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16話 過行く日々

 王子であり神子であるヴァルとの出会いを果たしたロンド。

 どうやら彼らは巫女ではなく神子だという事を知ったロンドは驚くも受け入れた。

 そして、さらにはルティナに気に居られた様で……断るに断れない彼はそれも受け入れるのだった。

 それから俺は体力づくり。

 作ってもらった木刀での修行。

 ルティナと遊び……日々を過ごしていく……。


 相変わらず父は反対気味だったが、俺の方はというと……。


「よし!」


 何とか完成した鉄の剣を身に着けると、彼女へと目を向ける。

 彼女は目を細めて嬉しそうに笑い。


「ロンドっ! 凄くかっこいいよっ!」


 ころころと笑う彼女は俺が小さい頃から変わらない姿だ。

 そう、彼女の名はルティナ。

 俺が10になったが彼女は12らしい。


「一応は様になったってやつだな? それで……ルティナ儀礼用の服ってそれか?」


 俺がそう言うと彼女はくるくるとまわり、えへへと笑う。


「うんっ!」


 巫女服のような形だが、もっと色鮮やかだ。

 なぜ彼女がそんな服を着ているのか? それは簡単な理由だった。

 それは彼女が今回巡礼神子に選ばれたからだ。


 ゴブリンの襲撃の後、街の魔法使いたちは総出で周りの魔物を封印をした。

 だが、そこで明らかになったのはその数が増えていたのだ。

 その為神子であるルティナの兄がこの地に強力な封印を施した。

 今も一日の殆どを封印を維持するために魔法を使っている。

 だからといって均衡は崩れる事無く保たれているし、本来であれば彼女が早々に神子になる理由はない。


 なのに今後、彼女は正式に神子として扱われる。

 本来神子が巫女として認められるのは16……成人してからだ。

 だが、今はそんな事を言っている場合ではないという訳だ。

 ある理由の為、これから彼女は神子としての修業が始まる。

 そして、その前に神子になる儀式を執り行うわけだ。

 

 本来は彼女だけ儀式に参加すれば良いが、今回俺がここに居るのは俺の護衛就任の儀式も一緒にやる事になったからだ。

 その理由は簡単だった……俺には魔を滅せる力がある。


 だからこそ王様は俺という存在を前に出し、民を安心させたいとの事だ。

 とはいえ……。


「無茶だよなぁ……僕はまだ10だぞ」


 そうぼやくとルティナ以外の声で「あはは」という声と「ははは!」という声が聞こえる。

 片方は姉ジーシャの物だ。

 そして、もう一つは……。


「笑うなよ、ファイ」


 彼は俺と決闘をしたファイだ。

 あの後、彼の本当の父親は街を追い出された。

 そして、彼は俺の家に引き取られた訳で一応俺の兄と言う事になっている。


「何を言っているんだ。魔法が使えないのに魔法が得意な俺に勝ったのは誰だい?」

「あれは必死だったんだ……」


 勿論一緒に住んでいたからもうすでに彼は俺が魔法を使えない事は知っていた。

 だが、嫌味な事は何も言って来ない。


「自信を持ってくれ、ロンドは立派な護衛になれる」

「うん! ロンドならきっとワタシを守ってくれる、から……」


 ファイの言葉に頷くルティナはそんな事を口にし何故か頬を赤く染めると「えへへぇ」と笑いぶんぶんと頭を振った。

 一体どうしたというのだろうか?

 疑問ではあるが、彼女の事だ。

 どうした? と聞いても内緒と返ってくるのがいつもの事だ。

 まぁ、これが今の日常だ……段々とこの世界の友人や家族にも慣れてきた。

 だが、俺は俺。

 目的を忘れた訳じゃない。

 たった一言……告げたい相手が居る。

 その為に今日まで修行をしてきた訳だ。


「それで……儀式の方は大丈夫なのかい?」


 ファイは俺の肩に手を置き訪ねてきた。

 彼の顔は心配する兄そのものだ。


「ああ、と言っても酒は飲めないし、果実の搾り汁だったっけ?」


 俺はルティナに尋ねる。


「うん! そうだよ、ロンドが飲んで、それで……」


 そう、儀式を受けるといってもそう難しい話ではないのだ。

 この土の都には神社のような物がある。

 そこに行き神子装束に身を包んだルティナより神酒を盃に注いでもらう。

 それを飲み干し、神子を守ると誓いの言葉を告げるだけだ。


 都によっては儀式が違うらしいが土の都ではこの方法で行われているらしい。

 因みに神子は返された盃で同じ酒を飲むのがしきたりらしい。


「えへへぇ……えへぇ……」


 なんか今日はルティナがご機嫌と言うか変だな?

 ちょっと心配になって来た。

 だが、きっと大丈夫だろう……そう思っておきたい。

 それよりも問題は別にある。

 それは……。


「でも神子の修業ってたったの一年だろ? 大丈夫なのか?」


 その時俺は11歳、精神年齢はともかく肉体的にはその程度の体力しかない。

 剣をずっと振れる訳も無し、その点は不安だらけだ。

 ルティナもまだ12と普通はまだ神子として認められない年齢だ。


 魔力も体力もまだまだ幼いとされるからだ。


「でも、もう……水の都が……」

「そ、それは分ってはいるさ……」


 そう、ここまで早まったのには理由がある。

 ここを収める神子はルティナの兄ヴァルだ。

 彼に関してはまだ若く、問題は無かった……。

 いや、寧ろ若い時間が長いエルフは魔力に優れている。

 問題はエルフではなく……グリーヴという種族にあった。

 風の加護を受ける彼らはどの人種よりも身体が弱い。

 その一方若い時はどの種族よりも魔力に優れ、その中でも群を抜く者は天候迄操れるとされている。

 だが、若い期間が致命的に短く……その上短命だ。

 しかし、彼らが短命である事は誰もが知っている事だ。

 それでも、新たな神子が必要な理由は……。


「先代が魔物に殺されて……新しい神子の年齢が8歳だったよね、大丈夫なのかな? その子……」


 ジーシャが今口にしたように幼すぎる。

 更には魔物に殺されてしまった事で他の都の神子が怯え巡礼を中止しているとの事だ。

 だからこそ、今いる巡礼神子を引退させ、同年代かそれに近しい年代でまとめる事で連携を取ろうとしているらしい。

 果たしてうまくいくのか? そもそも神子とは次世代が成人するまでの仕事だ。

 それが急に変わって問題はないのか? それも疑問だが、魔物の出現も増えている事から魔力が潤沢な新たな世代に変えたいらしい。


 先行きは不安だが……俺がする事は変わりないな。

 俺はルティナを守り各地を回り、たった一言を告げに行く……それだけだ。

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