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ははははっハムのおなかがはははははっ

 転倒から復活したものの、へそを曲げたアフロなハムスターに、慣れたようにどこから出したのかサンタクロースサイズの袋からひまわりの種を順番に与えるノーチさん。うん、ひまわりの種よね、よく見たらあたしが知ってるサイズを軽くオーバーしてるわ。ロールパン?


『師長からおやつは控えめにって言われてるんすけどね』


 なーんてぶつくさ言ってるけど、目玉かっぴらいて、ノーチさんの手から奪うように一心不乱に頬袋へおっきなひまわりの種をおぐおぐつぎ込むロボロフスキーは、彼の言葉などそっちのけである。


『……これは余のおやつなのじゃ……誰にも渡さぬ……余の、おやつ……! 日々頑張る余への、ご褒美なのじゃ……!』


 溢れる涙、膨らむ頬。次第にひまわりの種によってその体型をブクブク変形させていく様子を見て、なんていうか、医者って色々大変なんだろうなって思った。

 貯め込んだひまわりの種をえっちらおっちらと

愛車こと石臼に吐き出しに行ったイワンのおばあさん。最初から袋そのまんま渡せばいいじゃないって思ったけど、習性らしいから無理みたいね。仕方ないから待つことになったのですが。


「それにしても、かなりファンキーなおばあさんね」


 なんちゃってF1妄想した時はイケメンな老婦人って感じにしちゃったけど、医者って聞いてたし、あの白ドラゴンの奥さんやってるからもうちょい落ち着いた系だと思ってたわ。まあアフロ生えたネズミとは確かに言われていたけどさあ、ほら、見た目と中身は違うってよくいうじゃん。


『初対面があれじゃあなあ』


 ぽろぽろりんとノーチさんは納得したように頷いた。普段は違うのかな。


『いや、大体ああだな』


 ああなの!?いつも!?


『さすがに院内をドライブしたり、箒ブラストぶっ放したりはしねえよ。患者が逃げる。そして逃げ出した奴らから噂が広まりゃ患者が来なくなる。すると経営がヤバくなる。人件費削減で仕方なくスタッフリストラしようにも更に噂が広まるからできねえ。そうなりゃばあさまは貯金切り崩して俺らに給料支払わなきゃならねえ。こんなん続かねえよ。結果、俺らもばあさまも路頭に迷う。マジやべえ』

「現実的ね」

『医療だって立派なビジネスだ。どこで誰が見てるか分からねえ。接客態度は気をつけねえとな』

「あたし達轢かれそうになったり箒ブラストされかけましたけど」

『夕飯奢るからチャラにしてくれ』


 懐から出されたのはブラックなカード。

 ごめん、看護師ってこんな儲けてるの?つーかこの世界にもクレジットカードあんの!?


『あるに決まってる。俺はカード派だ』

「何でこんなところはリアルなのよ!?」


 あたし今金貨銀貨銅貨しか持ってないわよ!元の世界じゃ、うちお小遣い制じゃないし必要な分しかもたされなかったの。高校はバイト禁止されてるし、これでも進学校よ、成績ある程度良くないと唯一許可される年末年始の郵便局のバイトも出来ないのよ!ええ、お察し下さいですわ!!

 そんな中、おげおげと頬袋からひまわりの種を吐き出す音がかすかに聞こえてきた。うーん、イワンみたいにアフロに最初から収納すれば良いのに。それかあれは遺伝じゃないのかしら。


『あんなだけどよ、俺らはばあさまに頭上がらないんだぜ』

「まあ院長だもの、雇用主よね」

『ああ、何せ雇用に漏れた俺らをばあさまは雇ってくれたからな』

「ええー? 看護師は引く手あまたでしょ」

『意外とそうでもなかったりするぜ。魔法や魔術で一般人はある程度処置できちまうから』

「なーるほど」


 てっきり何か問題でも起こしたのかと思ったわよ……。てか医療は魔法と魔術使わないのかな。


『ああ、基本使わない。魔法魔術は本人の回復力を増長したり調整するもので、医学医療はその回復力の補佐だ。魔法魔術は必要な力をとにかく注ぎ込んでやればすぐに治るが、医学医療は早い話当人の自然治癒力を手伝うものさ。似ているようで違う。そういうのが嫌なやつが病院に来る』


 なんかよく分からないけど、西洋医学と東洋医学みたいなもんって思えばいいのかな?なら前者の方が効率良くない?


