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魔王になったあの娘のために(プロトタイプ)  作者: 団子の長
第3章・牙と爪は誰が為に
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7.ゲルダ大平原制圧開始

 草原を駆ける。目に映る動く物全てより速く。なお速く駆ける。

 そうして走っていれば遠くで目に付く存在。


『ギギギギ』


 暗緑色の小柄なデミヒューマン、ゴブリンの集団。30から40程度、近隣のワービーストでも十分対応可能な物。2・3人の戦士がいれば倒しきれる程度ではある。


『ゴォオオオ』


 しかしその近くに30はいる巨体のオーガの集団。そしてそれだけではない。


『ギャウ!』『オォォウ』『プギュウ』


 ゴブリンの頭が犬になったような『コボルト』、怪腕のトロール、醜いオーク。

 計5種のデミヒューマンの集団が付かず離れずの距離で行進している。全ての頭数を足せば100を越えている。これはこの平原にきて初めて見た集落では抵抗も出来ずに呑み込む規模の脅威である。

 当然捨て置くわけがない。背からポールアックス『破壊者の隕星(ヴァジュラ)』を引き抜き構える。


「・・・行くぞ」


 俺の声に呼応してヴァジュラは白かったその姿を黒に染める。それを視界に収めながら敵集団に向けて走る速度を上げる。流石に距離が縮まり、相手が俺の接近に気付く。


 まあ、あまり関係ない。



 相手が行動を起こす前に異種集団の中央に目掛けて疾走。擦れ違う相手はヴァジュラで斬り裂きながら進む。1体斬り裂く度にヴァジュラに引っ付く物がある。しかし今はそれを無視して走り抜ける。


 そして中央に到達、侵入した時に斬り殺していった敵は種類問わず割断されて地に沈む。

 集団全体が俺に気付いたのを尻目にヴァジュラが回収していた魔石、刃に取り込まれていた魔石を吐き出させて容量の大きい魔法具の袋に入れていく。

 全て吐き出させてから再びヴァジュラを振るう。中央から螺旋を描くように疾走しながら縦横無尽に振るヴァジュラの刃が抵抗もなく敵の肉体を割断していく。


 相手が足を一歩踏み出すよりも速く駆けて骸に変えていけば、コーラルが用意してくれた時計が1分を示す針が刻む前に殲滅が完了する。背後を見ればあれだけいた集団は全て地に落ちている。


「魔石以外は必要ない―――」


 最近知ったヴァジュラの能力。特定の物質をその内に取り込める能力。

 それを利用して斬り裂いた相手から魔石を回収。時間を掛けること無く100を越えていたデミヒューマン全てからの回収も完了していた。その取り込んでいた魔石も吐き出させて袋に落とし入れていく。

 ヴァジュラを背に収め、拳を握る。最後の処理をする。


「―――壊れろ」


 骸が広がる空間目掛けて拳を振るう。その拳が空気をたわませて、貫く破裂させる。空間に漂う目に見えない魔力や気力の素となる物質さえ炸裂させながら終には『世界』その物を貫く感触が拳に返る。


 振り抜ききった拳を中心に視界に入る空間に波紋が広がる。そして刻まれる『罅』、それに留まらず『亀裂』は広がっていき、それは目の前に広がる骸を全て包み込むように空間に奔る。


 ―――空間が砕け散る―――


 世界が消えた先にある『何か』が裂け目から一瞬覗き、それと干渉したデミヒューマンの骸が『形』を保てなくなり、その身を砂のように崩壊させていく。血も、肉、も骨も。何もかも、『瘴気』さえも崩壊すれば跡形も無くなる。そこには砕けた空間だけが広がる。


