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さーちゃん生誕祭

ちょっと未来のふたり

「ひろみちゃん〜♡」

恋人が、大変なことになった。

「それ、残りは全部わたくしが飲んでやるから」

誕生日祝いに久々にお酒を買ってきてみたが、量が多すぎたようだ。わたくしはなんともないが。

「やだぁ〜さらがのむのー」

たまらずとりあげて遠ざけると、プクッと頬を膨らませて取り返そうとわたくしの方に体重をかけてくる。

「いじわるしないで?」

とろんとした瞳で可愛く言われると、ついつい返してしまいそうになる。

「ダメだ。飲みすぎ。ほら、ナッツ食べて」

残った分を彼女から遠ざけるためにいっきに飲みほしてしまう。まだ開けてない缶はあるが、それは後日少しずつ消化していこう。今の問題は桜来。

「もうちょっとのめるもん……」

「ダメだ。一限からではないとは言え明日も学校なんだぞ」

ペースはゆっくりで、量も多いという程では無かった。飲んでいると次第に口数が増えて妹キャラ全開に。酔うとこうなるのか。外ではとても飲ませられないな。わたくしのいないところで飲まれるのもごめんだ。こんなに可愛いと誰かにお持ち帰りされてしまう。

「あーん。飲んじゃったぁ〜。もう、いいもん。これも開けちゃうからー」

あっけなく彼女の手に新たに缶チューハイが渡ってしまったが、力が思うように入らないらしい。

「ひろみちゃんあけてぇ?」

このままじゃ収拾が付かない。家飲みにしておいて良かった。

「なにするのぉ?」

彼女を抱えあげ、強制的にベッドへ連れていく。

「もう寝るぞ。飲むのは終わり」

「んー。ひろみちゃんのおっぱい……」

すりすりと顔を押しつけてくる。彼女なんだし、それはいいんだが。わたくしがもたない。これでもいつもの桜来とのギャップに戸惑っている。

「さあ、おやすみ。わたくしは片付けを……」

クイッと裾を引っ張られる。

「一緒に寝よ〜……んー、暑い……」

服を脱ぐのに苦戦している。

ちゃんと自分のことは自分で出来る彼女には珍しい光景だ。

「風邪ひくから」

「ひろみちゃんがあっためてくれるでしょ〜?」

いつもは自分でなんでも背負ってしまうし、こういう時は全力で甘えてくる。総合的にわたくしは彼女を甘やかしすぎているかもしれないな。こんな風にご家族も桜来を可愛がってきたのかも。

片付けは明日でもいいか。

2人とも寝間着姿なので、わたくしはそのままベッドに入り、彼女の乱れた襟元をただして頭を撫でる。

「誕生日おめでとう、桜来」

「ひろみちゃんに言われるのが、一番嬉しいの」

「そうか」

たまらずキスすると、ふにゃりと嬉しそうに笑う。明日朝起きた時には、思い出して恥ずかしがるのだろうか。それとも忘れてるのか。どちらも有り得そうだな。


「生まれてきてくれてありがとう」


誕生日に、彼女がくれた言葉をわたくしも送る。


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