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14.決着に向けて

打ち合わせ回

 ◆◆◆


「ダルト? てめえその身体・・・・・・」


「申し訳・・・ありません・・・失敗しま、した」


「・・・何があった?」


「お、お、おそろしい者が、この国に・・・」


「どんな奴だ!」


「ひゅ、ヒューマンの・・・男、黒い、恐ろしく強い」


「アレを使ったのに負けたのか?」


「はい、ほ、本当にもうし、わけ・・・・・・」


「・・・死んだか、使えねえ。しかし中位のダークをヤれる奴がいるとはなあ。これは退屈せずに済みそうか? 俺が全て手に入れる前の暇潰しによう」



 ◆◆◆



 スタンピードを殲滅した冒険者と騎士団の帰還にケリーの街は大いに賑わっている。俺が初めて来た時は露天商の数に驚かされたが今の街を見ればそれも日常でしかなかったのだと痛感する。行き交う人は多く、皆が楽しそうな顔をしている。俺達だってそうだ。


「スーちゃん、あ~ん」

「あ~む。美味しいです! カイル殿も食べましょう!」


「ちょっと待て、流石に恥ずかしい。ほらあそこに珍しいのがあるぞ」


 街の大通りはお祭り騒ぎ。回収された大量の魔石と規格外のバジリスクの素材が今この街に好景気を呼んでいる。普段は見ない食べ物の屋台もあり、見ているだけでも心が沸き立つ。ヤナギとスターチスも機嫌が良さそうに両手に串焼きをいっぱい握り締めて、賑やかな活気の一つになっている。


「あ、カー君カー君」

「ドゥーガ殿がいますよ」


「ん? おお本当だ」


 人ごみの中に知っている顔を見つける。服屋のおじさんだ。せっかく店以外で見かけたのだし声を掛けよう。そうして近づいていくと向こうも俺に気付いてくれた。


「おお兄ちゃん、それに嬢ちゃん達も」


「ご無沙汰してます」


「どうも」

「こんにちは」


 俺は初めてお店に呼ばれた日から装備の状態を確認してもらうために機を見てはお店に顔を出している。その時にヤナギとスターチスも連れて行ったら既に顔見知りだった。まあギルドと提携しているお店だし、ギルド側からの紹介だってあるだろう。人と人は意外と繋がっている。

 おじさんとも結構顔を合わせる間柄になったな。


「ドゥーガさんはどうしてここに?」


「ああ俺は里帰りするらしい友人のとこに顔を出した帰りだな。そういう兄ちゃんらはデートか?」


「そうだな」


「ぴっ!」

「えっ!」


 からかう様なおじさんと俺のやり取りにヤナギとスターチスが毛を逆立てて驚いている。体も硬直した様に真っ直ぐになっている。


「何で嬢ちゃん達が一番驚いてんだよ」


「俺がいつもつれないからな」


「自分で言うのか」


 おじさんが呆れた様な顔で俺を見ている。自分でもバカな事を言ってる自覚はある。でもまあデートであるのに違いは無い。


「まあ2人は2日前のスタンピード殲滅の時に大活躍してくれたからな。今日は空いてる時間で労おうかと思って」


「そうかい兄ちゃんはマメだな」


 そうは言われても俺は彼女達の一番欲しい願いは叶えてやれないのが現状である。想いに答えられていないのは悪いと思うが俺にだって譲れない物はある。今の関係としてはこれぐらいの仲間の延長としての距離感が落としどころだと思う。


「そういえば里帰りする友人ってもしかして?」


「ああ、前に言ってたドワーフの友人だ。てゆうかその件は悪かったな」


「いや気にしてないよ」


 おじさんに紹介してもらったドワーフの職人さんだが俺達が出向いた時は留守だった。そこからすれ違いが始まり俺達が遠くに依頼に行けば街にいるのに帰ってきたら出かけているという事態になった。そういう事で結局会えずじまいでここまで来てしまった。それに関しておじさんは本当に申し訳なさそうに謝ってくれた。おじさんが悪い訳でもないし、ドワーフの装備も興味はあったが縁が無ければそれでもいいという気持ちだったので動揺もない。


