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10話 甘い? 治療

 ゴブリンを倒したロンド。

 彼は子供達を保護すべく大人に任せる事にした。

 だが、大人が居る場所まで呼びに行くのは大変だ。

 ならば近くに居るであろうルティナの護衛を呼ぼうと思い彼の考え通り護衛の男性が居た。

 ロンドは彼に子供を託したのだった。

「ろんどーわたしがやってあげりゅ!」


 どうやらお姫様の好感度が上がっているらしい俺は彼女に手当てをしてもらう事になった。

 とは言っても水薬はもう飲んだし薬草を塗り込むだけだ。


「頼むよ……」


 そう言いつつ彼女に頼んだ理由は簡単だ。

 薬草はしみる。

 自分じゃまともに塗れない位はしみるのだ……。


 ルティナが土属性じゃなく、水属性の種族セイレーンであれば魔法でぱっと治してくれるだろう。

 だが土属性の魔法では回復があると言ってもこの怪我は治せな――!?


「あ、ぐ!? ~~~~~!!! ~~!?」


 考え事をしていたらニコニコとしているルティナは容赦なく傷口に薬草を塗り込んできた。

 もうちょっと優しくしてくれ!?

 そう思いながらも痛みに悶えていると……。


「ろんどー? うごいちゃ、め!」


 と舌っ足らずな言葉で怒られてしまった。

 いや、そうは言っても薬草は……。


「ちょ、ちょっと心の準――がっ!? っ!? ~~~~っ!!!」


 ナイフで刺された時も痛いでは済まなかったが、これは別格だ。

 痛すぎて動けない。

 というか、あの時動けたのは単に興奮状態だったからかもしれない。

 俺は涙を流しながら治療してもらい……。


「はい、おわりー」


 満足気なルティナの顔を見てふと思った。


 この子は可愛い顔をして容赦しない……大人になったらきっと性格がきつくなるのではないか? と……。

 いや、流石にそれは無いか?

 頼むからきつい性格の幼馴染と言うのは止めて欲しい。

 前世では女の子の幼馴染はいなかったし……。

 せめて今回は優しい幼馴染と過ごしたい。

 いや、うん……ただの願望だよ。

 そう思いつつ、俺は未だに残る痛みに悶え続ける。

 すると――。


「いたい?」

「あ、ああ……」


 何を当然なことをと思ったが其処は大人だ。

 彼女の言葉に短く返す。


「おくすり、ぬった! もう、だいじょーぶ」


 すると彼女は胸を張ってそう言い。

 それでも俺の様子が気になったのだろう、抱きしめてきた。

 って言うか待ってほしい、今それをやられたら――!?


「~~~~~~~!?」


 案の定俺は痛みに叫び声をあげそうになり、なんとかそれをかみ殺す。

 だが、瞳からは情けなくとも大粒の涙が溢れ出た。





 花畑に向かった兵士は正直嫌な事を押し付けられたと考えていた。

 子供がゴブリンを退治することはできないだろう。

 という事は被害に遭った子供の死体がそこにあるという事だ。

 そんなものは見たくない。

 そうは思いつつも死体は放っておけば病気を撒き散らす原因ともなる。


「ああ、ゴブリン封印の手配、しないといけないな」


 舌打ちをしながらも姫と少年が無事だったのは奇跡かと考えていた。

 そんな時だ。

 彼は何かに躓き花畑へと倒れ込む。


「なんだ?」


 疑問に思いつつ立ち上がった彼は自分が躓いた場所を調べる。

 だが、何も見えない。

 じっと目を凝らすと赤い血のような物が見えた。

 それはまるで空中に浮かんでいるように見え、彼は手を伸ばすと。


 ぬちゃりと冷たい何かが彼に感覚として伝わった。


「ひっ!?」


 思いがけない事に声をあげた彼はその場から一歩後ろへと下がる。

 すると今度は何かを踏みつけ背中から倒れてしまう。

 慌てて起きるもそこにはやはり何もいない。


「な、なななな!?」


 魔物が死ぬことはありえない。

 だが、彼が触ったのは紛れもなく魔物の血だ。

 しかし、魔物が血を流した所さえ余り見たことのない人間にとってはそれは未知なる物だった。


 彼は恐れ四つん這いで花畑を進む。


「ひぃぃぃ!?」


 すると子供の顔が急に現れ思わず悲鳴を上げてしまった。

 だが、慌てて見直すと其処には傷一つない子供の姿。


「あ?」


 何処からどう見てもただの子供だ。

 間違いない、何度確認しても子供だ。

 息をしているかを確認するとしっかりと呼吸をしていた。


「生きている? 子供が……生きて?」


 ゴブリンに精神を冒された子供の末路は分かっていた。

 死ぬしかない……運良くゴブリンを封印できれば話が別だが、子供故人々は油断し被害が広がる事が多い。

 そして、最後には子供自身がゴブリンの腹の中におさめられてしまうのだ。

 だから、死ぬしかない。

 憑りつかれたら殺すしかない……そのはずだった。


「あの血塗れの少年、逃げた訳じゃない? まさか、本当に?」


 この状況で判断できるのはだた一つの可能性だと彼は気が付いたのだった。


「勇者の資格……」



 彼はそう呟くと急いで子供達を抱え、運ぼうとするのだった。

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