 ―――砕けた世界が復元する―――


 まるで進んだ時計の針が戻るように砕けた世界の欠片が元に戻っていく。それは破片、亀裂、罅、波紋と順を追って行けば最後にはただの世界が戻ってくる。


 先程まであったデミヒューマンの痕跡は何一つ無くなり、世界が崩壊した形跡も無くなる。目の前に広がるのは青い空の下に広がる美しい草原だけである。


「・・・次だ」


 魔石はまだまだ必要になる。それを回収すればこうした()()で後片付けをすればいい。多少の死体なら勝手に土や他の生き物の餌になるだろうが、今回発生する死体の量はあまりに多くなりすぎる。それが汚染に繋がるのを避けるために皆と相談して随時破壊する事が決まっていた。


 少し走れば次の獲物が見えてくる。

 早朝から殲滅を開始して10時間。既にゲルダ大平原の1割近くは殲滅完了している。見落としが無いように虱潰しに駆け巡っているせいで少々時間が掛かる。だがあまり速度を出し過ぎるとコロニスの天山に刻んだ破壊痕が残ってしまう。それは環境を破壊してしまうし、その速度で敵と衝突すれば魔石も共に砕けてしまう。だから抑えて走らなければならない。


「殲滅と魔石回収を終わらせ次第、皆の所に行かないとな」


 昼を過ぎ、傾き始めた日を背にしながらゲルダ大平原を踏破していく。



 ◆◆◆



「―――すごい」


 シルフィーは今、空を飛んでいる。


 眼下には広大な草原、上には何処までも続くような青空。2つのアオ色が風を斬り裂きながら飛翔しているシルフィー達の後ろへとすごい速さで流れていく。何度見ても感動が胸を突く光景。


『現在高度500。速度1200。シルフィー様、コーラル様。苦しくはありませんか。コッペリアは快適をご提供できていますか?」


「はい、私は問題ありません」

「シルフィーも大丈夫です」


 コッペリアさんの巨腕、『踊り子の手(ボレロ)』がシルフィーとお姉様を抱きかかえて、その背には鋼鉄の翼『白鳥の湖(オデット)Ψ(プシー)』が広がり両翼合せて12枚の刃の羽が震動している。ボレロの肘にある金属筒の炎と圧縮空気の噴射、それと翼による大気と魔素への干渉。それにより高速飛翔しながらもシルフィーとお姉様には速度や向かい風、高度による息苦しさは一切無い。


『魔法具【おさんぽちゃん】と座標情報連結。目標地点に到達します。着陸しますのでお気を付けて』


 ボレロの噴射が小さくなり、鋼鉄の翼が角度を変える。斜め前に沈むように地面へと向かっていく。目に見えて速度が減少すると地面と平行になるように飛翔していたコッペリアさんが身体を上げていく。

 地面が更に近くなっていくとボレロの噴射は完全に停止、翼の推力のみでシルフィー達を含めた自重を浮かせて緩やかに草地に着陸した。


『―――到着しました。【刻印(マーカー)】を打つ場所は現在26完了。この地点を含め残り956となります』


「有り難う御座いますコッペリア様。ではシルフィー様、詳細な位置を御願いします」


「分かりましたお姉様」


 日の下で赤紫に輝く黒髪を靡かせたお姉様が、周囲に漂っているシルフィーの目には見えない精霊を活性化させて魔法の起動状態に入る。

 活性化した精霊が可視化する。お姉様の準備が整った。シルフィーも自分の務めを果たさねば。シルフィーの3つの加護『地鎮の血脈』『天恵を知る瞳』『魔法適正』を連鎖発動させる。


 変質した『地鎮の血脈』がミルドレッド以外の大地に干渉、瞳に大地に流れる地脈が浮かび上がる。それを更に地の属性に寄った『魔法適正』で魔法で最も強く干渉できる位置を見つける。


「ここの・・・、深さは・・・6。6mですお姉様」


「了解しました」


『構成した魔術式を呼び出します。どうぞコーラル様』


 コッペリア様が手袋を外してシルフィーが指し示した地点に片手を向ける。手の平にある青い円から光線が放たれその地点に当たる。

 そして浮かび上がる何重にも重なり絡み合い平面ではなく球形になって現われる『立体魔法陣』その設計図。コッペリアさんが作戦に必要な魔法の魔術式を解析、グリムノーツさんが開発した立体多重式を原型にして魔法陣を設計、一抱えもある光の球体が今この場所の空間に写し出している。


