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13話 勇者

 ゴブリンを退治し、帰宅したロンド。

 そこで話を告げると当然家族は心配をした……。

 だが、彼は間違っていないと自身の気持ちに嘘をつくことなく……また、眠る母に向かい誓いを立てるのだった。

 いくら土の都の薬を使っているからと言って翌日にあの傷が治るなんて事は無かった。

 痛みを感じつつ起きた俺は周りを見渡す。

 母親の姿はない。

 どうやら起きて朝食でも作りに行ったのだろう。


「さて、と……」


 これからどうしたものか……。

 取りあえずは今のところは安静にしてないといけないな。

 まだ傷が治ってないし、なにより派手に動けば開くこと間違いない。


 傷痕が残る位ならどうでも良いが、傷が広がってしまって万が一の時はまた言葉を伝えなきゃいけな人が増える。

 流石に記憶を保持したまま転生するなんて事、二度も三度もある訳が無いと思うが……。


「それだけは勘弁だな」


 悲しませるのは変わらない。

 そう思いつつ俺はそんな事を口にした。


「とするとやっぱり安静か……」


 しかし、暇だ……昔ならゲームをして暇つぶしをしたもんだが……。

 この世界には当然ゲームなんかは無い。

 ある娯楽とすれば本や劇ぐらいだ。

 賭け事もあるだろうが、俺はまだ子供。

 それが出来る歳ではないし、出来たとしても今は安静を優先すべきだ。


「うーん……」


 だが、ただ寝ているだけって言うのも暇な物だ。


「うーん……痛っ!?」


 俺はもぞもぞとベッドの上で動いていると激痛が身体を走る。

 うん、寝がえりをうつのも一苦労だ。

 というか、その所為であまり眠れてないんだが……。


「眠い、だが眠れない」


 そんな事を口にした所で家が騒がしくなったことに気が付いた。

 一体なんだというのだろうか?

 そう思っていると扉がノックされる。

 一体誰だろう?


「は、はい!」


 傷に響かないよう注意しながら返事をするとそこから聞こえたのは。


「私だ」


 聞き覚えのある声だ。

 いや、聞き間違える訳が無い。


「王様!? 痛っ!?」


 思いがけない人の来訪に俺は思わず声を上げる。

 当然傷を考えての声じゃなかったため痛みに悶えてしまった。

 すると王様は俺の返事を待つことなく部屋へと入って来た。

 彼は俺を見ると表情を歪め……。


「治療を」


 と隣に居た女性へと告げる。

 青い髪で透き通るような肌。

 そして、背の高いのが特徴なセイレーンだ。

 何故こんな所に? と思ったが、思い出した。

 以前父親に言われていた事だが、城には何かあった時の為に治療師としてセイレーンが二人以上いるはずだ。

 その内の一人が態々ここに来てくれたのか?


 彼女は俺へと近づくと優しげな顔を崩す……その表情は何処か悲しそうな顔だった。


「こんなに……痛かったでしょう?」

 

 どうやら傷を心配してくれたようだ。

 というか、実際痛いけどな……。


「水の加護を……ヒール」


 この世界の魔法に詠唱は無い。

 だが、魔法を使う時の癖と言うものがある人がいるらしい。

 この人もそう言った人なのだろうか?

 そんな事を考えつつ、魔法を受けると……。


 不思議な事に痛みが癒えていく……だが、魔法と言っても万能ではない。

 魔法で血を作り出すことはできない。

 つまり、傷を治したが出血多量で死ぬという事もある。

 勿論死という運命を覆す力はない……。


「娘を子供を守ってくれたそうだな」


 治療をされる俺を見て王様はそんな事を口にした。


「え、ええ……」


 俺は彼の言葉に頷く。

 隠す必要はない……そう思ったからだ。


「君は勇敢だ……だが、同時に無謀ともいえるな」


 それは分かっていた。 

 だが、あの時はどうしょうも無かった……そうしなければならない状況だったんだ。

 その結果家族を心配させてしまったのは申し訳ない。

 だが、悔いはない。


「……その顔、間違った事はしていないと思っているのか?」

「はい、僕は確かに危険な事をしました。でも、そのお陰で助けられたものの方が大きいと思ってます」


 これは生きているから言える事だ。

 だから、死んだ時の話なんてどうでもいい。


「……そうか、あれをここに」


 王様はそんな事を言うと兵士の一人が布に包まれた何かを持ってきた。


「昨日、君の事を勇者と言った。だが……同時に警戒しなくてはならない人物でもあった」

「は、はぁ……」


 どういう事だ?


「あの試合で相手を傷つけずに勝利した君の事だその可能性は極めて低いとは感じていたが、これを渡すにふさわしい人物だという事も分かった」


 そういうと受け取ったそれから布をほどいて行く。

 すると中から現れたのは古臭い剣。

 鞘はボロボロで柄も皮がはがれ剥き出しになった金属部分はさびている。

 王はその剣を顔を歪めながら鞘から抜き放つと……。


 光を反射する刀身ではなくやはり錆びきった刀身が姿を現した。


「あ、あの……」

「かつて勇者が使っていたという金属の武器だ」


 それは分かる……。


「神子の力を受け光り輝いたとも言われていた剣だ……今は見る影もない」

「そう、ですね……」


 そうとしか言いようがない。

 というか、そんなジャンク品をどうしたというのだろうか?


「これを君に託そう……」

「え?」


 これはあれか? その錆びた剣を鍛え直して聖剣として目覚めさせろとか言うお決まりの文句か!?


「いえ、それはもう……」

「恐らくは長くは使えんだろう、鍛え直すにももう芯まで錆びている可能性まである……」


 良かったそうじゃないんだな。

 でも、それこそ貰っても困る……。


「だが、我々が新たに剣を打つには失われた技術を取り戻さなければならない。それまでにこれを使い剣術を学べ……勇者の資格がある少年よ」


 王の話がそこで終わると同時に治療も終わったらしいセイレーンの女性は俺から離れていくと王の後ろへと着いた。

 なるほど……剣を学べか……だが待てよ? 確かこの世界には剣術って言うのは……。


「待ってください、その剣術を誰から学べばいいのですか?」

「…………………………………………」


 おい、王様? なぜ何も答えない。


「さぁ、受け取るのだ」

「…………」


 そして同じ事を繰り返す王様に対し、俺は思わず言葉に出そうになった。

 まじか……と……。

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