『魔法魔術で一気に治すと遺伝子に影響して成体にも関わらず変態が促進されたり、臓器の機能不全を起こす副作用があるんだ。軽症や慢性的なもんならちみちみやるから大丈夫なんだが、急性的なもんや重体だのオペだの一度の使用魔法や魔術量が多いやつはそれこそ大魔法使い(プロ)が治癒させても副作用は出る』


 変態って……ああそうか、ツチノコから色んな種族になるんだっけ、ここの人達。

 アフロなツチノコだったヒヨコのイワンを横目に見れば、奴は鼻歌まじりにアフロの描かれた手鏡を覗いてアフロのお手入れをしていた。あんた男子高校生か!?

 ま、確かに副作用は恐いわよね。なるほど、毒と薬が紙一重なのと同じなわけか。


『しかし採用試験で問題あるやつ落とすのは分かるが、以前は男の採用を避ける傾向があったんだよ』

「なんじゃそりゃ!?」


 あたしの反応にぼりぼりと頭を掻くノーチさん。


『まあ、色々あったんだよ。なんでも女性の方が気が利くからとかなんとか色々』

「うふふ、あたしガサツな女子でーす」


 こうみえてあたし理系クラスだから男子ばっかなんだけど、何だかんだ女子より男子の方が何気に気遣い出来るの多いのよ。そして女子の女子力に反比例するオヤジ力の高さ。JKの最終進化形態ってオッサンなの?それともうちのクラスだけ!?てかこれ単に育ちの問題じゃん、はい解決っ!!


「でも性別で雇用が左右されるなんてね。あたしの世界じゃそういうの禁止する法があるわ。まあ昔はそうでもなかったみたいだけど」

『あたしの世界……? まさか、あんた“ワシリーサ”か!?』

「そんな登場人物はいないわ!!」


 驚愕するノーチさんに、もはや条件反射化している返しが飛ぶ!



「だから違うって!? エレーナでもパリューシャでも無いわ!」


 あーもうこの世界の人達なんで揃いも揃ってワケわからない名前で呼んでくるのよ!?


『……確か、昔聞いたことがある。こっちは卵生だが、別世界じゃ胎生つって女性の身体から子が産まれるんだよな。それが原因で女性が神聖視されたり、逆に下等な存在扱いされたりする世界があるって』

「あー、多分あたしのとこの世界です」


 女性はかつて太陽だった。平塚さんのセリフよね。今でこそ太陽神は男性イメージのとこ多いけど、太陽を女神とする信仰は世界各地で元々見られていたのよね。日本がその例だし。でもなんであんな男性優位な社会になったんだろ。今度世界史のせんせーに聞いてみよ。


『だから前のワシリーサは驚いていたなあ。女性が男性と対等以上に扱われることにさ。ま、仕事とかで俺らみたいに男性が肩身の狭い思いをすることにもだが』


 なるほど、胎生なら妊婦さんになっちゃう場合があるから雇用を渋るような考え方が出てきてしまうけど、卵生なら孵化作業は雄がやったりする動物もいるし、性別関係ないからそこまで問題にならないのかな。

 うんうん、それにセクハラとか女性が嫌な思いすること多いから結構問題になるけど、よくよく考えれば逆に男性も女性から嫌なことされないわけじゃないもんね、こちらは何故かあんま話題にならないけど……。

 ――ん?“前の”ワシリーサ?


『恐らく、あんたも前のやつもその世界の管理者が男性だったんだろ。この世界も元は男性だったが、今は女性が管理者だ。生き物ってのは支配する側になると自分側が有利になるようについ采配しちまう。管理者の思想は世界に大なり小なり反映されるからな』


 は?ちょ、ノーチさん、なんかめっちゃ重要なこと話してない……?世界の管理者って何?


『昔より改善はされたぜ。ばあさまが管理者に直訴してくれた。だから、今は俺らが就活してた時みたいに性別で引け目を感じることはねえ』

「まって、その、」

『確かに雇用情勢が変わったなら、もうばあさまのとこ辞めて転職しても良いんだがな。俺ら全員一致でばあさまのところに半永久的に勤めることにした。これでも返し切れねえけどな、恩は』

「すごく良いこと言ってるけど人の話聞けい!?」


 あたしが訊きたいのはそれじゃなーい!

 何よ、管理者って。それに直訴するって。


『……あとでばあさまに聞きな』


 ふ、とまたまたニヒルな笑みを溢すノーチさん。片目隠すな、中二病か。


『ただ気をつけろよ。質問は何でも良いわけじゃねえ』

「何なら良いのよ」

『“外”だ』

 なにそれ。異世界についてってこと?でもこの世界について聞けって言ってんだから、それともあんまり聞いたらだめなのかな?


『必要以上に知れば、早く歳を取る。もっともあんたが本当にワシリーサならば、祝福が助けてくれるだろうけどな』

「祝福?」

『称号の代わりに、ワシリーサに与えられるものさ』

「あのウロコカード?」

『さあな』


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