「では描きます」


 お姉様の瞳の銀色が強く発光する。それに合せてコッペリア様が写し出した設計図に沿ってお姉様の操る魔力が魔法陣を描いていく。お姉様自身が自力で描くのは不可能と言わしめる程の、シルフィーでは構造さえ理解できない複雑な魔法陣に力が宿っていく。

 そしてシルフィーの務めはまだまだあります。


「お姉様、次の魔法式は4でお願いします。それを過ぎれば10のままです」


「4ですね・・・描きました、魔力を戻します」


 シルフィーの瞳に2つの加護と繋がった『天恵を知る瞳』に、球形に構成される魔法陣を1つの地脈として認識させて陣を描く適正魔力量を割り出す。そして事前に決めていた数値でやり取りを行う。

 1つの魔法陣に掛かる時間はおよそ20分。全てを終わらせるには半月以上は掛かる作業。しかし誰か1人でも欠けていたら数年単位の時間が掛かる筈だった作業。それをシルフィー達3人の協力によって高速で終わらせていく。


「―――出来ました。では地脈に沈めますのでシルフィー様、お願い致します」


 魔法陣が完成、20分を少し切る。つまりそれはこの作業をまだまだ短縮できるという事。


「では呑み込ませます。・・・『大地に流れる竜よ、我が血の呼び掛けに応えてその力を片鱗を見せよ』」


 地脈から顎が駆け上がる。それが草地を貫き魔法陣を呑み込む。そして再び地脈に還っていく。魔法陣の表面に施されていた防護の魔力が地脈まで消えずに届けるための壁となると同時に固定する楔にもなる。


「・・・地脈まで届きました。楔も機能しています」


「分かりましたシルフィー様。・・・少し休憩を挟みましょうか、お疲れの御様子」


 お姉様に言われて自分の呼吸が乱れている事に気づく。思っていた以上に加護の連鎖発動は消耗する。


「・・・シルフィーはまだ大丈夫ですお姉様。地脈を用いて多少は体力を回復させる事が出来ます。・・・それよりもお姉様は大丈夫なのですか?」


 体力の回復は嘘ではないが、如何せん燃費が悪い。地脈の竜を地表に上げる工程が無ければ完全に体力の無駄でしかない。

 しかしそんなシルフィーよりもお姉様の方が消耗は激しい筈。発動の為の魔力はお師匠様が集めている魔石を使うので問題は無いのですが、それでも魔法陣を刻むのにも魔力は必要になる。それがあの様な複雑で大きい魔法陣なら尚更。


「・・・そうですね、流石に少々疲れました。御食事も兼ねて休憩にしましょうか」


 そういってお姉様は優しくシルフィーの頭を撫でてから、食事を広げられる場所を魔法で作っていく。それにコッペリア様も力を貸している。

 言われなくともそれがシルフィーを気遣っての事だと理解出来る。少し歯痒さを感じる反面、その優しさが嬉しくもある。

 正直あと2つもこの作業をすれば意識が飛ぶであろう事が分かる。もしそうなったら逆に時間を取る事になってしまう。それは足手まといに過ぎる。

 でもやはり、皆様に着いて行けていない自身が情けないとも感じる。


「・・・お姉様、コッペリア様」


「何でしょうかシルフィー様。今回のお料理はコッペリア様が飛行中に捕らえた野鳥になりますよ」


『可食部は多く、栄養価も申し分ありません。食用に適していたと判断しました」


 コッペリア様が熱湯を沸かし、人間大の2対の翼を持つ鳥型モンスターを下処理してお姉様の作業を率先して手伝っているのを見ながら、如何しても拭いきれない想いが口を出る。


