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9話 勝利

 ゴブリンと戦うロンド。

 しかし、相手は透明の魔物。

 まずは本体を見つけなければいけない。

 そう躍起になっていた彼は魔法がルティナに向けられた事に気付く。

 それを防いだ彼は気が付いた。

 そう、初めて見た時と同じように最初から観ようとするのではなく自然体で良いと……。

 彼はゴブリンを見つけ、それを倒す事が出来たのだった。

 さて、後は……。

 ゴブリンを倒した俺は取りあえずルティナにハンカチを渡す。

 すると彼女は泣きながら何かが付いた場所を拭っていた。

 透明だから分からないと言いたい所だが、べったりと何かがついてるのが分かるし……。

 なんというか、こう……見た目が見た目だからその……。

 うん、見ない方が良いな。

 いけない気分になってしまう。


「っと……そうだ!」


 俺は無理矢理彼女から目を逸らし、子供達の方へと目を向けた。

 操られた子供が助かる例は少ない。

 何故ならゴブリンが見えにくいからだ……。

 だから、ゴブリンに憑かれていると気が付いた時にはもう遅かったりする。

 例え身体は無事でも精神が壊されていることが多いからだ。


「だけど、今回は……」


 俺は彼らが集まっていた場所へと目を向けた。

 そして、そこへと歩み寄ると……。


「ん?」


 彼らが摘んでいたのは花。

 その下には何か変な石のような物がある。

 何だ? これを掘ろうとしてたのか?


「なんか嫌な予感がするな」


 これは王様に報告した方が良さそうだ。

 だが、その前に……。


「誰かが気が付いて掘り起こさないようにして置こう……」


 気休めかもしれない。

 だが、それでも良い。

 俺は掘り返された土をかぶせその石を隠す。

 後は子供達の様子を確認して家に帰すしかないな。


「ろんどー……」

「どうした?」


 涙声のルティナはいつの間にかこっちに来ていた。

 ハンカチが汚れてしまった事を気にしている様だ。


「ああ、それは良いよ。後で捨てておく」


 布は貴重だ。

 服だって高いこの世界ではハンカチと言えど布を捨てるのには抵抗がある。

 だが、ゴブリンの血で濡れた物を使う気にはならない。

 何かあったら嫌だしな……。


「ぅ……でも……」

「良いから、ほら……それよりももう気持ち悪さはないか?」


 俺が手を出すと彼女は迷いつつもそれを渡して来た。

 にちゃぁっと嫌な音が立つが我慢だ。


「さ、こいつらを運ぶために大人を呼んでこよう」


 そう口にした時だ。

 俺の後頭部にやや硬めのそれでも柔らかい何かが当たった。

 何だろうか? そんな事を考える間もなく俺はぴしりと固まった。


「ろんどーだいじょうぶ? ありがとぉ……!」


 どうやら、気にかけたことで機嫌が戻ったらしいが……。

 ちょっと待ってほしい彼女が何も考えずに抱きついて来たのは精神が子供だからだってのは分かる。

 分かるけど俺は男だぞ!? ついでに彼女は大人と同じような身体だ。

 というか高校生と変わらないんだぞ!?


 その、頭に……。


「いたい、とこ……ない? ぎゅーってしてあげるね?」

「だ、だだ……大丈夫だよ!」


 そうは言っても彼女を振り払う事は出来ない。

 相手の方が大きいというのは当然として何よりの理由が彼女が子供だからだ。

 決してそのお陰で美味しい思いをしているからではない。

 彼女が子供だからこそここで無理矢理引っぺがせばきっとショックを受けてしまうだろう。

 子供を泣かせるわけにはいかない。


「ぎゅ~!」


 いか……ない……って畜生。

 なんか、凄い罪悪感を感じる。


「あ、本当に大丈夫だから、な? それよりも早く大人を連れて来よう風邪ひいちゃうと大変だから、な?」


 俺がそう言うとルティナはやや不服そうに離れてくれた。

 ああ、よかったあれ以上抱きつかれていたら……まじでヤバかった。


 うん……この子とこれからも仲良くしていくには色々とルールが必要だな。

 じゃないと俺の理性は持たないだろう。

 って言うか顔も可愛いし……前世だったら絶対接点が無いだろう美少女だぞ?


 今、理性が保てただけで奇跡だ。

 そう思いつつ俺は彼女と一緒に大人を呼びに行く事にした。


 白を出てから俺達は2人で行動をしていたが、まさか姫様が外に俺とたった二人で出掛けられるはずもない。

 つまり、どこかに護衛が居るはずだ。

 だが、先程ゴブリンが出てきた時には誰も出て来てくれなかった。


 つまり、行き先がこの花畑だと知って得に警戒する必要もないと思ったのだろう……。

 だが、この近くに居るのは間違いないはずだ。


 花畑から出て辺りを探す。

 だが、誰も居ない。

 人がいる方へと進んだ所で俺はすぅーと息を吸う。


「なぁ! 何処かに居るんだろ?」


 俺はそう口にする。

 するとのそりと現れたのは大柄の男。

 彼を見るなりルティナはぽかんとしていた。


「そる?」


 彼はソルと言うのか……彼女の反応と見た所、護衛に間違いないだろう。


「何故、護衛が居ると? それにその傷は?」

「それは後だ! この先の花畑にゴブリンに憑りつかれてた子供がいる、家に届けてくれないか? ゴブリンなら退治した」


 彼はじっと俺を見て大きなため息をつく。

 そして、俺に何かを投げ寄越して来た。

 何だろうか? そう考える間もなくそれが何かを理解した。


 水薬に薬草だ……。


「水薬はすぐに飲め、毒あるかもしれない……薬草は傷に塗り込め痛いのは、我慢しろ」


 彼はそう言うとそのまま花畑へと去って行くのだった。

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