「まあもし会えたら宜しくしてやってくれ。名前は『ゴヴァノン』て言うからよ」


「ああ。わかった」


「じゃあ俺は店の方に戻るからよ。兄ちゃん達もデート楽しんでな」


「ありがとうドゥーガさん」


 そう言っておじさんと別れ、また俺達だけになる。


「予定の時間まではまだ余裕があるし、2人は行きたい場所とかあるか?」


「あう・・・」

「あのその・・・何処でも嬉しいです」


「そんなに緊張しなくても・・・・・・」


 普段はあんなに積極的に自分の気持ちを伝えに来ているのにこれだ。2人は顔を赤くして照れ隠しか手に持った串焼きを頬張っている。柔らかそうな頬がこれでもかと膨らんでいる。


 もう少しこの祭りの空気を3人で楽しんでから冒険者ギルドに向かうとしよう。今日はアダマンタイトに成り、後日この国の王族の方と会う。その打ち合わせをする日である。

 ギルドではコーラルと、今まで会う事がなかったギルドマスターも交えての話し合いになる。どんな人かは話だけでは聞いているが、コーラルが俺達に素性を話したのを契機に『自分の事』を伝えた相手らしい。ならその人も俺達同様協力者であると言える。この顔触れで会うのだから隠し事は少ない方が話が早い。

 俺達はゆっくりと時間が来るまでこの賑わいを楽しむ事にした。



 ◆◆◆



「よく来てくれました、この国6番目の碧鋼級の冒険者様。私がこの街で冒険者ギルドのマスターに就かせて戴いています森林種の『杖の民のクローリア』です。以後お見知りおきを」


「初めまして、チーム『お昼寝(シエスタ)』のリーダーのカイル・ルーガンです。そしてこちらの2人が仲間のヤナギとスターチスです」


「ヤナギ。よろしく」

「スターチスです。ギルドにはお世話になっています」


 冒険者ギルドの建物内の奥にギルドマスターの部屋があり、そこに俺達3人とコーラル、そして今自己紹介し合った相手のクローリアさんが一堂に会している。

 クローリアさんは紹介の時に言っていた通りエルフの女性である。輝く様な金色の長髪を後頭部で縄編みにして纏め、青い瞳は魔力を帯びて薄っすらと光り、白い肌は透き通るよう。華奢そうな身体をギルド職員と共通の制服を着込み、その上から若草色のローブを羽織っている。顔立ちは温和を絵に描いた様に優しい。その全てが幻想から出て来た様な美しさ。雰囲気や服装髪型以外の特徴は、全てのエルフ共通である。


 彼女は挨拶が済むと俺達を来客用のテーブルとソファーに誘い、座る様に勧める。俺達3人は並んで座り、向かいにクローリアさんとコーラルが座る。

 裏の事情を知っている者達での話し合いの始まりである。

 先に言葉を切り出したのはクローリアさんだ。


「まず短期間で最上級冒険者に御成りになりました事、真におめでとうございます。我等冒険者ギルドは貴方方の様な人間の希望になられる方の前途を祝福させて戴きます」


「ありがとうございます。俺達も出来る事をしたまでです」


「それは頼もしい。これからも良き関係が築けるよう努力させて戴きます。では本題に入る前に。コーラル、お茶をお願いできますか?」


「はいマスター」


 クローリアの指示でコーラルは動く。2人の様子を見る限り、特に固い所や気を使っている所は見受けられない。あくまで自然の様に見える。


「すいませんクローリアさん。聞きたい事があるんですが」


「私とコーラルの関係ですか?」


 直ぐに核心に触れてくれた。話しの早い人だ。彼女は他者を落ち着かせる様な笑顔で俺達を見て、お茶を淹れているコーラルに目をやった。


「以前は優秀で御人好しな1人の職員とマスターというよくある関係でした。彼女もこちらに勤めて3年になりますし交流は公私ともに過ごした事も多いですね」


 コーラルを見る彼女の目は何処までも優しい。どこか『親』の様な印象を抱かせる視線である。


「だからこそ彼女が何か心に抱えて、それを打ち明けられていないというのも感じていました。力になれていない様でそれが少し寂しかったですね。ですので今回の事は驚きもありましたが嬉しい気持ちの方が大きかったですね」


