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15話 王子と姫

 キューラは錆びた剣を受け取らずに木剣を求めた。

 それを快く受け入れてくれた王に連れられて彼は修業をする事に……。

 だが、この世界で剣術と言うものはない。

 どうしたものかと考え取りあえず走り込みをする彼の前に現れたのは姫ルティナと恐らくその兄の王子だった……。

 初めて見る王子はとても整った顔だった。

 所謂イケメンだ。

 この世界でも当然そう言った人種は好かれる。

 特に女性にだ……今も黄色い悲鳴が飛び交っており、彼は涼しい顔でそれを聞いていた。


 爆発してしまえ! そう思ったが、相手は王子。

 俺はただ黙って彼らを見ていた。

 すると、何かを探していた様子のルティナは俺を見つけると笑みを浮かべ、此方へと走って来た。


「って!? おい!! その服じゃ危ないって!!」


 俺は嫌な予感がし、慌てて彼女の元へと走る。

 すると動き回るのに向いていない服の彼女は案の定、転んでしまい。

 俺は彼女に覆いかぶされるようになってしまった。

 もう少し背丈があれば受け止められただろう。

 だが、俺は今子供だ。

 彼女を受け止める事は出来ない。

 というか……。


「もご……」


 なんか柔らかいものが顔にあたってるんですが!?


「ろんどっ!」


 怪我はなかった様子の彼女は何故か起き上がろうともせずに嬉しそうな声をあげている。

 いや、動くな? 動くとその柔らかいものも……。


「えへへぇ~……」


 何故満足気なのか分からない。

 だが、とにかくルティナはご機嫌の様だ。


「こら、ルティナ……少年が窒息してしまうよ?」

「ぅ?」


 正直窒息と言うか理性が無くなりそう。

 そんな時に聞こえた声は透き通るような声だった。

 その声に続いて聞こえてきたのは勿論黄色い声。


「ルティナは恩人を殺すつもりかい?」

「ぅー……」


 諭されたようにルティナは俺から離れ……俺は慌てて息を吸う。

 なんだか……すごく良い匂いがする気が……いや、してる。


「ごめんよ、この子はまだ子供でね……と言っても君もそうか」


 鼻につくような声ではない。

 あの王様のような優しい声で彼は俺へと手を伸ばす。

 俺は一瞬戸惑ったが彼の手を取った。

 すると彼は俺を断たせると、土を払ってくれた。


「あ、いや……自分でやります。王子にそんな事を……」

「妹を救ってくれた者にはそれ相応の対応が必要だ」


 彼はそう言うと俺に怪我が無いかを調べ始めるのだった。

 とはいってもセイレーンの魔法使いに俺は治療をしてもらった訳で傷はもうない。

 それは王に聞いてないのか?


「ちゃんと治してもらえたようだね、っと申し遅れて申し訳ない、僕はヴァルこの街を守る土の神子の一人だ」

「へ……?」


 その言葉に俺は呆然としてしまった。

 巫女? だってどう見ても男だよな?


「巫女様って女の子じゃなきゃいけないんじゃ?」


 俺がそう聞くと彼は一瞬ぽかんとし、すぐに笑い始める。


「何を言っているんだい? 神子に男も女も無いよ。偶々僕たち王族が神子とされることは珍しいけど……過去も男性の神子はいた」


 つまり、あれか?

 巫女ではなく、神子か御子だったと?

 と、とにかくそういう訳だったんだな。

 なるほど……。


「それで、その……何故ここに?」


 俺は思わずそう口にしたが、それが気になる所だ。

 いくら妹で神子である彼女を助けたとしても、彼がここに来る理由はない。

 そう思っていた。

 だが、彼は微笑むと……。


「さっきも言ったけど妹を救ってくれた者にはそれ相応の対応が必要だ」


 いや、それは大げさじゃないだろうか?

 俺が首を傾げると彼は微笑み……。


「神子を救うという事は世界を救うという事だよ」

「お、大げさです!」


 俺はそんな大したことはしていない。

 ただゴブリンを倒しただけだ……ゲームとは違い厄介ではあったが見つけてしまえば、此方の物だった。

 圧勝なんて言葉は到底つかえない結果でもあったが……。


「大げさではない……」


 彼はそう言うとルティナは笑みを浮かべて俺に抱きついてくる。

 このスキンシップは嬉しいんだが正直心臓が持ちそうにないから辞めて欲しい。

 だが、振りほどくと絶対ショックを受けるよなぁ……。

 俺が迷っているとルティナは人の気も知らず「えへへ~」と笑い。


「あのね、わたし……ろんどのおよめさんになるのっ!」


 へぇー……って!?

 何!?


「そうかそうか、それは良かったルティナを守ってくれるのだからね、安心だ」


 そして王子!? 貴方は何本当にうれしそうに言っているんだ!?


「え、ちょ……ま、待って下さ――」


 俺がそう言いかけるとルティナは不安そうな……泣きそうな顔で俺を覗き込んでくる。


「ろんど、わたし……きらい?」


 それは卑怯だろうに……そもそもこんな可愛い子と今まで接点が無かった俺が急に嫁!? 信じられない。

 というか、これって子供の時の思わずしちゃった約束って奴だよな?


「きらい?」


 泣きそうな声を出さないでくれよ……。


「嫌いじゃないよ、だから泣かないでくれ」


 そう言うとルティナは花のような笑顔を作り笑い始めた。

 どうやら泣かないですんだようだ。

 取りえずほっとしていると……。


「妹の事頼んだよ? 怖がりで泣き虫だから誰かがついてくれていないとね」

「は、はぁ分かりました……」


 下手に此処で断ったら泣かれる。

 そう思った俺は首を縦に振るしかなかった。

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