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蒼炎のソラ  作者: 諸葛ナイト


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10/15

Imperfection

「……白い、天井」


 気がついた時に視界に広がっていたものがそれだった。


 それを呟いたのとほぼ同時に空気が抜ける音がした。

 そこを見ると自動ドアがしまっているところだった。何者かの後ろ姿が見えたがそれが誰のものかは分からない。


(誰だろ?今の……)


 視線を巡らせるとそこは病室のようであった。

 真っ白い部屋にピッピッピッと規則的な電子音を響かせる心電図と自分が寝ているベッド。

 自動ドアの反対側の扉には壁に埋めこまれたテレビ画面がある。

 部屋にある物はそれだけだった。


「ここは……病院、か?」


 意識がなくなっていたことだけは自分でもわかる。

 その間に誰かに通報されてここに寝かされていたのだろうか。

 そう予測していたところに空気の抜ける音が聞こえて反射的にその方向を向いた。


「おや?目が覚めていたのか」


 言いながら部屋に入ってきたのは拓真だった。


「え、ええ。ついさっき、ですけッッ!!?」


 起き上がろうと体を動かしたことでようやく痛みがあることを体が実感したらしく痛みが全身を走った。


 悶絶する光司に拓真は慌てて寝ているように光司の体をゆっくりとベッドに寝かせて掛け布団をかける。


「まだ寝てていいから」


 言うと壁に寄りかかり光司に問う。


「君、何でここにいるか覚えてる?」


「……えーっと、確かソルに襲われて、胸を刀で刺されて……あれ?」


 ソルに襲われたことも伊織を逃したのは覚えている。大太刀で貫かれた痛みも覚えている。

 しかしそこから先は全く思い出せない。


 体が重く痛むが無事だった。ということはおそらく自分を襲っていたソルはあの少女が倒すか退けてくれたのだろう。


 そう思っていたが拓真の言葉はその彼の予想を覆すものだった。


「いや、君は自分で倒したんだよ。ソラを使ってね」


「……え?そんな……」


 自分がソラを出してあのソルを倒した。

 いまいち現実味に欠けることを言われてもう一度頭の記憶を探る。


「いっつ!」


 だが、それは頭に走った鋭い痛みにより妨げられた。


「無理に思い出そうとしなくていいよ。君はソラを出したと言っても不完全な状態で出したみたいだからね」


「不完全な、状態……」


「ああ、その姿を認めず、しかしその力だけは使った。とにかく、生きるために」


 拓真が言うには光司のようになるものは時々いるらしい。


 内に秘められた世界と自分を認めたくはない。しかし自分は死にたくはない。内にいるもう1人の自分、もしくは世界は死なれては困る。

 そんな利害関係の一致で一時的に具現化されたソラを使う。


 その結果、拒絶反応のようなものが痛みや疲労感として出てくる。


「しかしそれはあと少しでソラを完全に具現化できる、ということだ」


 そう言われてもやはり実感は持てない。

 自分がソラを出せるようになるなど、そもそも一度自分が出せたことすらまともに信じられないでいるのだから当然といえば当然だろうか。


「まぁ、大体3日は休んでおくと良いよ」


「……わかり、ました」


 少し硬い動作で頷くと拓真はニッコリと笑いその部屋から出た。


 その後ろ姿を見届けると天井へと視線を向ける。

 蛍光灯の明かりを少し眩しく感じながらふと思う。


(あれ?さっき来たのが皆城さんってことは……最初のは、誰だったんだろう)


 光司はそんなことを思いながらゆっくりとまぶたを閉じ再び眠りについた。


◇◇◇


 拓真がその部屋から出ると壁に1人の少女がもたれかかっていた。


「君も、声をかければよかったのに」


「……私は自分の任を果たせませんでした。対象と話す資格はありません」


 少女は言うと壁から背中を離し、廊下を歩き出す。


「まぁ、資格があっても話しかけることはしませんが……」


 そう言い残し少女は拓真の前から去った。

 その背中が見えなくなるまで見送ると一つため息をこぼす。


「誰よりも先に彼のところに来たというのによく言う」


 しかし彼女にそうは言っても「ただ護衛をしていただけだ」と返されて終わるだろう。


(ほんと……素直じゃないなぁ)


 彼女は倒れている彼を抱き抱えるやいなやすぐさまエヴァンテにいる医師に詰め寄り「彼を助けてくれ」と訴えかけた。

 医師がどうしたものかとたじろぎながら対応していたのを頭に浮かべると拓真は苦笑いを浮かべながら同じように廊下を歩いてその部屋から去った。


◇◇◇


「……あ〜、そうか。俺、エヴァンテにいるんだった……」


 今の時間は何時だろうかと確認しようとしたがこの部屋には時計がない。

 ならば、と自分の携帯も探すがそもそもバックそのものからない。


 と、そんな風に動いているときだった。

 人の気配を感じてその方を向くと椅子に座り、自分の腕を枕にして眠っている少女がいた。


 起こしては悪いと光司は時計を探すのをやめて再び目を閉じる。

 目を閉じたせいかその少女の寝息がより強く耳に届く。


 何かないと思ったがどうやら寝ている間に心電図がとられていたらしく電子音が全く聞こえない。

 静寂が広がる世界に少女の寝息と自分の呼吸音がわずかに聞こえる。


 目を閉じしばらくその音を聞いていたがなかなか眠れずに目を開けた。

 殺風景な部屋のせいか視線は自然と眠っている少女の方へと向かう。


(……見れば見るほど、普通の女の子だよなぁ)


 今思えば自分はこの少女の小さな体躯に救われてばかりだ。

 まだまだ友だちと学校で笑い合っているはずの齢だ。


 なのに自分は少女と比べて何もできないし何も知らない。


 それを情けなく思い深く息を吐く。

 仕方ないと思わないでもないがそれでも彼女に何かしらの恩返しをしてやりたいと思った。

 そもそも恩返しどころか自分はまだ彼女に礼の一つも満足に言えていないような気がする。


 彼女が起きた後にきちんと礼を言わなければならない。


(そういや俺、この子の名前すら知らないんだよな……)


 礼を言う時に一緒に聞けばいい。そう思いながら光司は再び目を閉じた。

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