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11話 ゴブリンの末路と資格を得た少年

 ルティナの護衛であるソルにもらった水薬と薬草で治療をしようとしたロンド。

 そんな彼に対し、ルティナは治してあげると良い、傷口に薬草を塗り込む。

 甘い治療……それを期待する事無く、ロンドはしみる薬に悶えるのだった。


 一方護衛兵であるソルはロンドの発言を嘘だと思っていた。

 封印の準備をしなければそう思う彼が見たのは……無事な姿の子供と宙に浮いた少年の血液だった。

 そう、ゴブリンは少年ロンドの手によって本当に殺されていたのだ。

「という事がありました」


 王の前で深々と頭を下げる兵はソルと言う男性だ。

 彼は昼間見た出来事を王へと報告していた。


「……やはり、魔物を滅したか」


 王は姫が戻って来てから興奮したのは知っている。

 それどころか顔を高揚させ、ロンドと遊ぶの楽しみと言い始めたのだ。

 見た目の所為で同い年の友人が出来ない彼女にとっては良い機会だった。

 ただ、そう考えてはいたのだが……。

 それにしては興奮しすぎだとも考えていた。

 その理由は……。


「ルティナを守ってくれたのか」


 幼くとも女性は女性。

 自分を守ってくれる男性には少なからず何かを感じるだろう。

 そして……。


「あの少年は年の割には大人びている……そうは思って居ていたがまさか、ゴブリンに支配された子供すら助けるとは……」


 普通であれば魔法使い数人を持ってやっと見つけることが出来るゴブリン。

 だが、それをたった一人で幼い少年が退治をしたのだ。


「……かの剣を彼に渡そう」

「は? ですが、あれは……」


 そう提案された側近の男は困った様に表情を歪め……。


「もし本当であれば、いえ、状況から見て本当なのでしょう、でしたらもっと良い物を」

「ああ、分かっている。だが現在では鉱石が見つからん。新しい剣が出来るまでの護身のためだ」


 王がそう言うと彼は納得したのだろう。


「分りました、では明日兵に持たせましょう」

「いや、私が直接渡す」


 それを聞き、ぴしりと音を立てるように固まったのは側近の男だ。


「な、何を言っているのですか!?」

「私はあの少年が気に入った。娘を命がけで守ってくれたのだろう?」


 彼は護衛兵ソルへと目を向け、そう尋ねる。

 するとソルはどう答えた物かと考えるも――。


「状況から見て、恐らく……間違いないかと」

「十分だ」


 うんうんと頷く王に対しぶんぶんと首を横に振る男。


「いえいえいえいえいえ、貴方様は王ですよ!? 確かにあの少年は貴族の息子。ですが、王が直接――」

「未来の護衛に入れ込むのは当然だ……どこぞのしらん男や女に娘は預けられん」


 彼はそう言うと「あいつのようにな……」と呟き遠い所を見るような表情を浮かべる。


「仕方がない事でしょうに……ヴァル様も神子としてのお勤めが……」

「分っている。だが、息子を奪われる私の気持ちが分かるか!?」

「……もし、ルティナ様があの少年の嫁になると言ったらどうするのですか?」


 呆れ顔の側近の男は問うが、それに対してうんうんと頷いたのは護衛兵だ。


「それは……なんとも言えんな」


 王は何ともいえない複雑な表情を浮かべるのだった。









 俺は家に帰って、いや帰る前から後悔をしていた。

 考え無しにもほどがある。

 身体が痛くてしょうがないのだ。

 止血はしたし、思ったより血は出ていなかったようだから問題はない。

 ただ……。


「痛みが……消える訳、じゃ」


 時間が経ってくるとその痛みがだんだんと明確になっていき、今現在気力で帰宅中だ。

 まさかこんなに痛いとは思わなかった。

 誰だよ、ゴブリンが最弱のモンスターって設定作った人は。


 そんな悪態を脳裏に浮かべながらなんとか家に帰ると――。


「あら、ロンドお帰りな――」


 丁度入口に居た母が出迎えてくれた。

 しかし、俺の様子を見てその顔を青くし――。


「――――」


 ぐらりと揺れると彼女は慌てて態勢を整える。

 そして――。


「きゃぁぁぁああああああああああ!?」


 大きく息を吸い込んだかと思ったらいきなり悲鳴を上げ始めた。

 俺はと言えばその悲鳴の所為で傷が刺激され――。


「か、かあさ……」


 まずい、と思い彼女に悲鳴を上げるのを止めさせようとした。

 しかし、それは敵わず――。


 あ、これまじで危ない。


 そう思い浮かべた直後、意識を手放した。


「ロンド!? ロンド!!」


 最後に聞こえてきたのは悲鳴を上げた母が俺の名を何度も呼ぶ声だった。





 俺は死んだのだろうか?

 そう思いつつ、痛みを感じまだ生きていることを実感する。

 瞼を持ち上げると不安そうな姉と母の顔がそこにはあった。


「ああ、よかった……」


 母は俺の両頬に手を当て、嬉しそうに涙をこぼす。

 姉はというと泣きじゃくっていた。


「あなた、ロンドが起きたの! 無事だったわ……」


 心底嬉しそうな声が聞こえ、俺はまだ生きていた事に感謝する。

 もしこれで転生をしてしまったら、また言葉を伝えなきゃいけない人が増えていた。

 そんな皮肉を考えながら体を動かそうとしたが……。


「駄目だよ、寝てよ?」


 姉に促され俺はベッドに横になったまま顔を動かす。

 すると父親は俺に近づいて来た。


「何があった? あの傷は普通ではない治療もされていた様だが……何があったんだ?」


 俺が姫様と遊びに行ったことを知る彼は真剣な顔で俺を見つめ、そう尋ねてきた。

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