おはなしおわった? おとーさん! おわった?」


 大きな幼女は父親の服の袖を引っ張り始めた。

 なんだか、その現場だけを見ると凄く……変態ぷれ……何でもない。


「ああ、終わったよ」

「いや、終わってません!?」


 満面の笑みで答える王と焦る父。

 そして、困惑する姫……。

 彼女は俺の方へと目を向け……。


「おわってないの?」


 とウルウルとした瞳で見てきた。

 それは卑怯だろ!?

 別に俺はロリコンじゃない。

 だが、相手は幼女だが見た目は高校生にしか見えない。

 合法に見えて合法じゃないがとにかく見た目だけなら高校生と言っても良いだろう。


 って俺は何を考えているんだ!?


「あのことあそびたい……おともだちほしい」


 そして、そんな事を舌っ足らずな口で言い始めた。

 何なんだこの可愛い生物は……。


「ザード卿、話は我らだけでし、子供達は……」

「ですが、相手は姫です!」


 当然だよなぁ。


「だがこの子には同じ年頃の友人はいない。エルフの子はこの街では珍しいからな……」

「それは……」


 王の言葉にザードは言葉を失う。

 まぁ、あの見た目じゃ同年代の友達は出来ないよな。

 俺達ヒューマンは地球人と同じように成長するし……。


「この子の耳はまだこんなに下がっている……だが、ヒューマンはそれが幼い証だとは知らん」


 へぇ……エルフの年齢はそれで分かるのか……。

 確かに王様や付き人の人は彼女よりも耳が少し上だ。

 それにしても友達が居ないか……。

 それは寂しいよな。

 俺だってあいつが居なかったらつまらない学生生活だったはずだ。


「父さん……」

「どうした?」

「僕も遊びたいです」


 俺がそういうと父さんは困った表情をした。

 まぁ、王の部下である彼が自分の息子と王の娘を遊ばせるというのに抵抗があるのだろう。

 だが……。


「駄目、ですか?」


 ここで引き下がったらあの子は幼馴染と言う些細な物さえも手に入らない。


「……はぁ、分かった怪我の無いようにな」

「そうか! ルティナや許しが出たぞ、ロンドと遊ぶと良い」


 王は嬉しそうに娘の頭を撫で、彼女は目を細めて気持ちよさそうにする。

 そして、すぐに目を開き。


「ほんとう!? わぁい!」


 と飛び跳ねた。

 うん……勇者とかはどうでも良いが、これ位なら良いよな?


「じゃあ、じゃあ!」


 ルティナという姫様は嬉しそうに俺の手を引っ張る。

 どうやら何をするか考えてるみたいだ。


「じゃあ……」


 彼女はただ、それだけを言い固まってしまった。

 そして……。


「ふぇぇ……」


 大粒の涙を流し始める。


「って!? ええええ!?」


 思わず俺はびっくりしてしまい、そんな声をあげた。

 なんで急に泣き始めたんだ!?

 俺が困惑してると……彼女はその理由を教えてくれた。


「あそぶってどうしたらいいの?」


 彼女はどうやら遊び方が分からないらしい。


「ええっと、普段何して過ごしてるんだ?」


 俺が問うと彼女は涙をぬぐい、考え始める。

 きっと何か遊びをしているはずだ。

 そう思っていたのだが……。


「おべんきょう、みこのおべんきょう」


 そうか、遊ぶ暇さえないという事か……。

 だが、今回は遊んでも良い。

 それはつまり、護衛候補の俺と仲良くさせたいというのが王様の考えだろう。

 俺が王様だったら大事な娘を預けるのなら安心できる相手が良い。

 例えば幼い頃からの友人とかなら……安心できるだろう。


 それもあって俺と遊ばせる気だったのかもしれない。

 だけど肝心の遊びを知らないのか……。

 この子はどれだけ窮屈な生活をしてきたんだろうか?


「……じゃぁ、こんなのはどうだ?」


 遊ぶと言ったんだ、何か提案しないと駄目だよな。

 そう思った俺は彼女に遊びを提案する。

 積み木や、ままごと……絵を描いたりと色々提案したのだが、彼女はいまいち食いつかない。

 ままごとなんて女の子が好きだとは思ったんだが……。


「ねーろんどはいつもなにしてるの?」


 ん?


「俺? 俺は……」


 この世界に来て遊んだ事は何度かある。

 とは言っても本当の子供じゃないからなぁ……。

 あくまで付き添い感覚だったが……。


「走ったり、木の実を取ったり……そんな事かな?」

「それしたい!」


 おおう……。


「いや、走るにはその服じゃ無理だ……木の実を取るにも難しいし、なにより立派な着物が汚れちゃうぞ?」


 彼女の着ている着物が安いなんて事はまずありえないだろう。

 だからそう言ったんだが……。


「やだ、するの! ともだちといっしょのことしたい!」


 ああ、なるほど……。

 この子には今まで友達が居なかった。

 だから同じ事をしたいのか……だが、走るのはともかく木の実を取るのは危ないよなぁ。

 木登りが出来るって感じはしないから、どうにか安全な遊びを……ん? そうだ!


「なら少し歩こう! 木の実じゃなくても今の時期なら美味しい実があるんだ!」

「はしらないの?」


 どれだけは知りたいんだルティナお姫様は……。


「さっきも言ったけど今の服じゃ走るのは無理だよ、だから、今度な?」

「ぅ~~」


 納得いかないのか唸り声をあげてるが、まさか着替えて来いとは言えない。

 着物は着替えるのに手間がかかりそうだからだ。


「ほら行こう、ルティナ」


 俺が彼女の手を掴むと一瞬ビックリしたが、やはり遊びたいという気持ちが勝ったのだろう。


「わかったはしるのはこんど、ね?」


 念を押されてしまったが、どうやら今回は納得してくれたみたいだ。

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