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14話 錆びついた剣

 ロンドの元へ訪れた者は王だった。

 彼はセイレーンの女性を従えどうやらロンドの治療に来てくれたようだ。

 無事傷を癒したロンドは王の話を聞く……。

 すると王は話と共に錆びついた剣をロンドへと渡すのだった。

 剣を差し出してくる王に対して、此処迄無礼な事を考えた人間はいるだろうか?

 いや、居るはずがない。

 だが、俺はそう思ってしまった。


「えっと……」


 剣術は我流。

 剣を作る技術は過去の物で現在は無く、恐らくできない訳ではないが現状の武器は目の前にある錆びた剣。

 鍛え直すにもこいつは年代物でそれは難しいと来ている。


 勇者への待遇とは思えない三重苦だ。

 いや、俺は勇者になりたい訳じゃないんだが……。

 それが必要ならそうなっても良いと今回思った訳だが……。


「どうした?」

「いえ、どうしたも何も剣術すら分からないのでは難しいのでは?」


 俺は改めて失礼だと思いつつもそう告げた。

 それだったら体術を学んだ方がいい。

 そう思ったんだが……。


「かつての勇者はこの剣で戦ったそうだ」


 いや、そうなんだろうけどさ……。

 だけどその剣が問題なんだろう。

 何処からどう見ても錆びている。

 鞘に入れたが最後、引き抜くには相当力が居るだろう。

 事実、王様も結構時間がかかっていた。

 それなら新しいのが欲しいがそれはすぐには出来ない。


 そもそも、勇者の剣と言われているが材料は何だ?

 錆びてるから金属かなにかには間違いないだろう。

 だが、不思議な色をしている。


「えっと……」


 参った。

 こんなジャンク品を押し付けられるなら、木の枝の方がマシじゃないだろうか?


「あの、正直に言いますとそれはもう使い物にならないのでは?」

「正直も何も使い物にはならないだろう、だが一度ぐらいなら戦えよう」


 うわぁ……。

 言い切ったよこの王様。

 尚更いらんわ!

 そう言いそうになるのを堪えつつ俺は――。


「でしたらお願いがあります……木を削り取って剣の形にしてください。色を付け漆を塗ればこの剣よりはましなものになると思います」

「なに?」


 彼は心底意外そうに顔を歪めた。

 いや、王様から物を貰えるって事自体は凄いと思う。

 だが、その肝心の物が問題だ。

 そんな頼りないものを使うぐらいなら木刀か木剣の方がいい。

 刃は無いが鈍器としては安心できる。

 それに修行にもうってつけな物だろう。

 少なくとも錆びた剣よりは……。


「なるほど、そう言う手もあったか……」

「…………」


 錆びた剣をしまった王様に俺はほっとしつつ見上げると――。


「ならさっそく作らせよう、大きさはこれと同じで良いか?」

「はい、問題ありません」


 そう言うと彼は頷き――。


「今の話を聞いていたなすぐに作らせよ」


 兵士へとそう告げた。

 流石にこの世界にも大工は居るし、削ったりぐらいはできるだろう……。




 その日から修行をした方がいい。

 そう言われて俺は王様に連れられてしまった。

 勿論父親ザードもついて来ていたが今は居ない。

 王様に言いくるめられて今は詰め所でもやもやとしている頃だろう。

 俺が連れてこられたのは魔法を練習するらしい施設。


 そこでは新米の兵士達が魔法の訓練に勤しんでいた。

 だが、俺はそれが出来ない。

 魔法が使えないからだ……。


「さて、どうしたものか……」


 俺は思わずそう口にした。

 本来この世界に剣などで魔物に対抗するというのはあまりない。

 そもそも魔物と言うのは恐ろしく封印していくのが仏らしい。

 だが、年々それも厳しくなっていく……。

 その理由が巫女だ。

 巫女は滞在、巡礼の二種類の巫女が居る。

 彼女達の力で強力な結界を生み封印する。

 それがこの世界の均衡……平和につながっていた。


 だが、確かに以前の巡礼巫女が旅立ってからそんなに時間が経っていない。

 結界は成功したという話は聞いているし問題は無いはずだ。

 しかし、ゴブリンと言う魔物が街の中に居た。

 そして何か箱のような物に執着していた。

 一体あれは何だったんだ?

 王様に聞こうにも時間が上手い事取れないだろうな。


「本当に参った」


 俺は椅子へと腰を掛けボーっと魔法の訓練を見ていた。

 まぁ、仕方ないよな俺が戦うにも修業は当然必要だと言っても何から始めたらいいのか……。


「まぁ、取りあえず体力作りからか?」


 そう思い立った俺は立ち上がり、取りあえず走り込みをする事にした。


「とはいえ病み上がりだからな」


 傷は完全に塞がっているとはいえ無理はしない方がいい。

 何故なら血まで作れる訳じゃないからだ。


「よしっ! 軽くランニング程度だ!」


 俺は自分に言い聞かせて走り始める。

 すると周りの人間は首を傾げ始めた。

 そりゃそうだろう……この世界は魔法で成り立っている。

 好き好んで体を鍛える者はいないという訳ではないが……珍しいからな。


 というか注目されるのは恥ずかしいな。

 そんな事を考えていると周りが騒めき始めた。

 もしかして、そんなに気になるのだろうか?

 そんな事を考えているとふと俺の目に映ったのはルティナともう一人……彼女に似ている雰囲気の青年だった。

 もしかして兄貴か? だとしたらお姫様と王子様がここに来たと? なんでこんな所に用があるんだろうか?

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