「シルフィーは・・・もっと早く、・・・強くなりたいです」


 シルフィーの周りの人はお師匠様を筆頭に凄い人達ばかり、そして更に凄くなって行っている。その中で自身が比べる事自体おこがましい程に見劣りしている。しかしそれは最初から承知の上、理解していた。しかしそれでもシルフィーは―――


「―――ダークを倒せる程の力が欲しい、ですか?」


 お姉様が微笑みを浮かべてシルフィーを見ている。


「大丈夫ですよ、シルフィー様。貴女は強くなっています。当初の頃と比べれば格段に、です」


「ですがっ」


 強くはなれた。しかしそれでも現状脅威度の低いモンスターやデミヒューマンにしか勝てない程度の強さ。これではダークを殺すなど夢のまた夢。自身の無力さが日に日に募るばかり。

 もっと、もっと力を、と思って止まない日々。・・・だからといって変われるわけでは無い日々。ダークの魔の手が更に早く伸びている今の現状。

 ・・・間に合わないかもしれない。


「―――ですがシルフィーは、もっと力が欲しいです」


 でなければシルフィーが戦えるようになる前に、全てが終わってしまいそうで―――


「では今回の事であれを頂きましょうか」


 湯に通して羽を毟り終えた野鳥を手際よく解体していくコッペリア様。その様子を確認するとお姉様は調理器具を広げる。


「・・・あれ、とは何でしょうか?」


「この国に『王』が5人居るのは御存知ですね? そして彼らが管理している『守護聖獣』・・・つまり精霊武装の存在も」


 当然知っている。王族に施される教育には他国の文化や種族性質、所持する武力や英雄級の人物の存在などもある。

 ワービーストの『王』に実際のところ権力は無い、という事になっている。国全体に対して法を布いている訳でも、税を徴収して国政を行っている訳でも無い。領土や宮殿はあれどそれは仮住まいに近く、あくまで2年に1度ある東西南北の地方に分けられて開催される武闘大会の勝者に贈られる栄誉と言った物である。そして大会で選出された『王』には王庭にある宮殿への居住と、百花から輩出される優秀な花嫁候補を授かる権利が与えられる。

 それは強さへの賞賛と栄誉の象徴ではあるが、それと同時に『王』には責務が課せられる。


 護国の象徴であり、外敵への戦力兵器としての側面を持つ『守護聖獣』の管理である。


 それは精霊武装であるが故に強力無比な武器ではあるが、持ち主は武器に宿る精霊が選ぶという面があり、十数年間も使い手が現われないといった事もある確実性に欠けた武器でもある。

 『王』はそれを管理して、それと同時に使い手を確保して次代の英雄を育てるといった役割も持つ事になる。


「はい。東のハナズオウ、西のリンドウ、南のカクタス、北のヒイラギ。そして中央のガジュマル。それが今の10年以上も不動の5人の『王』。そして彼らが管理下に置いている5つの精霊武装も知っています」


 中央の『王』は唯一強さで選ばれない特異な王。その役割は特殊な加護を持って生まれた子供達の管理と、『守護聖獣』に対応する子を四方の宮殿に送る事である。

 おそらくヤナギ様はこの中央の宮殿から西()の宮殿に送られた筈。あれだけ強力な『風』を宿しているのだからそれが自然である。

 次代の西の守護聖獣ヴァイフーの使い手、『破邪凶獣』として。


「シルフィー様。貴女にはその内の一振り、()()()()()()()を手に入れて貰いましょう」


 ―――え?


「あれはシルフィー様と相性が良いですし、今は使い手も存在しないようなので事が済むまで借りましょう。ワービーストの性質を考えれば現われるかどうかも分からないですが」


 そう言ってお姉様は鳥肉を調理していく。


「お、お姉様。それはシルフィーに『天地黎明』の杖を扱えという事でしょうか?」


 中央で管理されている守護聖獣ファンロン。それが宿る角杖(つのづえ)、それをシルフィーの武器に?