 彼女はコーラルの事を大分気に掛けていた様だ。だからこそ親が子を見るかの様な雰囲気があるのだろう。


「エルフとダークエルフはどんな関係なんですか?」


 だからこそ2人の間に不和が少しも無いのかが気になる。表面上はわからないというのは多々あるらしいし、何より純粋な興味もある。


「黒原種は我々が救えなかった種族です。詳しい事は聞きましたか?」


「それは向こうが話したくなってから、と思って詳しい事は聞いていませんね。ただ呪いの契約に縛られているとだけ」


 クローリアさんは先程「救えなかった」と言った時ひどく悲しそうな表情をしていたが、今はそんな様子を消し真剣な表情でじっと俺を見つめる。それは何かを確認する様な視線である。そしてお茶を運んできたコーラルにも目を移し、彼女は口を開く。


「コーラル貴女、恥ずかしいからって一番の願いを言っていないのですか? ダメですよ信頼とはそういう心を打ち明ける事から始まるのですから」


「マスター。それは私にも立場という物が―――」


「そんなのはいいのです。彼がそうなのでしょう? 私に彼の報告をする貴女ときたらそれはもう無垢な乙女の様で」

「マスター。それは今の話しとは関係がありません」


 2人のやり取りはどんどん内輪の形になっていく。正直クローリアさんがダークエルフに悪感情を抱いていないかだけが気になっていただけの質問だったが、この様子を見るに問題なそうだ。


「2人は仲良し」

「普段はお姉さんのようなコーラル殿もマスター殿の前では形無しと見える」


「ヤナギ様スターチス様、勝手な事を申さないでください。私達は上司と部下の関係です」


「そうね。役職なんてなくても大事な子よコーラルは」


「マスター・・・」


 慌てたり、恥ずかしがったり、疲れた様にしたり。出会ってから今までの彼女を思い返し、今の彼女を見れば自ずと答えは見えてくる。それにあの晩、一方的にだが約束もしている。


「クローリアさん、詳しい事はやはりコーラルから聞く事にします。彼女の心の準備が出来るまでいつまででも待てますよ俺達は」


「当然。コーちゃんは好きな様にしたらいい」

「自分とヤナギはコーラル殿の事も好きですからね」


「そうですか。皆様はとても優しい方ですね、安心しました。それでは私から言える事はそんなにありませんね。出来ればこれからも彼女の事を信じて付き合ってもらえますか?」


「「「はい」」」


「良かったですねコーラル。ほら照れていないで何か言ったらどうです?」

「照れていません」


「本当にこの子は人からの優しさに慣れていませんね。彼らにくらいもっと素直になれば良いのに」

「そろそろ本題に入りませんか? お茶も冷めてしまいますよ」


 コーラルが防戦一方になっている。とても珍しい光景だ。こっちが彼女に面倒を見てもらう事が多いのでなかなか新鮮である。ヤナギとスターチスも興味深そうに見ている。

 だがまあ本題に入るのも大事だろう。こういう場はまた後日作ればいいのだ。周りの全員もそれが分かっている様子で居住まいを正す。部屋の中に緊張感が出てくる。


「それでは本題に入りましょう。まずは先日のスワンプマンの狂乱の群れ及びバジリスクの異常個体の発生、それにカイルさんが撃退した魔人種とその洞窟で行われていた儀式の話しからいきましょうか」


 カップに入っている茶の香りが辺りに広がる。


「全ての問題は呪いの儀式とその核になっていた物でしょうね。コーラル、アレを」


「ここに」


 テーブルの中央に箱に収められた赤い球体が出される。やはりあの時の輝きはない。しかし見ているだけであの時の光景が思い出されるこの品は俺を不快にさせる。あの時の亡骸と遺品はギルドの協力の下しかるべき方法で葬られたがそれで苦しんだ人がいなくなった訳ではない。


