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3話 ロンド

 魔法が使えない転生者ロンド。

 だが、彼には魔法の弱点を見破るという力があるらしい。

 本当に使えるかは分からない。

 だが、彼は何故か確信していた……そして、それが使える時を待ちわびるのだった。

「ロンド……」


 あれから数日後……父親は神妙な面持ちで俺の名前を呼ぶ。


「どうしたの? 父さん」


 俺はいつも通りに彼の方へと寄って行った。

 この年にしては大人っぽいと言われる俺だったが、今は褒める余裕がなさそうだ。

 つまり……。


「実は、グレイ卿から決闘の申し出があった。彼のご子息、ファイとの決闘だ」


 ファイ……と言うのか、あのおっさんの子供は……。


「決闘ですか?」

「ああ、だが、お前は魔法が使えん……この決闘は明らかな……」


 見世物。

 そう言いたいのだろう、ザードは口を閉ざした。

 だが、俺にとっては好機だ。


「分りました。父さんの期待に応えられるようやってみます」


 俺はそう言うと準備をしなければならないと考える。

 魔法を判断することはできる。

 だが、対応できるかは分からない。


「何を言っている、良いか? お前はなるべく早く棄権をするんだ。わざと転び、足を怪我したと喚く、これならば負けは負けでも――」

「いえ、僕は戦います」


 悪いが、彼の言葉には従えない。

 何故ならこの父親は嫌いじゃないからだ。

 俺はどうやら転生前も転生後も両親に恵まれた。

 なら……やれるだけやってみるしかない。


「駄目だ! 例え殺し合いではないと言っても――」


 死ぬ危険がある。

 そう言いたいのは分かっている。

 しかし、勝てるカードはある。

 なら、分の悪い賭けではない……十分に勝機がある訳だ。







 試合当日。

 俺とグレイ卿の息子ファイは同じ部屋に居た。

 父親そっくりの顔の少年は俺を見ると……近づいて来る。

 何か言ってくる気か?

 俺は身構えると……。


「なぁ、魔法使えないって本当なのか?」

「…………」


 別に隠す必要もない。

 だけど、俺は敢えて黙っていた。

 すると彼は――。


「悪い事は言わない、父様には目にもの見せてやれって言われたけど、フレイムボルトを撃つ、当たらないようにうまく避けるんだ」

「負けろって事ですか?」


 俺がそう言うと彼は頷いた。

 控室には俺達以外には誰も居ない。

 内緒話をするにはうってつけだとは思うがなるほど……。

 あの父親にしてこの子供有りと言った話もあるが……このファイって人は違う様だ。


「君の姉の事もちゃんと掛け合う、僕には好きな子がいるってね、でも……それでもどうにか出来るかは分からない、でも安心してくれ……」

「大丈夫です、手は抜かなくても……多分」


 確信はあった、だけど自信はない。

 俺はそう言うと彼は不安そうな顔をした……。

 偽っている様には見えない、心から心配してくれている様だ。


「悪い事は言わない、変な意地を張って怪我や死ぬ事は無い……」


 念を押すようにそう言うと彼は部屋の外へと向かっていく……。

 逃げ道はもうない。

 でも、これで良い……ここからだ……ここから俺の目的は動き始めるんだ。

 俺も彼の後を追い、部屋の外へと出ると歓声が聞こえた……。

 どうやら客がいっぱいいる様だ。

 何故なら俺は巫女護衛隊長の息子であり、副長の息子との決闘だ。

 誰もが見たいに決まっている。

 だが、誰も知る事は無い俺が魔法を使えない事に……。

 だからこそ……。


「さぁ! 真魔(しんま)勝負、開始!!」


 逃げる訳にも負けるわけにもいかない。


「フレイムボルト!!」


 彼は言った通り開始と共にフレイムボルトを撃って来た。

 だが、焦る必要はない。

 俺はポケットに忍ばせて置いた小石を魔法に向かって投げつける。

 そして、自分自身は後ろへと向かって走った。

 するとすぐ後ろで爆発音がし、身体が前へと押し出された。


「うわ!?」


 思ったより衝撃で起きた風がすごい。

 とは言え、手加減をしているというのは本当だろう。

 俺は転ぶ事無く、なんとかその場を凌いだ。

 もくもくと上がる煙の中、俺は次の手を考える。

 出来る事は身を守る事だけだ。

 攻撃に転ずる魔法は無い。

 そもそも魔法は使えないんだ。


「さて……どうしたものかな?」


 戦いに勝つには相手に降参させるか、気絶をさせるかのどちらかだ。


「……相手あって俺には無い物……魔法、そして、魔力……魔力切れは流石に無理か」


 そう呟くと煙はようやく晴れ、彼は勝ち誇ったふりをしていた。

 だが、煙の向こう側に俺の事を見つけたのだろう、驚いたような顔をして……。


「な!? 何で倒れて……」


 それは先程の優しそうな声だった。


「言ったろ? 手加減は必要ないって……」


 俺がそう言うと彼は焦った様に客席を見た。

 彼の視線の先にはグレイ卿……冷めた目で自分の息子を見下ろしている。

 なんとまぁ、醜い親だ……。

 彼は再び俺の方へと目を向けると辛そうな表情を浮かべ――。


「フレイムボルト!!」


 同じ魔法を放ってくる。

 あくまで俺を傷つけずに倒そうとしているみたいだ。

 彼なりの反抗か……息子が常識人だと辛いのかもしれないな。

 そう思いながら俺はまた小石を投げる。

 容量は分かった、今度こそちゃんと凌いでみせると俺は煙の中へと飛び込んだ。

 そして、真っ直ぐに駆け抜け――。


「はは! これなら――僕の――」


 勝利を宣言する彼の目の前へと姿を現すと彼は目を丸め――。


「なっ!? なん――」


 狼狽していた。

 その隙を狙い俺は彼の胸へと手を当て……。


「俺の勝ち、魔法は苦手だけどこの距離で使えば流石に当たる」


 嘘だ。

 本当は魔法なんで出す事すらできない。

 だが、俺は悪魔で勝利を確信したかのような余裕を見せた。

 大人の余裕って奴だ……高校生だけどな。

 いや、死んだのは、だけど……。


「……な、何を言って……」

「良いから降参してくれ、ファイ、君は良い奴だここで殺したくはない、だけど魔法を当てるにはこれしかないんだ。俺に魔法は通じない」


 俺は最後の脅しとばかりに声を落とし……。


「だけど、俺のからの魔法はこの距離なら絶対に当たるし致命傷だ」


 そう言うと彼はびくりと身体を震わせた。

 あと一押しだ……。


「頼む、もし何かされそうだったら父さんに言えばきっと君を引き取ってくれる、それだけの力はある事を知ってるだろ?」


 そう言うと彼はがっくりと項垂れ――。


「降参だ……僕にはもう、手が無い……」


 そう言って負けを認めてくれたのだった。

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