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さんまの

 そんなわけで逃げようにも裁判所まで戻ればSPらしき方々に仰々しく出迎えられ、イワンと共にホテルへ。

 まて、あたし16歳だからね?未成年だからね?あと全年齢対象だからね?何がとは言わないけど。

 ガッチガチにガード固められたホテルから脱出なんて出来るわけなかった。しかも元の世界ならめっちゃ高級なホテルだわ。

 シャンデリア。ロビーとかにものすごいシャンデリアがぶら下がってる。おいくらかしらなんて無粋ね……。

 部屋にはどこまでも沈み込むスプリングのベッド。アメリカンスタイルなどでかいテレビジョン。何であるんだろう異世界なのに。電源入れたら普通にニュースが流れた。チャンネル変えたらアニメも映った。魔法少女じゃなかったけど。

 他にもすごいのあったけど、ベッドとテレビしか覚えてない。

 語彙力無くすくらいすごいホテルでした。

 あ、もちろん個室です。イワンとは別室だから!!




 さて、朝になったのでドコカシラ共和国を出発するわけですが。


「え、何で行くって?」

『何って……飛行機』

「いやいやいや、飛行機という名称が異世界にあるのもどうかと思うけど、どう見たってこれ……」


 滑走路と言われた広い競技場みたいなとこに佇む影。

 鋭い鉤爪を携えた前足。柔らかな羽毛に覆われた上半身。たくましい獅子のごとき下半身。その引き締まった尻からひょろりと生える蛇。それらを統括する首は凛々しい鷲。

 ファンタジー定番生物、グリフォンである。


「コケコッコー」

『お乗り下さい勇者様だってさ、ワシリーサ』

「だからそんな人物いないから! 取り合えず通訳ありがとうって何、グリフォンの鳴き声ニワトリ!?」


 何で鷲なのにニワトリなの?


「コケーコッコ」

『当便は間も無く出発致します、命綱をお忘れ無いようお付け下さいだって』


 シートベルトじゃなくて命綱!?やだ、怖い!!


『大丈夫、すぐ着くから。飛行機に乗った方が早いんだぜ』

「ひゃうううん……」


 ヒヨコの差し出されら羽毛を掴んでグリフォンに乗る。羽毛だか体毛だかよく分からん境目に乗ることになったけど、座り心地は良い。

 そう思ってたら、ひょろりと蛇が巻き付いてきた。ひえっ!?


「コココ、コケーコッコ」

『それが命綱でございます、勇者様。しっかりとお守り致しますからご安心を、だってさ。頼もしいだろ。さすがは飛行機、乗り物の中で最も事故数が少ないんだぜ』

「いやいやいやいやいやいやああああああああ!」


 ちょ、ちょ、へび、へび、へびむり……!!


「コオオオケエエエエエ!!」


 なんかグリフォン叫び出した!?いや、へびなんとかして!!

 パニックになるあたしの周りでなんか風が、風が!ひえええええ!!てか制服のスカートめくれるわ、やめい!!!


『あ、これが魔法な。今みたいに唱えるんだよ。飛行するから気圧とかの影響受けないように風魔法で飛行機の周りを囲むんだ』

「ふくぐかががががががへ、へび、へびいいいいいい! ぶくくくく……」

『国境付近にじいちゃんがいるから、そこ越えたらいったん魔法から魔術に変えてもらう。魔ドロッコシイネ国に行くのに魔法を使うのは無礼に当たるけど、じいちゃんの前を魔術使って越えるわけにはいかねえのさ』

「べぶぶくくく……」


 出発前から泡吹いて気絶寸前のあたしに構わず、グリフォンは翼を広げた!!!へびが!!ひええ!!!まって、身じろぎしてたら下着が股間に食い込んだ!!!あ、これやばいやつ!!!痛い!!!直したい!!!絞まる!!!

 立ち上がり、雄叫びと共にドドドッと駆け出すグリフォン。尻が!!尻が!!揺れる!!!やめれ!!!刺激やめて!!!へびが絞まる!!!違う!!!股間!!!股間が!!!痛い!!!


「コケエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」


 次の瞬間感じたのは。ふわっとあのエレベーターに乗ったような浮遊感。視界から建物や木々が消えていく。


『離陸成功! しばらくは空の旅を楽しもーぜ』


 イワンの嬉しそうな声とグリフォンの元気な声が聞こえる。

 風魔法のせいか、別に寒くないし、飛んでいるのに風が顔に当たったりしない。

 あんまりにも股間が痛いので、へびはもう無視してイワンが見ていない内にこっそり直そうとふと足元を見た。

 うん……取り合えず、制服の下に半パンジャージ穿いといて良かった……。

 そうよねーよく考えたら床無いんだから、視力ものすごく良かったか見えちゃうよねー下から。

 ほら、魔法で思い出したけど、魔女が箒に乗って配達したり、空飛ぶ虫愛づる姫様が出る某アニメ。あれよく見ると色々見えてるらしいのよ。クラスの男子が言ってたの。まあ視線がそこに行くのは分かるけど……。

 しばらくすると、森が見えた。あれもしかしてあたしが落ちたとこかな?


『あの森を越えて少し行くと国境だ。じいちゃんあのへんの地下に住んでるから、気をつけねえと』


 なーるー。だからあの放屁合戦で地面から出てこれたのね。

 そうこうするうちに、そろそろ魔術の準備をってイワンが言い出した。

 切り換えると言ってもスイッチみたいに上手いことなってないんだから、どうやるんだろ。この高度だし、風魔法切ったら危ないんじゃない?一回着陸するのかな?

 そうしてくれると助かる。ちょっと慣れたけど、やっぱへび無理。


『飛行機は目的地まで基本は止まらねえ。だからこのまま切り換えるんだ』


 まじかああ!?へびこのままなのね。くすん。

 そんなことやってるうちにどうやら国境付近に着いたみたい。イワンがアフロの中から巾着を取り出すのが見えた。

 ……まって、アフロが収納スペースなの……?


『魔法は過程、魔術は結果って前言ったよな』

「え、ああうん」


 うっかりそよぐアフロを眺めていたから慌てて頷いた。

 そうね、魔法は理論がなんたらって言ってたわね。


『魔法はさっき飛行機が風魔法使ったみたいに、構成式を唱えるんだ』

「こーせいしき? ええと、呪文のこと?」

『ジュモン? ああ、嬢ちゃんの世界ではそう言うのか』


 ヒヨコのイワンがアフロをなびかせて頷く。


「いや、あたしの世界では魔法なんて物語の中のものだから、よく分からないけど」

『ふうん。まあいい。まだ国境越えてないし、いい機会だから魔ドロッコシイネ国に入る前に一つ魔法を見せてやる』


 まじ!?やったあ!

 ていうか、空飛んでる状態で魔法使えるのねー。杖とか使うのかしら。


『杖? ご老人が使うあれか?』

「違うよ。魔法を使う杖」

『……嬢ちゃんの世界では無生物のはずの杖が理論や証明を助けてくれるのか……?』

「いやいやいや、そんな便利なものあったら世の高校生は苦労しないわよ!」


 おっどろきー!この世界では杖はあたし達のとこと同じ扱いなのね……。憧れたのになあ、杖で呪文唱えて決闘とか。


「コケッコー」

『おっと、早くしねえと国境越えちまうか。んならいくぞ』


 おおっ!?始まる!?


『期待すんなよ。基礎魔法だからな。――“其は始まり、其は無より流転(るてん)する、()なる全てを満たす白、数多を照らす(しるべ)となれ”』


 こ、これが呪文……いや構成式?だっけ?

 イワンの言葉が言い終わるとすぐにぼんやりとした光が現れた。小さなビー玉くらいの光が生き物みたいにふよふよ浮いてる……!ファンタジー!!


「す、すごい……!」

『これは光魔法基礎だ。ちみっこいが、光の強さ自体は調整できる。灯りにも狼煙(のろし)にも使えるぜ』


 説明をしてくれたイワンは基礎魔法ですごいって言われてもなあって言ってたけど、まんざらでもなさそう。

 それは置いといて。


「今の呪も……じゃなかった、構成式を唱えればあたしも魔法使える!?」


 そりゃ聞くでしょ。異世界に来たんですもの、魔法の1つや2つ使えなきゃ!


『結論から言えば、使える』

「やったあ!!」

『ただし、嬢ちゃんが見つけ出さないといけないぜ』


 ん?見つけ出す?どゆこと?