「これは『禁忌の器』と呼ばれる呪具です。上位の『呪術士』の加護持ちと多くの生贄によりコレが作られます。名の意味は文字通り、呪う対象を悍ましい『器』にする物です。これの影響により『呪印』を刻まれたバジリスクは器にされ、怪人種を吐き出し続ける怪物にされてしまったのでしょう。その意思さえ術者の意のままにされ」


「これのせいでドロドロしてた。不快」

「製法もソレがもたらす結果も全てが不快ですね。『禁忌』と名付けられるのも納得です」


「そうですね。許す事など出来はしません。だからこそカイルさん、この件は本当に感謝しています」


「俺はコーラルに頼まれてその上で自分がしたい様にした。だからそう畏まらないでください、俺の方が恐縮します」


「いえカイルさんが成し遂げた事はこんな裏側だけで済ませていい様な成果ではありません。人間全体の怨敵、魔人種を個人で撃退したのは英雄や勇者ぐらいのもの。私の本心としては大々的に感謝の意を示したいほどです」


 クローリアは心底残念そうに「今は出来ないのですが」と呟いている、今はまだ多くの人達には魔人が暗躍している事は可能な限り秘密にして最終まで進めたい、という作戦なのだから。


「『呪炎のダルト』は名の通った魔人です。未踏破地帯でのアレが齎した被害はそれは悲惨な物でした。強大な魔力に防ぐのが難しい呪炎、それに本人も見た目からは考えられない頑強さを有し、傷を付けるには碧鋼級の冒険者と勇者を動員せねばならず、それでも仕留めるに至らなかったのです」


「仕留められなかったのは何でだ?」


「ダルト以外にも魔人が数体いて戦力を集中出来なかったのが一番ですね。あとは長期戦になれば小さな傷は魔人ならば加護に頼らない身体能力で再生しますから」


「それで生きて逃がしてしまったという事か」


「はい。そのせいで表にはでない被害が出ていると、いえ今回の事でそれは各地で多く発生していると考えていいでしょう。魔人は絶対数は少ないとはいえ個々の戦闘力は圧倒的ですから。その力を振るい、世界を手中に収める為に動いているでしょう」


 クローリアは人間の国々の戦況の悪さを予想し顔色を悪くしている。魔人を倒すにはアダマンタイトの冒険者の様な英雄級の戦士がいると考えれば確かに旗色は芳しくはないだろう。だがしかし。


「でも大丈夫」

「ええ。その魔人達も僅かな命でしょう」


「俺達がそんな奴らの野望なんて壊してやるからな」


 ダクト、あいつは本当に殺したかった。あんな所業を起こした者には一瞬だって長生きしてほしくない。だが、生かした。その方が他のダークも壊せるから。

 コーラルの提案した作戦は単純、それは魔人を使って他の魔人の所在を探る事だ。


「ちなみにコーラル、アレは上手くいったのか?」


「ええ、結果は上々です。仕込みは上手くいきました。これも全てカイル様のおかげです」


「俺に細かい事は出来ない。これは純粋にコーラルの手柄だ」


「いえ、こんなのは誰でも思いつける事です。前提が困難過ぎるからこそ今まで採用されなかった案とも言えます」


 コーラルは見事にこの国に巣くう敵の居場所を掴んだのだ。使用した方法は精霊魔法。つまり精霊を使って居場所を特定したのだ。普通なら気付かれる。魔人は魔力の気配に敏感だからだ。それを掻い潜るための工夫をコーラルはした。弱った敵に精霊を打ち込み、死ぬ時の魔力の拡散に紛れさせて精霊を帰還させ情報をそこから読み取るという方法で居場所を見つける事に成功したのだ。俺はコーラルにその精霊を憑りつかせてもらい、心身ともに弱った相手にその精霊が入りこむ様にしたのだ。やはりコーラルの手柄である。


