3話
長くなったな。そして3ヶ月ぶりw
「さーちゃん!?」
慌てて人差し指を口にあて、小野宮さんが起きてないか確認する。大丈夫そうだ。
「って、し、紫咲さんですか!?」
声は小さいがさっきよりも驚いているようだ。
少女が駆け寄ってくる。その度にぴょんぴょんと、くるくるにカールしたツインテールが跳ねている。
「良かった。彼女に部屋の場所を聞きそびれたんですが、知っていますか?」
近くに来るまで気づかなかったが、わたくしの肩くらいしかないこの人は、どうやら先輩らしい。胸元のリボンの色がわたくしたちのそれとは違っていた。
「は、はい! 私、ルームメイトなので。ここからは私が……」
相当ついてるな。彼女を起こさずに済みそうで良かった。
「いえ、小野宮さんはこのままでいいから、わたくしの荷物を持ってもらえませんか?」
「も、もちろんです!」
荷物が多かったか。少し重そうにしている。だがそれよりも興味深そうに寝顔をじっと見つめながら、「本当に起きない……」と小野宮さん頬をつついている先輩。そんなにレアなのだろうか。
「さーちゃんあまり人に懐かないのに、寝ちゃうなんて珍しいです」
あんなに遠慮していたからな。なんだかんだで、やっぱり姉が恋しかったのだろうか。誰かに甘えたかったのかもしれない。
「そうですか。このまま朝まで眠って、体調が戻ってくれればいいんですが」
「はぁ……朝だって止めたのに、いっつも聞かないんだから。私なんてその日の気分でサボることもいっぱいあるくらいなのに、さーちゃんは真面目すぎなんです」
肩をすくめてため息をついている。まあ、あんなに顔色を悪くしていれば、誰だって心配になるし止めるはずだよな。
「……随分、無理をしていたようですね」
本当ならサボりなんていけないと注意したいところだが、今日出会った先輩である以上はあまり口に出せない。
「いつものことですよ。あ、ここです。どうぞ」
先輩は、心配というより呆れているらしい。
「ありがとうございます。彼女はどこに?」
「このベッドに。本当に、ありがとうございました。良かったらお茶でもどうですか? 」
ゆっくりとベッドに寝かせて毛布をかける。
「ああいや、うるさくすると迷惑でしょう」
こんなにぐっすり眠っているから、邪魔するのも申し訳ない。
「お礼ですよ。ちょうどドーナッツを持ってきてたんです。どうせさーちゃんは食べないと思うし」
む、ドーナッツか。
「じゃあ、いただきます……そういえば、何故名前を?」
「そりゃあ、毎日見てますから!」
ああ、もしかして部活の時に。
「そ、そうですか」
「あの、横山実守って、いうんです! ファンで、好きです!」
「ああ、ありがとうございます」
「あ、あの……」
こういうことはたまにある。いつも断っているから辛いが、気持ちは嬉しい。横山先輩は困惑顔だ。
「いろんな人にそう言ってもらえてすごく嬉しいです。でもわたくしはまだ未熟だし、そういうのはいつもお断りさせてもらってるんです」
「そ、そっかぁ。まあ、紫咲さんはカッコいいから初めてじゃないよね。残念。あ、ちょっと待っててね」
特に気にした風でもなく、先輩がお皿にドーナツを盛り付け、お茶を準備して持ってきてくれる。遠慮なくいただくことにする。美味い。どこの店の商品だろうか? ん?
「あ、もしかしてこのコースターって」
「ええ、さーちゃんが作ったものです。他にも、あそこの花瓶とかみぃが使ってるマフラーとか休日用のポシェットとか、あのぬいぐるみもいつも使うペンケースも、さーちゃんが作ってくれたんです。髪留めのゴムもピンもシュシュも、アクセサリーはさーちゃんが作ってくれるから一緒の部屋になってからは買うことが全然無くって」
そう言う先輩はすごく楽しそうだ。気に入って使っているらしい。
「彼女はとても器用なんですね」
「そうなの! 編み物と縫い物が好きなんだけど、手芸は全般的に出来るみたいで。新しいポーチが欲しいとか、ゴム失くしちゃったのって注文したらすぐに作ってくれて助かってる。えっとね、」
今度は机の上にある木箱を持ってきて、中身を見せてくれる。細かく仕切られたその中に2つずつ、色とりどり、デザインも様々なヘアゴムが収められていた。
「すごい」
「ほんの一部なんだけどね、すごいでしょう? 毎日選ぶのが楽しくて迷っちゃうの」
わたくしは髪は長いが部活の時に鬱陶しくてまとめるくらいで普段はおろしている。ヘアゴムにはこだわりなく、黒い無地のゴムを使っているが、こういうお洒落で可愛いものを付けてみてもいいかもしれない。見ているのは好きだが、どうにも自分には似合わない気がして手が出せなかったんだ。
「紫咲さんも髪が長いから、さーちゃんに作ってもらうといいわ。きっと似合うものをつくってくれるから」
それからしばらく学校や部活の話に花を咲かせ、そろそろ夕食の時間になろうかというところで部屋に戻ることにした。
「ではそろそろお暇しますね。ごちそうさまでした」
小野宮さんは相変わらずぐっすりと眠っている。ここにいるのが妨げにならなくて良かった。
「いえいえ、こちらこそありがとう。良かったらまたお茶しましょう。それならいいでしょう?」
「もちろん」
とても楽しかった。今度は小野宮さんの話も聞いてみたいところだな。
「じゃあ、早くさーちゃんに元気になってもらわなくちゃ。今度こそみぃの言うこと聞いてもらうんだからねっ」
☆ ☆ ☆
「みぃ?」
「さーちゃん。起きた? どうする? お雑炊なら食べれる?」
「サラダでいい。みぃ、まだ料理出来ないでしょ」
「むっ。できるよぅ! みぃはレシピさえあれば基本作れるんだからね! それにしてもさーちゃん、ずるいよ! みぃに内緒で紫咲さんと仲良くなるなんて!」
「そんなこと言われても。でも今度お礼しなくちゃ」
「なんと! 紫咲さん取るつもり!?」
「みぃじゃないんだからそんなことしない」
「んもう! あーあー。振られちゃった。でも初めていっぱいお話出来たな。また会う約束までしちゃったもんね! うふふ」
「ご機嫌ね」
「だってすごく楽しかったんだもの。今度は3人でお話しましょうね」
「うん」
3弾はやく終わらせなきゃ( ꒪⌓꒪)
イノセンス( ꒪⌓꒪)
でもニートなうだからこれから更新いっぱいしたい( ꒪⌓꒪)