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蒼炎のソラ  作者: 諸葛ナイト


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14/15

Your name

 目を開けるとその先には白い天井があった。病室の天井を思わせる真っ白な天井だ。


(……最近よく見るなぁ……)


 もはや見慣れ始めたエヴァンテの天井を見てため息をつく。


 基地の防衛成功したのか。とどこか他人事のように思いながらこれまでの経緯を軽く思い出していた。

 と、そこで気がつく。


「って、のおあああッッ!!なんで生きてんだ俺!?」


 起き上がりながら胸のあたりに手を置く。

 入院着を少し開いて胸のあたりを見るがそこには怪我ひとつない。


 たしかにスピーリアを倒した後、ソルに心臓を貫かれたはずだ。


「……死んで、ない?」


「いえ、あなたはたしかに死にましたよ」


 光司が向いた先には1人の少女がいた。

 その少女は光司のベッド近くに置いてある椅子に座る。


「説明の前に、まずはお礼を」


 言うやいなや少女は頭を下げる。


「私を、助けていただきありがとうございました」


 そう言うと微笑んだ。美少女らしい優しい笑みだった。


「あ、いや……結局、何かできたわけでもないし」


 それを見て光司は顔を少し赤くさせると頬を掻き、目を逸らす。


「いえ、できましたよ。少なくとも私の命を助けてくれました」


 どこか柔らかい声音で言ったがそれも一瞬ですぐにいつもの表情と声音へと戻すとすぐに説明を始めた。


「さて、唐突ですがあなたは2回死にました。あと19回死ぬと完全に死にます」


「うん。ごめん。意味がわからないので詳しい説明をお願いします」


 少女が言うにはソラを宿す者は20枚の魂を守る盾を持つらしい。

 その20枚の盾を全て破壊され、その盾が守っていた魂が壊されると本当の死が訪れる。


 中途半端にソラを宿している者、つまりはソラを具現化できない者は盾を持たないためソルでも一撃で魂を破壊できるため格好の的となるらしい。

 ソラの具現とはソルに対抗するための剣を作ると同時に魂を守るための20枚の盾を持つことなのだ。


 ソルは1枚1枚壊していくしかないがスピーリアだけはその盾を貫通し、直接魂を破壊することができる。


 そのため、あの時光司が彼女を助けなければ本当に少女は死んでいた。

 しかし、一方で光司を刺したのはソルの一撃であったため盾が一枚破壊されただけで今生きている。


「えっと……つまり俺は後18回は大丈夫ってこと?」


「ええ、そういうことです」


 軽くあっさりと言い切る少女だが言われた本人である光司は頭を抱えるしかない。


 ソルに対してはあと18回は殺されても問題はないという。

 言われても実感が湧かない。湧くわけがない。


 要は自分は今19個の心臓を持っているのだ。

 今までもそうだったが今の話は特に突拍子がなさすぎる。


 しかし現に自分は生きている。ならば例えどれほど信じ難くとも信じるしかない。


「あー、うん。わかった。理解はできてないけどわかった」


「それで構いません。ソルに対してあと何回死ねるか。それだけを覚えておけば問題ありませんので」


 そこまで言うと少女は咳払いをして少年に質問を投げかけた。

 むしろ少女にとってはここからのことが本題らしいことが雰囲気から伝わる。


「それで、あなたはなぜあの場に戻ってきたのですか?」


「え?」


 少女はあの時の光景を思い出しながら光司への質問を続ける。


「ほっとけなかった。とあなたは言いましたが人間はそんな理由だけで動けるほど優しくはありません。あなたは何かしらの理由があったはずです」


 わざわざ死地へと戻るほどの理由、大義名分。そんなものがあったはずだ。


 そう聞く少女は真剣な面持ちで光司へと視線を向け続ける。

 適当にはぐらかせば彼女の逆鱗に触れることだろう。

 気恥ずかしくはあるがなにも隠し立てるほどのことではない。


「……あ〜、君の力になりたかった、じゃあ理由にならないかな?」


「私の……?」


「うん。理由なんてそれだけだよ」


 光司は自分の掌を見つめながら言葉を続ける。


「たしかに君の言う通り、人っていうのは何か大きな理由がなければ動けないのかもしれない。でも、君の力になりたいって言う理由だけで俺は動けた」


 もしかしたら自分がこうしたいと思って実際に行動したのは今回が初めてだったのかもしれない。

 怖かった。逃げ出したかった。


 でも、逃げなかった。


 そのおかげで少女を助けられた。詰めが甘かったところがあったが少女を助けることができたのは事実だ。


「人ってさ。決心すれば案外簡単に動けるもんなんだな……」


 もし、あの時ああしていれば––––

 もし、その時そうしていれば––––

 もし、この時こうしていれば––––


 自分は全く違う人生を送っていたのだろう。


 自分が決心して1人の命をつなぎとめることが出来たように。


 しばらく少女はポカーンとしていたがふと思い出したかのように笑いだした。


「ふっ、ふふっ、はははっ」


「ちょっ!!?なんで笑うんだよ!!」


 少女は笑いすぎて浮かんできた涙を指で拭いながら言う。


「だっ、だって。あなた、真剣な顔で、バカみたいで……ふふっ、あはははっ!!」


「ば、バカってなんだよ!じゃぁそんなバカに助けられた君はなんなんだよ!!」


「さぁ?ほんと、なんなんでしょうね」


 ようやく落ち着いた少女は息を吐き再び光司を見据える。


 本当に変わった人だ。

 でも不思議と嫌悪感は感じない。むしろどこか安心する。

 例えるのならば優しい光だろうか。

 憧れていた彼女とは違う。強い光ではない。どこまでも優しい包み込むような光だ。


「あなたは、底抜けのバカですけどそう言うところは好きになれそうです」


 先ほどとは違い優しい笑みを浮かべる少女に対し光司は再び顔を赤くさせる。


 まるで親戚の女の子に弄ばれてるような感じがした光司は話を逸らそうと少女に問う。


「君の名前、聞いていい、かな?」


「名前、ですか?」


 少女は言うと何かを思い出しているのかしばらく黙っていたが名前を言っていないことを思い出したのか頷いた。


「私の名前は、美空(みそら) 晴香(はるか)です。私もあなたの名前を聞いてもいいでしょうか?」


「あれ?言ってなかったっけ?」


「興味がなかったので聞いていませんでした」


 サラッと酷いことを言う少女に少しジト目で見たがふっと小さく笑った。


「俺は、甘手光司だ」


 こうして、晴香と光司は出会った。

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