「俺がやったのはせいぜい死んでしまわない様に痛めつけた事ぐらいだ」


「それが一番難しいのです。魔人相手に生かさず殺さずとは」


「そうだな。本当はあの場で殺したかった。だがこれで他のも殺せるんだろ? だから耐えれた」


「すいませんコーラル、彼の言っている事が少しズレていませんか? 魔人はおいそれとは倒せない強大な存在。ゴブリンの類いではないのですよ?」


「伝えていた通りです。あれがカイル様の常識です。他の人には出来ない事をあっさりとやってのける方です」


「本人の前で非常識みたいに言わないでほしい」


「「え」」


「ヤナギとスターチスもその反応は何だ。俺だって『普通』は辞めたが常識を捨てた覚えはない」


「さらっと普通を捨てたと言う方は一般的に非常識と呼ばれると思いますが」


「・・・・・・」


 話しの流れが魔人の脅威から俺の非常識になっている。この認識は俺以外の皆は共通している様だ。悪く言われている訳ではないのは分かっているが少し悲しい気持ちになる。


「まあ次の話しに行こう。この黒い宝珠の事だが、何か分かったか?」


 もう一つの問題、それがこの宝珠だ。ダルトが苦し紛れに使い、強化される事態となった。加護とは関係なくあそこまで劇的に変化するのはやはり異常である。コーラルに短い時間だったが調べてもらっていたので結果を聞く。


「カイル様の実体験ではダルトはこれで変化、外見だけでなく能力も上昇したのでしたね」


「そうだな。おそらく飛躍的に能力が上がっていた筈だ」


 コーラルが全員と情報を共有する様に俺に質問しそれに答える。しかし俺が答えたら全員に妙な顔をされた。なんだ? 人が変な事を言ったみたいに。


「コーラル。私からはもう何も言いません」


「カー君は不思議君だから。しょうがない」

「ヤナギ、カイル殿は不思議と言うよりもっと・・・何でしょうかね?」


「皆様の評価は全て共感できますが投げやりすぎませんか?」


 またも変な流れに、何故だコーラル。そんな心の声が通じたのか彼女は俺を見てため息をつきながら答えをくれた。


「カイル様。さっきの報告で『おそらく』や『筈だ』とか、そんなあやふやな表現をしたから皆様が呆れているのですよ」


「なんでだ。そうとしか報告出来ないぞ」


「どうしてでしょうか、カイル様はヤナギ様やスターチス様の特訓はしっかり付けられるのに、敵の強さに関しては適当になってしまう。まあいいでしょう黒い宝珠の報告をさせて戴きます」


「お願いしますねコーラル」


「気になる」

「きっと碌でもない代物ですよ」


 俺の事を置いておくように全員が話しを続けていく。・・・ああ、うん。別に問題なんかないよ。


「魔人は儀式により異形となり力を高めます。そしてその儀式は場を用意し、手順を踏み、生贄を捧げる必要があり一回の儀式でも長い時間をかけます。しかし」


 コーラルは宝珠を手に取り、皆の視線の高さまで持ち上げる。


「これを使えばその全てを省略できる様ですね」


「それはこれから全ての魔人が強化される、という事ですか?」


 ただでさえ強大な魔人の更なる強化。人間側にとってかなり悪い事態である。こんな物が大量に出回るなら非常に危険だな。


「その危険も考慮しなければならないと思います」


「・・・これの情報は直ぐに通達しなければなりませんね」


 コーラルが宝珠を箱に収めてクローリアさんに渡す。


「お願いしますマスター。魔道具に詳しい方に見て戴ければもっと多くの情報が得られると思います」


「任せください。変わり者ですがとても腕の良い魔法具師がいます。その方に見てもらいます」


 2つの球体の話しはこれで済んだ。なら次はあの事である。


「では皆様。遂に3日後となりました。そう、王族との接触です」


 さあ遂に全ての準備が整う。この国に潜む外道を駆逐するその総仕上げである。


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