「その通りです。今回の件が済めば『王』の在り方も変わるでしょうし、その過程で折檻する事が決まっています。何処からも文句など出ないでしょう。それに使い終われば返却すれば良いのです」


 仮にもあれは国宝の1つなのですが・・・あ、でもそれを言ってしまえばヤナギ姉様もスターチス姉様も国宝を持ち出している事になるのですか。


「・・・国宝が3つもこの国から無くなるのですね」


「そうですね。ここは人間の未来の為と思って我慢して貰いましょう」


「お姉様、かなり適当になっていませんか?」


 焼き料理や煮込み料理を仕込んでいるお姉様は、シルフィーの目から見ればかなり楽観的なようにも見える。・・・まあ、お師匠様やお姉様方がいて万が一があるとは思えませんが。

 後は『偽装』を止めて真の姿を晒して行動し出してからそれが顕著な気がします。


「分かりますか? やはりありのままで行動できるのは気分が良いのですよ。力も十全に震えますしね」


「これからはもう隠して行動する事は無いのですか?」


 お姉様はダーク側に自身の種族が裏切っていると知られるのを警戒していた筈。それが今は存在しない。伸び伸びしている。


「はい。向こうがダークエルフの裏切りに気を回す余裕が無くなったのです」


「そうなのですか?」


「ええ。魔王であるクレア様がダークエルフを連れて行方を眩ませたので」


「――――――」


「実は私にも足取りが掴めていないんですよ。これは御祖父様が痕跡を潰していますね」


「・・・邪神の利に反する事は出来ないのでは?」


 現状、ダークがかなり追い詰められる結果に繋がっている。それは契約に抵触しないのでしょうか。


「邪神が直接管理出来ていないからこそ、クレア様がその隙を突いたのでしょう。それを利用して城から消えたという事です。・・・ですが未踏破地帯から出てくる事は無いでしょうね」


 クレア様が邪神の力を押しのけたという事でしょうか? それは吉報に感じられますが・・・やはりこちらに来る事は叶わないのですね。


「それ程の瘴気ですか」


「そうですね。人間ですが半分魔族の私達だから側に居てられるという事ですね」


 つまり普通なら近くに居るだけで人間に悪影響が出てしまう程の汚染。それは邪神の力の現れである事を考えればクレア様は依然、囚われたままであると言える。


「・・・ではシルフィーも頑張らねばなりませんね」


 シルフィーよりも凄惨な物を見ている筈のクレア様がそうまで戦っているのなら、シルフィーも泣き言を漏らしている場合ではありません。


「頼りにしていますシルフィー様」


『コッペリアの検査でもシルフィー様は特異であると出ています。兄様の下で更なる変化が望めると推測します」


「・・・ありがとうございますお姉様、コッペリア様」


 御2人の心遣いに感謝を。


「ではもう少ししたら料理が出来ます。シルフィー様には食事の準備をお願いしても?」


「はい。シルフィーにお任せを」


『コッペリアも手伝います。コッペリア式介護スキルを―――

「それは大丈夫です」

 ―――了解しました・・・』


 とりあえず少し怖いコッペリア様のスキルは遠慮して簡易テーブルに器を用意していく。後2・3時間もすれば日没、夜がやって来る。


「・・・2日もすればヤナギ姉様とスターチス姉様が目的地に到着しますね」


 エメラに牽かれる馬車に乗って王庭に向かった2人のお姉様と狸のワービーストのアヤメ様。3人であの10年という時間の中で淀んでしまった場所に向かって行ったのに一抹の不安を覚える。


 特権に慣れると人は道を違える事が多くなる。それが代々血筋として受け継ぐわけでは無い立場なら尚更であろう。


 だからこそ、我々は自身の役目を全うせねば。皆々が目的の達成の為に力を振るっているのですから。


 待っていてくださいお姉様方。シルフィーは頑張って皆様に追いついてみせます。


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