『魔法は過程を重視する。つまり、構成式を唱えて発動する結果を目指してそこに至るまでの道筋を生み出すものだ。だから現象の仕組みを理解し、それを自分の言葉で表さなくちゃならねえ』

「自分の言葉?」

『そうだ。だから俺のさっきのやつは俺が唱えるから発動する。俺が自分で見つけ出した構成式だからだ。他人が、それこそ嬢ちゃんが唱えても魔法は発動しない』

「なんで?」

『何でって……自分でも意味が分からねえことを話して、それ相手は理解出来るか?』


 そりゃ無理よねえ。

 そう言えば、イワンはアフロを掻いた。


『自分が理解した上で説明をしなきゃ相手にわかってもらえねえだろ? それと同じ。ただデタラメに唱えてんじゃねえんだ。意味のある言葉を使わなきゃ、何も起こらねえ』


 そ、そういうものなのか……。


『だから人によって同じ魔法でも唱える言葉は違う。やたら長い構成式になる奴もいれば、めちゃくちゃ短い奴もいる。さっきの光魔法も“No.1”って唱えるだけで発動させる奴いるぜ』

「さっきあんたが言った言葉が“No.1”に短縮されるの!?」


 No.1って。ホストかキャバ嬢か!?


『ああ。いかにスマートに無駄なく構成式を構築出来るか。それが魔法なんだよ』

「ほええ……」


 あーそりゃ向き不向き出るわー。センスいるでしょこれ。


「コケコー」

『お! 国境を越えましただってさ! じゃあこの流れで魔術使うからな』


 きゃー!今度は魔術ね!またなんか唱えるのかな?

 そしたらイワンがさっきアフロから出した巾着から何か小さい石ころを出した。なにこれ、小川の石?


『魔石だ。魔術は魔石の組合せで発動させる』


 黄色の羽毛に乗せられた石ころは、形も大きさも不揃い。よく見たら色とりどりで宝石の原石みたいね!きれーい!!


『風の防御魔術は……えーと、これとこれとこれだな』


 3つくらい羽毛で器用に摘まむと、残りの石を巾着に入れちゃった。羽毛に乗せてる3つの石は全部緑系統の色ね。これで魔術発動させられるの?


『ああ。発動は風の魔術だから、風と相性の良い色の魔石をこうする』


 イワンはそのふわふわした羽毛で石を握った。

 握ったとたん、羽毛が光る!!まぶしっ!!

 うわ、これあれじゃない!?あのシーン!バから始まる滅びの呪文のシーン!!ええと……、あー!早く言わないと光が消える!!!ええい!


「バヤリィィィイイイッッス!!!!!」

『……魔術は構成式唱えなくていいからなー』


 あたしの渾身の叫びの後、イワンの間延びした声が聞こえた。




 光が消えると、さっきまであたし達の周りを囲んでいた風が無くなって、なんか透明な空気の流れに包まれた。

 空気の流れってどう風と違うのかって……なんかね、空気が滝みたいに上から下へ流れてあたし達を包み込んでる感じ。風魔法の時は竜巻みたいにぐるぐる囲んでるみたいだったの。

 なんていうか、風の魔術の方が穏やかな感じ。


「魔術は魔石使えば誰でも使えるのね」

『そうだな。組合せさえ覚えちまえば、ガキでも扱えるぜ。魔術は魔石の組合せ次第で応用が効くんだ』

「魔石かあ。いいなあ、あたしも欲しいかもー」


 こっそりねだってみる。でも魔石なんて名前だし、希少だよね。それにきれいだから、使うのもったいなくなりそう。


『カード以外にまだ魔法が使えない嬢ちゃんなら、慣れるまでは魔術使う方が良いかもな。魔ドロッコシイネ国は魔石発掘の有数地だ。土産物屋で腐るほど売ってるから帰りに買ってきな』


 売ってんのかよ!?しかもお土産屋さんで!?

 思わず心の中でツッコミを入れてしまったじゃない!!ていうかお金……一応勇者だからって旅立ち前にもらってはいるけど。

 お金の単位よく分からないのよね。金銀銅の順に価値が下がるのは教えてもらったけど。


『そんな高くねえぞ。魔石のさざれ石の詰め合わせが1袋銅貨1枚だし』

「ごめん、相場が分からない」

『あーそうだよな。一応さざれ石ってのはいわゆるくず石扱いだから、少なくていいなら土産物屋以外の魔石売り店だとタダでくれるとこもあるぜ』

「まじか!?」


 イヤッホウ!如月カンナ16歳、JK魔術士ライフも夢じゃない!?え、さっき魔法魔法って言ってなかったって?細かいこたあ気にしないのがカンナさんよ!!


「きゃー最高じゃない! 早く魔ドロッコシイネ国へ行くわよ! 待ってなああああああああ魔石いいいいいいいい!!!」

『……俺ら魔石買いに行くんじゃねえからな』


 呆れたようなイワンに同意するみたいに、グリフォンがコケーと鳴いていた。

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